震災から持続可能性を再考する -東北からの日本再生-

プラチナ社会研究センター チーフプロジェクトマネジャー 菅原章文

希望の生まれる復興を

東日本大震災の発生から5か月が経過した。原子力発電所の事故という複合要因も相まって、厳しい状況は依然続いているが、将来を見据え、未来に希望の生まれる復興を何としても実現したい。

三菱総合研究所プラチナ社会研究センターでは、5月末に震災復興提言として「集団移転型復興計画」を提唱した。本提言では、一部で住居の移転を余儀なくされる地区や世帯が発生する状況に対して、一定規模の集団移転と近傍での産業立地・雇用創出を同時に行い、移転先において地域復興の拠点となる「新しいまち」「住み続けたくなる持続可能なまち」をつくることを提案している。これにより、多くの被災地域において従来からの課題であった少子高齢化、環境・エネルギー問題、地域雇用確保などを同時に解決し、次世代に引き継ぐことのできるまちをつくりだすことを主旨としている。

新しいコンパクトな復興のまち

「集団移転型復興計画」の具体的内容は、以下のようなものだ。
まず、歩いて暮らせる規模の区域に、集合住宅を中心に人口数千人が居住するコンパクトで安全なまちを建設する。そこでは子育て世代のための小学校を擁し、商業等の地域の経済活力を維持できるようにする。
新たに必要となる雇用は、農業を軸としながらもその加工、流通も含めた1次産業の6次産業化や再生エネルギーを活用したエネルギーの地産地消化・地場産業化によっても生み出す。
環境・エネルギーに関しては、居住形態(集住)や断熱効果の向上、再生エネルギーの徹底利用により化石燃料の使用を抑え、温室効果ガスを80%削減し、洞爺湖サミットで合意された2050年に世界の温室効果ガスを50%削減するという目標を前倒し達成する。また地域のエネルギー自給率を50%以上とし、予想される石油価格の高騰リスクにも強いまちをつくる。
病院等医療機関も設けるが、コンパクトなまちとすることで、住民には医療や介護などのサービスが受けやすくなるという安心感が、サービス提供側には高効率な最適サービスの実現といったメリットがもたらされる。また、多世代が近居することで、無縁社会化の防止、共助によるコミュニティの活力維持が期待できる。

こうして生み出されるまちは、復興を象徴するモデルになるばかりでなく、わが国の再生にむけての地域のモデルともなる。わが国を代表する再生可能エネルギーのまち、住みやすい、住みたくなるまちとして、世界にアピールしていくことが期待される。

キーワードは持続可能性

本提言は、地域の持続可能性を重視して作成した。
三陸地方を中心に、東北地方太平洋岸は歴史的にも大きな津波災害を繰り返し受けてきたが、そのたびに粘り強く復興して、地域を持続させ今日に至った。
しかし、被災地は他の日本の多くの地域と同様、あるいはそれ以上に超高齢化、人口減少、雇用問題、医療危機、財政問題など多くの問題を抱えており、仮に震災がなくても、20年後、30年後には存続の危機を迎えていた可能性が高い。

この提言は、復興を契機に新しいまちをつくることでこうした地域の危機を克服し、50年後、100年後まで輝く地域を維持することをねらいとしている。
人口が減少していく状況下において、新しいまちが必要かの疑問は当然あるが、人口が減少するからこそ新しいまちをつくり、地域の成長拠点として維持発展させることが必要と考える。

次世代が住みたくなるまちをつくる

新しいまちは、被災地ばかりでなく、人口構成などから10年単位で見て存続が困難な中山間の住民を受け入れることも視野に入れたい。このことで地域全体の行政サービスの向上と財政負担の軽減の両立も視野に入れることができる。
むろん、新しいまちは強制的にできあがるものではなく、まちの魅力で人が集まり、居住することが原則であり、住みたくなるまちをつくることが何よりも重要である。

用地・財源の確保、産業の誘致・育成、住民の意思形成をはじめ実現に向けての課題は多々あるが、未曾有の災害を克服するとともに、わが国の地域再生を先導する取り組みとして位置づけることにより、行政はじめ民間の活力も最大限集中して、ぜひとも成功させていきたい。