プロジェクト紹介

住宅ローン信用リスクデータコンソーシアム

金融イノベーション事業本部 金融事業グループ
糸川光洋、堀彰男、能鹿島武志、力丸聖史、原山功也、井川眞貴

金融リテールの中核商品である住宅ローンについて、初期審査モデルの構築、モニタリング体制の構築、コンソーシアム(共同研究会)への加盟を通じ、客観的な指標に基づく収益リスク管理の高度化を実現するためのプロジェクト。従来は住宅金融公庫の直接融資が中心であった住宅ローンを、民間金融機関でも取り扱えるようにしたという点で業界の先駆けとなる取り組みとなった。

従来の住宅ローンの審査における、属人的な判断、非効率なフロー、デフォルト撲滅主義による機会損失などの課題を解決する

本プロジェクトが立ち上がった15年程前、住宅ローンの審査は、必要項目が記入された申込書をもとに、審査官個人のノウハウに基づく属人的な判断で行われていた。また、デフォルト(債務不履行)を発生させないために、担保による保全を過度に優先した審査が中心となり、顧客のニーズを満たすことができない商品性となっていた。この様な、デフォルト撲滅主義や担保主義から脱却して、審査の効率化を目指したのが本プロジェクトである。この成功により民間金融機関が続々と住宅ローンに参入。業界の常識を変える画期的なプロジェクトとなった。

スコアリングモデルの導入について

従来の住宅ローンの審査は、属人的な判断、非効率な業務フロー、デフォルト撲滅主義による機会損失などの課題を抱えていた。このような問題を解決するためにスコアリングモデルを導入した。統計モデルや収益回収シミュレーションを使って案件を評価することで、過去データに立脚した客観的な審査基準とプライシングを実現する体制を構築した。スコアリングモデル導入後は多くの金融機関で住宅ローンの実行件数が伸長しており、その有効性が確認できた。また、機会損失の減少、審査スピードの向上、人件費の抑制に伴う収益の増大につながった。

  1. 客観的な審査基準・プライシングを実現する
    スコアリングモデルの導入
  2. スコアリングモデルが形骸化しないための
    モニタリング体制の構築
  3. 日本全国の実態を確認するための
    コンソーシアム(共同研究会)の立ち上げ

モニタリング体制の構築について

導入したスコアリングモデルは、盲目的に使用していくと、モデル自体に対する信頼感や関心が薄れ、スコアリング審査自体が次第に形骸化するという課題を内包していた。これを解決するために、構築したモデルが想定通りに機能しているかを定期的に確認することを目的としたモニタリング体制を構築した。関連データの受領、各種分析結果の帳票出力、分析結果の報告という一連の流れを定期的に実施。その結果に基づき、銀行はリスク管理の方針を決めたり、営業推進施策を立案するというPDCAサイクルを実現している。

コンソーシアム(共同研究会)の立ち上げについて

構築したモニタリング体制では、自行の数値は確認できるものの、絶対的な基準を示すことができない。そこから、数値の高低を判断したいというニーズが生まれた。このニーズに対応するため、他行の水準との比較や統合データに基づく安定した指標の開発を目的としたコンソーシアムを設立。加盟いただいた各金融機関から受領したデータを統合し、分析結果を帳票として出力する仕組みを構築した。現在、当コンソーシアムは日本全国の住宅ローンの実態を確認できる唯一の共同研究会として認知されている。顧客のみならず規制当局やメディアからの問い合わせも多い。

Interview

堀 彰男
金融イノベーション事業本部 金融事業グループ
主任研究員 2005年入社
工学研究学科 建築学専攻 修了

施策の特徴とは?
初期審査モデル、モニタリング、コンソーシアムの3層が連動していることですね。住宅ローンに関連する様々なデータを共同研究会という形でシェアする。そしてひとつのベンチマークを設定する。他行の動向を見ながら、自分の銀行の立ち位置が把握できるようになります。あわせて、いかに各行のニーズを拾い上げて、それをどう一般化していくかを考えていくことが重要です。個別の銀行が抱えている様々な課題の本質を見極め、どの銀行でも対応できる汎用的な解決手法を提示する、こういった取り組みに本プロジェクトの醍醐味を感じます。
コンソーシアム立ち上げのインパクトは?
大きいと思います。金融当局や大手メディアから直接質問が寄せられる程です。当コンソーシアムは、現在まで多くの銀行様にご加盟いただいております。北から南まで、偏りなくご加盟いただいているので、日本全国の住宅ローンの状況を把握するという意味では、ひとつの大きな指標になっているのではないでしょうか。実際、私たちのデータが日本銀行の「金融システムレポート」に掲載されたこともありますよ。
お客様との接点は?
1年に2回、ご加盟いただいている全国の銀行様を訪問して結果をご説明する機会があります。その際に伺うご要望やご意見はとくに大切にしていますね。それぞれの銀行様に事情があり、すべてにお応えすることは大変難しいことですが、いかにお客様のニーズの本質を拾い上げ、わかりやすい手法でご提案できるかが重要だと思っています。また、対面でコミュニケーションを図りお客様と良い関係を築くことで、サービスそのものの付加価値の向上にもつなげたいですね。
これからどのようなビジネスが考えられますか?
今後、人口減少によるマーケットの縮小、熾烈な金利競争による利ザヤの縮小が見込まれます。そのため住宅ローンが金融機関にとって有望な投資先としてあり続けるためにはどうすべきか、中長期的なロードマップを描くことが課題となるでしょう。コンソーシアムのプラットフォームがその一助になるよう、これからも努力していきたいと思っています。ここで歩みを止めるわけにはいきません。常に次を見据えていきたいですね。

(所属および内容は取材当時のものです)

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