プロジェクト紹介

政策オプション作成のための社会的・経済的影響分析手法の構築

プロジェクトメンバー:
尾花尚弥(社会公共マネジメント研究本部 政策マネジメントグループリーダー)
土谷和之(社会公共マネジメント研究本部 政策マネジメントグループ)
大橋毅夫(人間・生活研究本部 社会保障戦略グループ)
中尾 杏子(人間・生活研究本部 社会保障戦略グループ)
河合 毅治(科学・安全政策研究本部 産業イノベーション戦略グループ)

文部科学省が立ち上げた政策チーム「政策のための科学」が推進する、「政策の社会的・経済的影響を客観的に計測する手法」を構築するプロジェクト。患者が増加傾向にあり、重大な合併症を引き起こす恐れがある「糖尿病」の予知・予防等の技術開発を題材に、当該技術開発を支援する政策パターンを作成。同時に、社会的影響(患者数・人口の変化)および経済的影響(医療費・GDP等の変化)を定量的に評価するためのモデルの構築を試行的に行った。

科学を政策に応用する

科学技術立国を標榜するわが国ではあるが、政策立案に科学的なアプローチを取り入れるという面においては多くの課題を抱えていた。一方アメリカでは、同様の取り組みが既に先行して行われていたこともあり、文部科学省は「政策形成プロセスの進化と、関連する学際的学問分野の開拓を目指した取り組み」を推進するために、「政策のための科学」推進事業(SciREX)を開始した。当社は2013年10月、この事業の一環として政策の経済効果を計測するモデルを構築する業務を文部科学省から受託し、およそ半年にわたる本プロジェクトがスタートした。

社会的・経済的影響の推計を試みる

患者数、医療費、知識ストックの観点から、糖尿病の予知・予防・治療技術の開発の効果を調査し、その変化によってもたらされる経済的影響を推計した。技術開発の対象は多岐に渡るものであるが、本プロジェクトでは、糖尿病予知マーカーの改良・iPS細胞の活用・技術指導の3つに対し、それぞれ投資を行った場合の効果を推計した。
また、糖尿病患者の病態が時間の経過に伴い重症化する確率を、レセプトデータ(診療報酬明細書)を使って推計した。個人情報を特定しない形でレセプトデータを入手するところから調査を開始し、将来の糖尿病患者数を定量的に推計するモデルを構築した。

国の政策立案の一助に

本プロジェクトを遂行した結果、これまで難しいと考えられていた公的な研究開発関連投資について、科学的かつ定量的に効果を計測する手法のプロトタイプを示すことができた。現在、当社では本手法を、科学技術分野における政策投資の是非や政策の妥当性を判断するものとして普及・定着させることを目指している。基礎となる関連データの整備が急務である。

Interview

尾花 尚弥
社会公共マネジメント研究本部 政策マネジメントグループリーダー
主席研究員 1994年入社
商学部 卒

このように影響範囲が広く新規性の高い研究においては、高度な専門知識が必要とされるのでは?

もちろんです。本プロジェクトに必要な医療技術、経済予測、知的財産、レセプトデータの分析、そのどの分野にも高度な知識が要求されましたが、社内から迅速に各分野の専門家を社内から集めることができました。これだけ多彩なメンバーを集められる会社は、当社をおいて他にはないかもしれません。
メンバーの得意分野を活かしつつ、社会科学系の教授にも協力をあおぎながら進めた結果、学会でも面白い取り組みとして様々な質問を受けました。参加されている民間企業の方から「話を聞かせてほしい」と言われることもあります。非常に反響があったプロジェクトでしたね。

新しい試みゆえに、困難だった点は?

本プロジェクトで行った、レセプトデータの分析、経済モデルの構築、大量のデータ処理分析、知的財産の評価など個々の技術については、既に当社がノウハウを持っていました。そのひとつひとつのデータの繋ぎ込みはこれまでに取り組んだことがなく、苦労しましたね。しかし、メンバーは「よしやってみよう」と常に探索し続けてくれました。30代中心の若いメンバーでしたが、お互い相談したり、サポートし合うことで、とても素晴らしい成果を出してくれたと思います。

経験を活かして、今後取り組みたいことは?

現在、当社では「IoT」(=インターネット・オブ・シングス)に関するプロジェクトを進めています。IoTとは、「パソコンなど従来型のIT機器」以外の様々な製品やコンテンツ類を、インターネットを介して結び付ける技術のことで、渋滞情報のリアルタイム配信やスマートメーターなどへの応用が期待されています。2030年までに開発される技術が社会経済にどのような影響を与えるのかを推計するわけですが、これは当然ながら非常に難しい問題です。未来の話ですし、どのようなイノベーションが起こるかもわからない。困難なプロジェクトではありますが、今回の経験のおかげで自信を持って取り組めています。みなさんが今後の展開に興味を抱いてくださるようなプロジェクトにしていきたいですね。

(所属および内容は取材当時のものです)

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