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位置ゲー×行動分析
リード文

研究員紹介: 小関悠  |  松崎和賢

位置ゲーとは?

小関 近ごろ「位置ゲー」と呼ばれる、携帯電話の位置情報などを利用したゲームが人気を集めています。主だったヒットゲームを3つほど紹介しますと、まずは「コロニーな生活☆PLUS」(以下、コロプラ)。今いる場所を登録すると、その前に登録した場所からの移動距離に応じてポイントがもらえるので、そのポイントを使ってコロニー(自分の街)をつくっていくというゲームです。さらに特定の場所で登録すると「お土産」という限定アイテムがもらえるため、熱心なユーザはゲームのために地方の温泉街に足を運んだりしています。またスポンサーとなっているお店に行くと「コロカ」と呼ばれるカードがもらえるサービスも行われていて、それ欲しさに地方に遠出する人や、ユーザ向けのバスツアーまで実施されています。

松崎 ちなみに今年6月末の時点で利用者は122万人だそうです。

小関 コロプラは国内発ですが、海外発のサービスで流行しているのが「foursquare」です。米国生まれの位置ゲーで、こちらは今いる場所やお店を登録していくと、ゲーム内でバッジがもらえるようになります。言ってみればそれだけなのですが、いざ体験してみるとなぜか楽しいんです。

foursquareとトリュフ

初来店時のメッセージ画面と特典のトリュフチョコレート(写真:著者撮影)

松崎 foursquareの利用者数は全世界で1日あたり17万人、月間510万人とのことです。ちょっとこの写真を見てください(写真)。先日米国に出張した際、チョコレート屋のカフェで一休みしながら、何とはなしに登録(チェックイン)してみたんです。するとこういう画面が出てきて、初めて来店した特典としてトリュフチョコがもらえたんですよ。foursquareもまた、ゲーム内の楽しみだけではなく、現実にも特典を得られるんです。ほかにも、ある場所に他の人よりも多くチェックインするとメイヤー(市長)という肩書きが得られます。米国のスターバックス・コーヒーでは、店舗ごとに市長になると1ドル値引きしてくれる。ただ、米国発のサービスなので、日本でこういった特典が普及するのはこれからに期待です。

小関 もうひとつが、「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」です。いわゆる「ドラクエ」の9作目ですね。主人公が勇者となって悪者を倒すロールプレイングゲームです。シリーズのIから?まではテレビの前で遊ぶタイプだったのですが、最新版のドラクエ9はニンテンドーDS向けゲームになり、シリーズではじめて外で遊べるようになりました。さらに画期的な点は、DSユーザ同士でデータの交換ができる「すれ違い通信」という機能に対応していることです。コロプラのように現在位置の情報は利用しませんが、近くにいるユーザを発見して、やりとりをすることができる。具体的には、ドラクエ9の場合、データの交換をするとゲーム内に新しい場所が現れて、探検できるようになります。パターンは無限にあるので、データの交換をすることで延々とゲームを楽しむことができるんです。

ゲームの世界をリアルに反映していく面白さ

松崎 位置ゲー自体は昔からありますが、今になって流行りはじめたのは、とにかく手軽になったためです。位置情報を取得するために必要なGPS(全地球測位システム)は多くの携帯電話で標準搭載されるようになりましたし、通信コストもパケット定額プランが普及したおかげで気にする必要がなくなりました。さらにiPhoneのAppStoreなどでは位置ゲーをはじめ、さまざまなアプリケーションを自由にインストールすることができます。こういった環境が整い、位置ゲーを手軽に始められるようになったことが、流行の要因として考えられます。

小関 位置ゲーには日々の生活がゲームになる面白さがあります。スターバックスに通っていたら、ゲーム内で店の「市長」になれた、というようなことです。しかし、本当に面白くなるのはゲームが現実に影響を与えるようになってからです(図1)。たとえばコロプラでは、ときどき隕石が落っこちてきて、いままで作り上げたコロニーが壊れてしまうことがあります。避けるためには、実際にいま居る場所から1km以上移動しないといけない。家でのんびりするつもりだったけど、隕石が落ちてくるから買い物にでも出かけようか、となるわけです。

松崎 foursquareはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の要素が強く、登録している知人たちの行動が把握できる面白さもあります。あえて調べているわけではないのに、なんとなくその人の行動が読めてしまい、「また飲み会か。忙しいんだな」ってわかったりして(笑)。

小関 気軽に続けられるのも位置ゲーの魅力です。たとえば最近注目されているコミュニケーション・ツールのひとつに「Twitter」がありますね。短い文章を投稿するサービスなので、ブログで長文を書くことに比べれば楽と言われていますが、文章を書くにはそれなりにエネルギーが必要です。でもfoursquareなら、行った場所を登録するだけで自分の記録になる。ゲームにもなる。おまけに友達に伝えることもできるんです。

松崎 foursquareはゲームとしてはシンプルなものですし、コミュニケーション・ツールとしても非常に気軽です。その気軽さが受けるのだと思います。一方、誰が今どこにいるかがわかるというたぐいのサービスは、位置情報の交換自体が目的化しているので、重すぎるのでしょう。

小関 位置ゲーは30歳前後がユーザの中心層と言われています。ウェブサービスは30歳前後から人気を集めることが多いんです。しかし今後さらに人気が拡大すれば、もっと若い層や年輩層、あるいは世代横断的な位置ゲーも増えてくるのではないでしょうか。

図1 「位置ゲー」のなにが面白いのか

ゲームにとどまらない、ビジネスとしての可能性

小関研究員
小関 研究員
松崎研究員
松崎 研究員

松崎 現状では地方自治体や広告代理店がコロプラと提携したというビジネス化の例があります。佐賀県では自治体として初めてコロプラと提携して体験ツアーを実施しました。一方、広告代理店のほうはアプリケーション画面の片隅に関係する広告を出したりしていて、これだけユーザ数がいると、もう立派なプラットホームです。

小関 以前、携帯電話の位置情報を用いて、約1300人が1か月間、どこでどのような行動をしたかというデータを収集したことがあります。分析してみると、年齢層や性別、結婚しているかどうかといった要因で人の行動が変わることがはっきりとわかりました。こうしたデータを用いれば、たとえば人の動きを読んで、次に行きそうな場所の広告を出すことができます。さらに位置ゲーの仕組みを使えば「いまはオフシーズンですが、ゲームの限定アイテムを出すのでお店に来てください」というようなプロモーションも可能になる。これからは位置ゲーがもっと盛り上がると、人の行動情報をうまく利用したタイアップはどんどん広がっていくはずです。

松崎 また、foursquareなどは、海外の利用者が多いので、日本にやって来る観光客相手に手を打てば差別化要因になると思います。たとえば旅行客が秋葉原にふらっと訪れたとしても、どこに行けばいいかわからない。でも「ここに行けばいいことがある」といったプロモーションをかけることができる。
「Layer」というアプリケーションをご存知ですか?携帯を風景にかざすと画面上にさまざまな情報が表示されます。foursquareの情報も表示することができるので、これは観光客に受けると思います。観光客の案内をするような、日本なりのおもてなしをしても良いのではないでしょうか。

小関 もしかしたら、自分のいる場所をわざわざ発信するなんて、と思われるかもしれません。ですが、ここに面白いデータがあります。私たちが実施した、位置情報サービスにおけるプライバシー意識の調査結果です。見てみると、10代を中心に、無料でサービスを受けるためには、自分のプライバシー情報を提供するのは自然な行為だという考え方が一般的になっていることがわかりました。もちろん、よくわからないまま自分のプライバシー情報を取られては気持ちが悪い、という意見は当然あります。ただ、位置ゲーの場合は位置登録を提供することで、ゲームが成り立つわけです。そこがうまくできているところですよね。コロプラやfoursquareは無料で遊べますし、ドラクエ9は有料ですが「すれ違い通信」に追加料金はかかりません。ユーザは位置情報を発信して無料で遊べる。企業はその情報を用いてユーザの行動を分析できる。フェアな関係になっているわけです。

松崎 無料ならば利用したいが位置情報の提供は最低限に止めたい、また何が何でも提供したくないという層もいます(図2)。ただ、コロプラの利用数が100万人を超えている状況を考えると、この層の人たちも取り込んでいるのではないか、という考え方もできるわけです。人が個人情報を提供するにあたってさまざまな障壁はあるけれども、位置ゲーはそれをあっさりと超えて、位置情報のプラットホームになってきています。
また、位置情報も長い間貯めていくと個人情報になるのではないか?という議論もされています。利用者側を守るのはもちろんですが、データを集めて有効に活用しようとしている事業者を守る意味でも匿名性の研究や制度づくりが重要になるのではないでしょうか。企業もある日突然に、個人情報違反だととがめられても困ってしまいますから。ならば、こういう基準で保存してください、と伝えることもできるはずです。センターオブエクセレンスというと大げさかもしれませんが、今後、匿名性に関する専門家とベストプラクティスを集め、匿名化処理を代行してくれるような機関も出てくるかもしれません。

図2 ナビゲーションサービスに対する意識

ささやかな楽しみとつながりが生む行動の広がり

松崎 僕は現在のfoursquareの駆け出し期的なゲーム・バランスがわりと好きで、トリュフがもらえるなどささやかな楽しみを提供してもらえるのがいい(笑)。規模が大きくなるにつれてまた違った展開が待っていると思うのですが、小さいお店がキャンペーンを行いたい場合にも使えるメリットもあるし、そういう意味で、新しいことを取り入れようとするお店が簡単に参加できるのがいいですね。

小関 位置ゲーにはいろいろなビジネスチャンスがありますが、一方で位置ゲーを通じて人がもっと街や店を楽しめるようになれればいいなと思っています。位置ゲーをきっかけにして、いままで立ち寄らなかった街や店に足を向ける。そして新しい発見を得る。そういうふうに人の行動がより広がっていくとおもしろいですよね。

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