MRI TODAY
[ 2009.2.12 ]
望まれる日本発「排出権」の整理
環境・エネルギー研究本部 主任研究員 橋本賢
国による排出量取引の「試行」が昨秋スタートしたが、かねてより企業の方々からは、「日本には排出権がいろいろあって分かりにくい」「国内統合市場における試行と東京都排出量取引制度とで、使える排出権が違うのか」といった質問を受けることが多い。
そもそも「試行」自体、目標を設定・達成した企業が売却できる「排出枠」のほか、中小企業における省エネなどの取り組みを通じて発行される「国内クレジット」がある。
「試行」のほかにも、環境省自主参加型国内排出量取引制度や、2010年度から東京都で導入される東京都排出量取引制度がある。このほか、環境省/気候変動対策認証センターがカーボン・オフセット向けに発行するオフセット・クレジット制度(J-VER)も存在する。
制度の数だけ排出権が存在するのは必然だが、ある制度のもとで発行された排出権が、別の制度でも利用可能な場合がある点は厄介であろう。更に言えば、グリーン電力証書の取り扱いも制度によって異なる。
以下に、国内各制度で利用可能・不可能な排出権の整理を行った。
| 制度(発行主体)と 排出権の種類 |
制度での利用可否 | |||
|---|---|---|---|---|
| 制度 | 排出権 | 国内統合市場 における試行 |
環境省 自主参加型 排出量 取引制度 (JVETS) |
東京都 排出量 取引制度 |
| 京都議定書 (国連) |
CER | ○ | ○(*1) | × |
| 試行 (国内統合市場) |
試行排出枠 | ○ | ○ | × |
| 国内クレジット (国内CDM) |
国内クレジット | ○ | × | ? |
| 環境省自主参加型 排出量取引制度 (JVETS) |
JPA | ○(*2) | ○ | × |
| 東京都 排出量取引制度 |
超過削減量 | × | × | ○ |
| オフセット・クレジット制度 (環境省/ 気候変動対策認証センター) |
J-VER | × | × | ? |
| グリーン電力証書 | グリーン電力証書 | × | × | ○(*3) |
| 注)1: | CER(CDMによって獲得された認証排出削減量)をJVETSで利用するためには、JVETSのもとで発行されるjCERと交換することが前提。なお、一旦jCERに交換するとCERに戻すことはできない。 |
| 2: | 今年度以降発行されるJPA(JVETSで定められている排出権)に限り利用可能。(一部のJPAは除く) |
| 3: | 排出削減量に換算した上で利用を認める。この他に、東京都制度のもとで再生可能エネルギーを認証し排出削減量に換算するスキームもある。 |
なお、国の制度は次第に収斂されていくと思われるが、東京都とは制度の設計思想に大きな隔たりがあり、ポスト京都以降も両者が並立する可能性は懸念される。政策目的に応じた複数制度の並存は止むを得ないにせよ、将来的には以下のようなフォーマットの一元化を望みたい。
・排出量の算定、検証レベルの一元化、算定フォーマットの一元化・排出権の管理プラットフォーム(登録簿)の一元化

