MRI Eco. Weekly

[ 2009.7.9 ]

地球環境問題に対する鉄道分野の貢献

社会システム研究本部 研究員 飯田正仁

近年、地球環境問題への関心の高まりを背景として、「持続可能な低炭素社会づくり」に向けた議論が盛んになっている。

2005年2月発効の京都議定書では、我が国全体で、CO2を2008年から2012年にかけて1990年比6%削減することが定められている。我が国の運輸部門においては、京都議定書の基準年である1990年度以降、2001年度までに排出量が23.5%増加している(2002年度以降は減少傾向に転じ、1990年度から2007年度まででみると14.6%の増加となっている)。運輸部門は、排出量全体の約20%を占めていることから、地球温暖化対策に果たすべき役割は大きい。その中でも、社会活力を維持しながら排出量削減を行う方法として、公共交通機関、特に、利用しやすく環境優位性を有する鉄道への期待が高い。

鉄道は、1人を1km運ぶ際のCO2排出量が自家用自動車の1/9程度とされている(我が国の鉄道のCO2排出量は運輸部門の3%であるが、輸送量は国内旅客輸送の約30%)。このように鉄道の環境負荷が小さい理由として、鉄道の特性である大量輸送性、低走行抵抗(鉄輪・鉄レール方式の鉄道は摩擦係数が非常に小さく、走行時の走行抵抗が小さい)が挙げられる。将来、持続可能なまちづくりを進めていくためには、まちづくりの基幹となる交通体系の構築時に、公共交通機関、特に、鉄道との連携が欠かせない。

先駆的な事例として、2006年4月に日本で初めてLRTが導入された富山市の例を挙げることができる。富山市では、JR北陸本線連続立体交差事業を契機として、廃止が予定されていたJR富山港線をLRT(Light Rail Transit)(※1)化して存続することとした。富山市は、自動車に依存しなくても日常の生活サービスを利用できる生活環境の形成を目指しており、「お団子と串の都市構造(串は一定以上のサービス水準の公共交通、お団子は串で結ばれた都市圏)」を構築している。このように、都市機能を集約させて、集約拠点とその他の地域を公共交通ネットワークで連携させた「コンパクトシティ」の形成は、人口減少・少子高齢化社会を迎えるこれからの日本にとって、持続可能な低炭素社会づくりの有効な手段になると考えられる。

鉄道システムそのものにおいても、先進的な動きがある。2010年春に開業予定の摂津市駅は、CO2削減のモデル的な駅として、日本初の「カーボン・ニュートラル・ステーション」となる予定である。太陽光発電や各種省エネルギー設備の導入などにより、当駅に起因するCO2排出量を約54%削減し、残りについては排出枠購入などの方法により相殺する事で、CO2排出量をゼロにするものである。排出量削減方法としては、太陽光発電や雨水利用、無水トイレ、回生電力利用などを実施予定である(※2)。

車両についても、軽量タイプの鉄道車両やVVVF機器搭載車両の導入等が進められている。VVVF搭載機器車両は、架線から得た直流電流をインバータ装置で交流に変換して、交流モーター(従来の電車は直流モーター)によって走る電車である。電力を効率よく使用できるだけでなく、交流モーターは軽量小型で故障が少ないという利点も合わせ持つ。

国においても、LRTシステム整備事業等に対する公的助成や、省エネ車両の導入等の環境対策に対する税制措置など、様々な支援制度等によってこれら環境に対する取組みを支援している。平成20年3月に改定された「京都議定書目標達成計画」では、「公共交通機関の利用促進」が謳われており、鉄道新線、LRT(Light Rail Transit)、BRT(Bus Rapid Transit)等の公共交通機関の整備や、ICカードの導入等情報化の推進、乗り継ぎ改善、パークアンドライド等によるサービス・利便性の向上を引き続き図るとともに、シームレスな公共交通の実現に向けた取組みを推進することとしている。

地球環境問題は、多様な主体が絡み、継続的な対応を必要とする大きな課題である。今後も、官民が共に協力して取組みを推進していくことが求められる。

 

※1:LRT(Light Rail Transit):次世代型路面電車システム。低床式車両の活用や軌道・電停の改良による乗降の容易性、定時性、速達性、快適性などの面で優れた特徴を有する次世代の軌道系交通システムである。近年、道路交通を補完し、人と環境にやさしい公共交通として再評価されており、国においても導入支援を行っている。
http://www.mlit.go.jp/road/sisaku/lrt/lrt_index.html(国土交通省ホームページ)

※2:「摂津市、阪急電鉄?プレスリリース(平成20年10月28日)」
http://holdings.hankyu-hanshin.co.jp/ir/data/ER200810281N2.pdf


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