第10回 風に逆らうか後始末か
─日本経済新聞 2015年9月17日付掲載 ゼミナール「バブルの歴史」より─

  政策・経済研究センター

 世界経済はバブルの発生と崩壊を何度も経験し、分析を積み重ねてきた。だが、金融危機への対応は常に議論百出だ。
 中でも金融政策の役割を巡る議論は尽きない。大胆に二分すると、片方は「バブルは金融緩和の長期化がもたらす。回避には利上げなど早期の引き締めが有効だ」と考える。「資産価格上昇という“風”に逆らう」対応を重視する立場だ。もう片方は「金融政策はバブルが崩壊したら最後の貸し手として機能すべきだ」と考える。バブル崩壊時の「後始末をする」ことに重きを置く立場だ。
 「後始末」派は、資産価格が上昇している最中に、先行きの成長期待の上昇ゆえかバブルか見分けるのは極めて困難だと考える。金融政策のみでバブルを抑制する効果があるかとの疑問もある。資産価格バブルや過大な負債といった金融の不均衡を防ぐ最前線の策として近年重視されるのが、金融システム全体の安定を目指す「マクロ・プルーデンス政策」だ。
 この両方とも大切だと考えても必ずしも矛盾しない。現状では、マクロ・プルーデンス政策の理論的な枠組みや政策ツールは発展途上だ。金融政策とマクロ・プルーデンス政策を相互補完的に用いるのが現実的だ。規制には常に抜け道があるが、利上げは抜け道にも浸透するのでバブルを防げるという意見には一定の説得力がある。
 米国は年内に利上げを始める可能性がある。リーマン・ショック後の教訓を生かし金融システムの安定を維持できるか、試練が近づいている。

米国の政策金利と株価


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