第2回 所得富裕層の志向はメインカードタイプで見抜け

ICTイノベーション事業本部  美馬由芽

クレジットカードの利用頻度が高く、ゴールドカードやプラチナカードを使いこなすイメージのある富裕層。実際のところ、富裕層はどのようなタイプに分かれ、それぞれどのようにクレジットカードを利用しているのだろうか。

今回のコラムでは、所得の状況によるカード利用実態の差に注目し、富裕層のクレジットカード利用傾向を明らかにする。富裕層の定義として定まった基準はないが、先行する各種の調査研究を見ると基準の下限は1,000万円のようであるため、ここでは本人もしくは配偶者が就業しており世帯年収が合計1,000万円以上の場合を所得富裕層と定義した。

所得富裕層のメインカードは定番不在

まずは、クレジットカードを表1のように銀行系、流通系、ネット系、航空系の4つのカードタイプに分類した上で、所得富裕層と所得富裕層以外がどのようなタイプのカードを保有カード・メインカードとして選択しているか確認した。

表1 本コラムにおけるカードタイプの分類
カードタイプカード銘柄
銀行系カード DCカード、JCBカード、MUFGカード、NICOSカード、三井住友VISAカード
流通系カード EPOSカード、JFRカード、UCカード、イオンカード、エムアイカード、セゾンカード、セブンカード、アイワイカード、高島屋カード、ファミマTカード、ポケットカード、ローソンPontaカードVISA
ネット系カード Yahoo!JAPANカード、楽天KCカード
航空系カード ANAカード、JALカード

図1 保有・メイン利用カードタイプ(保有カードは複数回答可)

保有・メイン利用カードタイプ

出所:三菱総合研究所「クレジットカード等決済手段利用調査」2016年3月

所得富裕層(図1左)と所得富裕層以外(図1右)の保有カードとメインカードを比較すると、保有カードの傾向は似ている一方で、メインカードの傾向は異なっている。所得富裕層以外ではネット系のメインカード率が突出して高いのに対し、所得富裕層では4つのカードタイプのメインカード率は比較的似通っている。これは、所得富裕層においてはメインカードの定番といえるカードタイプが存在していないことを表している。

所得富裕層のメイン利用率が最も高いのはネット系、次いで銀行系の順となっている。ネット系カードが普及してきたのがここ十年強であることを鑑みると、所得富裕層に限ってみても、かつての定番であった銀行系カードをネット系カードが追い上げ、追い越している。

所得富裕層は、航空系カードのメインカード利用率が高いことも特徴的である。所得富裕層は出張や旅行で航空便利用頻度が高いことと、所得富裕層であっても高還元率という魅力に敏感に反応しているためと考えられる。

航空系カードメイン利用者は、カード使い分け上級者

では、メインカードのタイプによってクレジットカードの利用傾向にどのような違いがあるだろうか。

図2 最近1カ月で利用したクレジットカード枚数

クレジットカード枚数

出所:三菱総合研究所「クレジットカード等決済手段利用調査」2016年3月

図2より、所得富裕層以外に比べて所得富裕層は、最近1カ月に利用したクレジットカードの枚数が多く、複数枚のカードを使い分けていることが確認できる。この傾向は特に航空系カードのメイン利用者において顕著であり、52%が1カ月に3枚以上のカードを利用している。

図3 クレジットカード利用状況

クレジットカード利用状況

図3左より、航空系カードのメイン利用者はカード利用頻度自体も高いことから、所得富裕層の中でも特に複数枚のカードを使いこなしていると言えるだろう。航空系カードのメイン利用者は、図3右の「ポイントを貯めるためにできるだけクレジットカード払いにする」と回答した人の割合が大きく、複数枚のカードを使い分ける傾向の背景に、効率的にポイントを貯めたいという動機がうかがえる。

ポイントを貯めるために積極的にクレジットカードを利用する人の割合は、銀行系・ネット系カードのメイン利用者も大きい。ただしこの両タイプのメイン利用者は、図2で見たようにカード利用枚数が航空系カードのメイン利用者に比して少なく、メイン・サブカードに利用を集約してポイントを貯める傾向があるようだ。

ネット系メイン利用者は流通系をサブ利用

次いで、メインカードのタイプ別にどのようなサブカードを選ぶ傾向があるか見てみよう。

表2 メイン利用カードタイプ別 サブカードタイプ

メイン利用カードタイプ別 サブカードタイプ

出所:三菱総合研究所「クレジットカード等決済手段利用調査」2016年3月

表2を見ると、流通系カードのメイン利用者はサブカードを利用しない傾向が強い。一方ネット系カードのメイン利用者は、流通系カードのサブ利用率が高い。流通系カードとネット系カードのカード自体の共通の特徴として、「年会費無料」「高ポイント還元率」が挙げられる。そこに魅力を感じた所得富裕層の中で、カードの使い分けに積極的な人がメインカードにネット系カード、サブカードに流通系カードを選んでいると推察される。

図4 メインカードタイプ別 支払い方法ごとの平均支払先数

支払い方法ごとの平均支払先数

出所:三菱総合研究所「クレジットカード等決済手段利用調査」2016年3月

図4は、上記の20の支払先のうち、メインカードタイプごとに決済手段として、メインカード、サブカード、現金をそれぞれどれくらい利用しているのか、支払先数の平均値を算出したものである。航空系カードのメイン利用者を見てみると、メインカードを使う支払先が20のうち11.1であるのに対し、現金は6.4と、ここからも航空系カードのメイン利用者はクレジットカード利用傾向が強いことが読み取れる。

一方で流通系カード、銀行系カードのメイン利用者はまだまだ現金を利用している支払先が半数近くを占める。流通系カード、銀行系カードのメイン利用者は、クレジットカード利用機会の拡大の余地が大きいと言えるだろう。

所得富裕層のカード利用促進には、メインカードのタイプによって異なる方策が必要

ここまで見てきて、一口に所得富裕層と言ってもその中の個々人のカード利用傾向はさまざまであること、メインカードに選んだカードのタイプに利用傾向の特徴が現れることがわかった。表3にその結果をまとめる。

表3 所得富裕層のメインカードタイプ別特徴 まとめ

メインカードタイプクレジットカード利用利用者意識
銀行系・流通系 カードの利用頻度が低い
サブカードを持たない割合が高い
現金を用いる支払先が多い
ポイント積算の意識は相対低
ネット系 僅差だがネット系カードをメインに選ぶ人が最も高率
サブカードに流通系を選択する割合が高い
ポイント積算の意識は高い
航空系 もっとも頻繁にカードを利用
複数(3種以上)のカードを使い分ける
カードを用いる支払先が多い
ポイント積算の意識は高い

上記の結果から、所得富裕層の中でも銀行系・流通系カードのメイン利用者はクレジットカードを利用する支払先の拡大余地が大きく残されていることが推察できる。これらの利用者は、ポイントなどの経済的メリットに対する反応は期待できないため、カード利用自体がもたらす決済手続きの簡便化や、持ち歩く現金が少なくて済むことによる安全性の向上などを訴求することが有効ではないか。具体的には、店頭での「カードが使えます」告知の一層の推進やサインレス化の推進と利用者への周知促進など、カード利用のハードル除去が有効であろう。

一方、航空系カードのメイン利用者はサブカードとして流通系・ネット系などのカードを併用しており、支払先に応じて使い分けを行っている。ANA・JAL共に大規模小売店や家電量販店などとの提携カードを発行してはいるが、今回の分析結果はこれらの提携カードではカバーしきれないニーズが存在していることを示している。航空系カードはサブカードと併用されることを見据えたメインカード戦略が必要となろう。

所得富裕層をひとくくりにするのでなく、カード利用志向性を捉えたアプローチをすることが求められている。

  • クレジットカード等決済手段利用調査 概要
  • 調査時期:2016年3月
  • 調査人数:10,094人
  • 調査対象:15歳から69歳までの男女、日本国内居住
  • (うち、20歳以上は弊社アンケートパネル mif(生活者市場予測システム) 回答者)

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