第2回 ビッグデータの成功事例 – 海外における最新動向

未来情報解析センター 研究員  鶴井宣仁

連載コラム初回では、ビジネスにおけるビッグデータの利活用として、「A. 顧客接点の高度化」、「B. 商品・サービスの 改善」、「C. 基盤(ヒト・モノ・カネ)の確立」の3つの観点をご紹介した。
本稿では、上記3観点に関係する海外の最新事例を紹介していく。いずれの事例にも共通するのは、ビッグデータ活用レベルの向上にある。単にデータの収集・分析を行うだけでなく、データ収集・分析業務の効率化や収集データから副産物的な価値を発見するなど、企業が持つ本質的な課題の解決を目的とする活用へと変化しているのである。
以降、各事例における特徴的な点や得られるインサイトについて述べる。

A)顧客接点の高度化:顧客接点の見直しによるコスト削減
 業界/業種:電気通信事業者(米国)

この企業では、過去のコールセンターの受電状況分析により、定期的に受電数が増加する日があることを発見した。コールセンター通話ログから電話の理由を解析した結果、電話料金を期日前後に支払った顧客が、料金滞納により電話が利用停止にならないか心配し、確認してくるケースが多いことが分かった。さらに、顧客接点を洗い出し、メール送信履歴を分析したところ、受電数が増加する直前に未払料金の督促メールが自動送付されていたことが判明した。
これらの結果を受け、督促メールの文面に「○日○時までに支払いが行われれば電話は止まりません」と付け加えることで、コールセンターの人件費を抑制することができたという。
本事例の特徴は、「トランザクション」指向から「トランザクションとインタラクション」指向への意識変化である。すなわち、コールセンター受電数の問題から、顧客への督促メールが原因だと見出したことに意味がある。企業により、コールセンターとメール配信部署は担当が異なることがままあるため、社内情報やシステムの連携も重要となる。

B)商品・サービスの改善:キャンペーンの自動化によるトップライン維持・向上
 業界/業種:金融機関(英国)

この企業では、マーケティング活動、特にその中でもキャンペーンの実行に費やされる時間が増大傾向にあり、他業務を圧迫しつつあった 。効率のよいキャンペーンの実行を模索し、EBM(Event Based Marketing)による自動化を推し進めることにした。
EBMとは、顧客がとりうる特定の行動を捉え、事前に準備していたコンテンツをタイムリーに提供する顧客起点のマーケティング手法である。EBMは疑似的なプル型キャンペーンで、企業が主導する従来のプッシュ型キャンペーンと比べ、顧客反応率が高いという特徴がある。
同企業のEBMへの徹底ぶりには、目を見張るものがある。キャンペーンのトリガーとなるイベントを常時1,000種類程度用意し、電子メールやDM、アウトバウンドコールなどさまざまな手段で顧客へ訴求する仕組みを構築。同時に、キャンペーン効果の振り返りに基づき、定期的に150~300種類のイベントの入れ替えも実施している。キャンペーンの自動化は、業務効率化のみならず、トップラインの維持・向上に寄与しているという。
本事例の特徴は、業務効率化に伴うマーケターの創造的時間の確保にある。キャンペーンを自動化することで、余った時間をプランニングに費やすことが可能となった。トップラインの維持・向上には、業務プロセスの見直しと創造的な時間の確保が必要となってくるだろう。

C)基盤(ヒト)の確立:人的ネットワークから見る人材離反のリスク低減
 業界/業種:インターネット関連 企業(米国)

この企業では、社内メールや社員同士の通話履歴から、社員間の人間関係を定量化しようと試みた。結果として、社員間の人間関係には中心人物(ハブ)となる人材が存在し、そういったハブ人材が流出すると、周辺社員の退職率が高まることがわかった。そのため、分析結果を 同社では社員の退職リスクの評価に採用しているという。
本事例の特徴は、ソーシャルネットワーク分析による人的ネットワークの定量的な評価にある。ソーシャルネットワークでは、大多数の人は友人の数はそう多くはなく、一部の人が極端に多くの友人を持つ傾向を示す。離反リスクの低減には、後者の「一部の人」、つまりハブ人材の特定が重要になってくる。


コールセンターの受電数から得られた、人件費の抑制。業務効率化から得られた、マーケターの創造的時間の確保。社員間の人間関係定量化から得られた、退職リスクの評価。ビジネスパーソンを悩ませる企業課題の中には、データの利活用により解決できる問題はまだまだ存在する。


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