Thinking TODAY

[ 2010.7.8 ]

若者が希望をもてる社会像について:きめ細かな能力開発の機会の提供が希望を生み出す

経営コンサルティング本部 主任研究員 本田えり子

1.若者が希望をもてる社会像

将来に対する明るい見通しが希望だとすると、日本ではそれは失われる方向にある。内閣府の調査によると、「世の中は次第に暮らしよい方向に向かっている」と思う人の割合は1999年の20.6%から、2008年には10.3%と、10年弱で半減している。若者においても結果は同様であり、希望をもつ割合は10〜30代でも10年弱で10%以上低下した。
とある東京の私立大学で機会を得たので、学生に同様の質問をしたところ、将来に希望をもてない理由は「不景気による就職難」「税負担の増加による生活難」「資源の高騰による生活難」「便利さがもたらす人間関係の希薄化」の4つに集約できた。裏返して捉えると、「働く場がある」「生活不安がない」「人とのつながりがある」という状態が実現されることに期待がもてれば、希望がもてるようになると考えられる。

2.若者の現実

しかし、社会で働く若者の現実は、学生の期待からは遠い。三菱総合研究所が2009年に実施した「35歳1万人調査」では、「仕事が見つからない」「収入が伸びない」「結婚できない」「子供をもてない」「頼れるのは家族だけ」という35歳世代の厳しい実態が浮かび上がった。学生は先輩世代の姿に自らの将来を重ね、希望を抱けないでいるのかもしれない。
では若者が希望をもてるようにするにはどのような手が打たれるべきか。
「働く場所の確保」「生活の安心の確保」「人とのつながりの基盤づくり」の3つの角度から考えた。

3.働く場の確保

グローバル競争が激しさを増すなか、若者が働く場を国内に確保するためには、世の中の需要に合った産業を育成すること、そこで働くのに必要なスキルを若者に徹底的に身につけさせることが必要と考える。そして、若者が希望を失わないようにするためには、仕事につながるかわからない職業訓練を提供するのではなく、努力して身につけたそのスキルを生かせる場まで紹介することが必要であると考える。
政府の成長戦略によれば、雇用は医療・介護・環境・観光分野で確保される。医療・介護は、どちらかといえば内需中心、環境・観光は外需の取り込みが可能であるなど、成長分野といっても発生する仕事の性質はかなり異なる。地域のニーズに応じ配分を検討し、育成する人数と仕事の数がバランスするように計画することが重要である。
なお人口が減るなかでは、国内需要に頼るより、成長性の高い外国との距離を近づけることが成長を維持するうえでは大切であり、地域によるバランスの違いはあるにせよ、とくに海外とのビジネスにおいて能力を発揮できる若者を増やしていくことが急務と考える。当面短期間でこうした人材を増やすためには、若者の海外就職を奨励することも一案ではないか。国内は生活安全面での魅力を高め、海外で活躍した人材が戻り、戻ってきた人材が国内をよくしていくために活躍するというような循環が生まれることに期待したい。

4.生活の安心の確保

「税負担の増加による生活難」などという不安を解消するためには財政を健全化し税負担の増加を防ぐことは言うまでもないが、一方では本当に必要な生活コストは負担を軽減することが必要である。前掲の「35歳1万人調査」によると、若者の負担軽減ニーズが高いのは「子供の教育費」「医療費」「親の介護に伴う費用」であった。とくに、次世代を担う子供にしっかり教育するということは、人口が減るなかでは国として投資を強化すべきであり、高校授業料無償化などすでに講じられている策に加え、引き続き投資が強化されることを期待したい。

5.人とのつながりの基盤づくり

最後に、地域や会社との関係が希薄化するなかで、家族以外とのつながりを再び形成するということは、セーフティネットの構築にとどまらず、若者が人間関係を通じて成長する機会をつくり出すため、そのような場を増やすことが必要であると考える。たとえば渋谷の街をキャンパスに見立てた「シブヤ大学」は、地縁を軸とする昔ながらのまちづくりとは一線を画し、「学び」という世代横断的な関心を軸に、街と人、人と人を結びつけるしかけを生み出している。そんな現代らしく人間関係をつくるしかけが、各地で広がることを期待したい。

暮らしがよい方向に向かっていると思う人の割合

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