人間と人工知能が共創する先進型CRM

ICTイノベーション事業本部  森島広章

■つながる消費者行動データ

企業がCRMを企画する際に肝となるのは、顧客データベースを基盤とした「顧客理解」である。昨今の顧客像把握に向けた企業ニーズは、自社店舗・サイトで把握できる購買行動から直接的に見える姿にとどまらず、背景にある価値観やライフスタイル、さらには自社外での購買行動といった消費者像を深く理解することまでが求められている。それゆえに、従来保有している自社情報のみでは顧客ニーズを的確に捉えることができず、本来捉えたいインサイトを把握することは極めて難しくなってきている。
これと平行するように消費者の環境も大きく変化し、ECの一般化、クレジットカードやポイント決済の普及、口コミ評価やアンケートのWeb化など、消費活動のデジタル化が進展した。多様な消費行動がデータで記録されるようになり、消費者像を立体化することは技術的に可能になってきた。GoogleやYahooなどのプラットフォーマーは貪欲にこれらの消費者データを集めようとしており、解像度の高いデータを活用して、より最適なサービスや提供価値を生み出している。
こうした背景から、各社が捉えている消費行動を個人単位にひも付けることで、今まで見ることができなかった購買行動の裏側にあるさまざまな情報を把握しようとする動きが目立っている。外部リソースの活用やアライアンスを結ぶといった動きはその証左である。

図1:各企業の取り組み例

各企業の取り組み例

出所:三菱総合研究所作成

■三菱総研が開発する「マーケティングAI」

横断的に把握できる消費行動データから顧客理解が深められれば、ターゲットセグメントのニーズに応じたプロモーション施策を設計・実施し、その反応を分析して、次の施策に向けた最適化を効果的・効率的に展開していくことが可能になる。
その際、効果的な施策実施のためには、ターゲット顧客像と、実際のターゲティングが同じ粒度で行われることが重要だ。従来のように、顧客像が基本属性別やRFM※1別にとどまっていたり、ターゲット抽出がブラックボックス化されていたりして顧客像が見えないようでは、効果的な施策実施は難しい。
施策展開の一連の流れを、人工知能などを活用して高度化・一部自動化するのが、三菱総研が開発する「マーケティングAI」だ。「マーケティングAI」はCRMのマーケティングPDCA領域を包括的に支援する仕組みとなっており、ターゲティング精度向上・業務自動化・自動学習などにより売り上げ強化を実現する。

図2:CRMのマーケティングPDCAを高度化・効率化する「マーケティングAI」

マーケティングAI

出所:三菱総合研究所作成

■CRMすべてを人工知能にまかせてよいのか

人工知能が得意とする領域は、過去実績の学習結果に基づくものである。あらかじめ決まった商品や施策実績がある場合に最適なターゲティングモデルを特定するのは得意だが、新商品や新サービスに関するターゲティングモデルの基礎となる初期知見の抽出は、必ずしも得意ではない。
施策に関わる各担当者に対して“伝えやすい・わかりやすい・アイデア発想が刺激される”ターゲット顧客像を具体化するためには、人の仮説や着想が重要な時がある。すべてのターゲティングモデルを人工知能に頼るのではなく、人が得意とする領域では人間の手で構築できることが重要な要件となろう。

【Step1】
基礎となるモデルが構築されたら、これを基点に大量の会員に対してターゲットセグメントをあてはめる処理作業や、成長・離脱などの予兆ターゲット自動検知といった役割を人工知能にまかせるとよい。

【Step2】
三菱総研の考える支援モデルは、ターゲティングの基礎モデル構築、大量のターゲティング処理の二つのプロセスに対応できるよう、人工知能システムとデータサイエンティストの双方でサポートする仕組みとなっている。

図3:CRM施策のターゲティングモデル構築を推進するステップイメージ

ステップイメージ

出所:三菱総合研究所作成

人工知能を活用したプロモーション施策は、一度に多くの顧客にスピード感をもってリーチできることが魅力だ。ただし、人工知能が顧客に提供する価値は、あくまでも過去の成功体験に基づいたプロモーション施策の域を脱しない。当面は多くの顧客を取り込むことができるかもしれないが、陳腐化した施策の繰り返しでは客足は離れてしまう。人工知能に任せるだけでなく、人工知能が提示する定量的な判断材料を生かしつつ、今までにないプロモーション施策を創造していくのは人間が行っていくべき領域と考え、適切な使い分けを推進することが事業拡大の肝となる。

※1:「最終購買日(Recency)」「購買頻度(Frequency)」「累計購買金額(Monetary)」の略


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