海外に学ぶアクティブシニアのライフスタイル 米国の大学連携型コミュニティ ~アクティブシニアは過去を語らず今を語る~

プラチナ社会研究センター 主任研究員 松田智生

元気で充実した老後への思いは日本も海外も同じである。ところで海外のアクティブシニアは、どのようなライフスタイルを送っているのだろうか。
本稿では、米国で多数展開されている大学連携型の高齢者コミュニティの事例を紹介する。これらの事例は、高齢化対応・地域活性化・新産業創造の面について数多くの示唆を与えている。

■米国におけるリタイアメント・コミュニティ

リタイアメント・コミュニティとは、ゴルフ場を中核として住居、娯楽、医療等が整備されたアクティブシニアのための街であり、フロリダ、アリゾナ、カリフォルニアなどの温暖な地域で開発・運営されている。米国ではこのような街が1,000以上存在する。
しかし、シニアの理想郷と思われたこのリタイアメント・コミュニティにも盲点があった。第一に「世代の偏り」である。若者の非行や喧騒を避けてシニアの街としたが、若者不在、世代交流不在は、街の活気と多様性が損なわれる結果となった。 第二に「知的刺激の不在」である。温暖な気候、ゴルフ三昧、ストレスフリーといった快適過ぎる環境によって、頭を使わなくなることから、急速に衰えてアルツハイマー病などの認知症を患うおそれがある。シニアには体の元気だけでなく頭の元気も必要なのである。

■第二世代コミュニティ 大学連携型コミュニティの広がり

初期(第一世代)のコミュニティの課題であった「世代の偏り」と「知的刺激の不在」を解決したのが、第二世代の大学連携型コミュニティである。
この第二世代のコミュニティは、大学の敷地内や近隣に設置されており、このコミュニティに居住するシニアは、生涯学習講座で学び、再びキャンパスライフを体験することができる。このような大学連携型コミュニティは全米で約70存在する。
例えば、マサチューセッツ州のラッセル・ビレッジでは、入居条件として年間450時間以上の講座を受講することとなっている。また、他の大学では、シニアが講師になる講座もあり、元弁護士や元投資銀行家、元エンジニアが、学生のキャリア・アドバイザーになる。そして、シニアの側は、学んだり教えたりすることで「何かに打ち込んでいる」、「誰かの役に立っている」という実感を得ることができる。

表1 米国のリタイアメント・コミュニティ 第一世代と第二世代の比較
 項目 第一世代第二世代
 場所  温暖な地域 全国(温暖な場所に限定せず)
 中核施設  ゴルフ場 大学
 ライフスタイル  ゴルフ三昧、遊び中心 生涯学習、知的刺激
 居住者  高齢者のみ(若者不在) 高齢者と近隣の多様な世代

表2 第二世代の主な大学連携型リタイアメント・コミュニティ
 大学名 名称所在地
 ラッセルカレッジ  ラッセル・ビレッジ マサチューセッツ州
 イサカカレッジ  イサカコミュニティ ニューヨーク州
 デューク大学  フォレスト・アット・デューク ノースカロライナ州
 スタンフォード大学  クラッシク・レジデンス カリフォルニア州
 ダートマス大学  ケンダル・アット・ハノーバー ニューハンプシャー州

■平均年齢84歳、入居率98%の大学連携型コミュニティ

筆者が昨年訪問したアイビーリーグの名門校、ダートマス大学の近隣「ケンダル・アット・ハノーバー」では、26万平方メートルの広大な敷地に約400人が暮らしている。ここの平均年齢は84歳で米国の平均寿命79歳を上回り、しかも居住者の80%以上が元気である。
居室は、健常者用、軽介護用、重介護用、認知症用の4種類に分かれた、CCRC( Continuing Care Retirement Community)と呼ばれる施設で、居住者は、いつ健康状態が悪化しても同じ敷地内でケアを受けることができ、安心して暮らし続けられるようになっている。入居率は98%と経営面も極めて順調であり、さらに地元の市に約300人の雇用者を創出し、市は多額の税収を得ている。


■大学街の高齢者コミュニティ

注目すべき点は、「大学街にあるコミュニティ」というコンセプトである。地元ハノーバー市は人口約1万人で、その半数がダートマス大学の関係者という学生街であり、第一世代のシニア・コミュニティに見られた「若者不在」という課題を解決している。近隣では、街のレストランで高齢者と若者が食事を楽しんでいる姿も見かける。
また同大学の生涯学習講座は、国際政治、環境、文学、歴史、哲学、音楽、健康など約50と多岐に渡っており、シニアの多様化する知的好奇心を満たしている。

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