第3回 クレジットカード未利用者の生活ぶりに隠された新規入会獲得のヒント

ICTイノベーション事業本部  吉川桃世

クレジットカード未利用者は意外に多い

日本におけるクレジットカードの契約数は2億4千万枚※1を超え、一人当たり2枚前後は契約していることになる。また、クレジットカード契約数自体も昨年、一昨年に引き続き増加傾向にある拡大市場である。ところが、クレジットカードを持っていない・使ったことがないという層が一定数存在するのも事実である。三菱総合研究所が行った「クレジットカード等決済手段利用調査」における20歳以上の回答者のうち、クレジットカード決済について「知らない」もしくは「知っているが使ったことはない」という割合は15.4%も存在した(図1)。

日本で初めてクレジットカードが発行されたのは1961年のことであり、すでに55年が経過している。この1961年というのは、エアコン(当時はクーラー)が世間に登場した年である。このようにクレジットカードはエアコン同様、長い歴史のある商品だが、まだクレジットカード決済を利用していない層が一定数いることも事実である。

本コラムでは、クレジットカードのさらなる普及の余地がどこに残っているのか、普及を実現するために何を行うべきかについて検討した。

図1 クレジットカードの認知・利用率(20歳以上対象)

クレジットカードの認知・利用率

※カード発行対象年齢を18~20歳以上としているカード会社が多いため、ここでは20歳以上に限った集計とした

出所:三菱総合研究所「クレジットカード等決済手段利用調査」2016年3月

一番目のクレジットカード未利用者はゲーム好きの若者

まず、クレジットカード未利用者がどの年代に多いのか、年代別集計によって確認した。結果、クレジットカードの認知・利用率には年代間で顕著な差があり、20代では34.3%もの回答者がクレジットカードを使ったことがない(図2)。大手カード会社では三菱UFJニコス Initialカードや三井住友VISAデビュープラスカード、JCB Extageカードなど、大学生や新社会人を対象としたカードを発行している。また、楽天カード、リクルートカードなどはそもそもの発行対象年齢を18歳以上としている。これらのことから、20代という年齢だけでカードが発行されないということはなく、与信の問題によってカードを持ちたくて持てないという人はわずかしか含まれないと考えられる。

図2 年代別 クレジットカードの認知・利用率

年代別 クレジットカードの認知・利用率

出所:三菱総合研究所「クレジットカード等決済手段利用調査」2016年3月

今回の調査とmif(当社が有する3万人×2,000問のアンケートパネル)をひも付け、クレジットカードを利用している20代と利用していない20代の生活行動などを比較した。クレジットカードを利用しない20代は、利用している20代に比べて、未婚者や非正規雇用での就業が多く、親と同居しており、服にこだわりを持たず、家事をしないという傾向が見られた。20代であっても信用リスク上の理由でクレカを発行してもらえないわけではなく、同じ20代であっても経済的に自立していない層が多いと考えられる。

特徴的だったのは余暇の過ごし方である。図3左にあるように、クレジットカードの利用有無で余暇の過ごし方が異なっている。クレジットカードを利用する若年層は余暇を友人や家族と一緒に楽しむのに対し、クレジットカードを利用していない若年層は、余暇は家の中で過ごすことが多いと回答している。

では、実際にどのような余暇活動を行っているのか。図3右では、20代の回答者が現在行っている余暇活動として、回答割合の大きいものから順に並べている。この結果、クレジットカードを利用していない若年層は、利用層に比べてパソコンやテレビゲーム、携帯型ゲームなどに興じる割合が高いことがわかる。

図3 若年層の余暇の過ごし方

若年層の余暇の過ごし方

出所:三菱総合研究所「クレジットカード等決済手段利用調査」2016年3月

この結果から一つの示唆が得られる。クレジットカードに親和性の低い若年層を捉える一つの手段として、テレビゲームやオンラインゲームを活用するというアイデアである。

実際にこのアイデアは既存のクレジットカード会社で実行に移されており、また一定の効果を上げているようだ。三菱UFJニコスでは、既存商品であるVIASOカードについて、「ラブライブ!」や「弱虫ペダル」といったゲームや漫画を題材にした券面を追加している。同様に三井住友カードでも「グランブルーファンタジー」や「ドラゴンクエストX」などと連携したクレジットカードを提供する。これらはいずれも近年発行されているものであり、クレジットカード会社による若年層の獲得競争のあらわれと考えられる。クレジットカードとゲームの連動は、券面デザインのみにとどまらず、限定アイテムや限定キャラクター、限定イベントなどへの拡がりも考えられ、今後の動向を注視したい。

二番目の未利用者はネットショッピングを使わない専業主婦

次に、年代以外にクレジットカードの利用に差が見られる消費者属性がないか探索的に分析した結果、既婚女性の就業状況が一つの切り口として考えられることが分かった。図4は既婚女性の就業状況別のクレジットカード利用率である。既婚女性に限っても若年層ほどクレジットカード利用率が低い傾向は先と同様だが、同じ既婚女性であっても就業者よりも専業主婦のほうがクレジットカードの利用率が低い点に注目したい。この傾向は50代を除いたどの年代でも共通している。

図4 既婚女性のクレジットカード利用率

既婚女性のクレジットカード利用率

出所:三菱総合研究所「クレジットカード等決済手段利用調査」2016年3月

そもそも、クレジットカードを利用しない理由はどこにあるのか。クレジットカードを利用しない専業主婦に聴取した未利用理由が図5である。「利用する場面がない」「セキュリティが不安」がともに3割程度を占めており、クレジットカードの利用機会を意識していないことや決済安全性への不安がカード利用の一つの障壁となっていることが分かる。

図5 専業主婦のクレジットカード未利用理由(N=150)

専業主婦のクレジットカード未利用理由

出所:三菱総合研究所「クレジットカード等決済手段利用調査」2016年3月

3割以上の専業主婦が「利用する場面がない」からクレジットカードを利用していないということが分かったが、専業主婦はどのような場面(=流通チャネル)で物品を購入したり決済したりしているのだろうか。

図6は専業主婦の各流通チャネル(業種・業態)の利用率である。この結果、ネットショッピングはクレジットカードを利用していない専業主婦の利用割合が顕著に低いことが分かる。クレジットカードの利用有無にかかわらず、主婦の利用が多いのは「食品専門スーパー」や「総合スーパー」である。

図6 専業主婦の流通チャネル利用割合

専業主婦の流通チャネル利用割合

出所:三菱総合研究所「クレジットカード等決済手段利用調査」2016年3月

「平成27年スーパーマーケット年次統計調査報告書」によると、食品専門スーパーのクレジットカード決済導入率は74.9%となっており、4店に1店はクレジットカードが使えないという現状がある。つまり、主婦が普段利用している食品専門スーパーでクレジットカードが使えないために、「利用する場面がない」と感じてしまい、クレジットカードが普及していないのではないだろうか。

そこで、主婦層にクレジットカードを浸透させるための一つの策として、スーパーマーケットのクレジットカード加盟店化の推進が考えられる。前述の報告書によると、現金以外の決済手段を導入したスーパーマーケットチェーンのうち61.8%が客単価の増加、43.9%が固定客の確保という効果があったと回答している。食品スーパーに対するクレジットカード加盟店化の推進は、カード発行企業にとっては新規会員獲得、スーパーマーケットにとっては売上増加という、両社にとって効果が期待できる施策となり得るだろう。

未利用者の想い・ニーズを組むことが次の一手につながる

今回はクレジットカードという比較的一般的な決済手段の未利用者に焦点を当て、「若年層」と「専業主婦」の2つの層において普及の余地が大きいことを明らかにした。

第一のターゲットである「若年層」では、クレジットカードを利用していない人には余暇の過ごし方がインドアである傾向が見られた。テレビゲームやオンラインゲームなど、彼らが関心のあるコンテンツと連携した普及促進策が有効であろう。 第二のターゲットである「専業主婦」は、利用頻度の高いスーパーマーケットでクレジットカードが使えないことが、入会の一つの阻害要因となっているようだ。この点については、スーパーマーケットのクレジットカード加盟店化を進めることで新規入会者が増える可能性がある。

市場にある程度浸透したサービスであっても、普及率100%に達するまでは利用者の拡大余地がある。未利用者のデータを分析することで、ターゲットとなるお客さまの関心事や行動パターンが見えてくる。このように、特定のターゲットに対するデータを多面的に扱って仮説を検証していくことで、「顧客に響く」戦略を立てて新しい商品や施策の糸口を見つけることができるのだ。

  • クレジットカード等決済手段利用調査 概要
  • 調査時期:2016年3月
  • 調査人数:10,094人
  • 調査対象:15歳から69歳までの男女、日本国内居住
  • (うち、20歳以上は弊社アンケートパネル mif(生活者市場予測システム) 回答者)

(※1)日本クレジット協会公表値(2015年12月時点)


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