地域情報発信拠点としての図書館を支える『新しい図書館システム』

公共ソリューション本部 主席研究員 吉田大祐

本を扱う図書館から、地域情報を発信する図書館へ

従来の図書館は、知の収集・提供機関として、図書の収集・閲覧貸出を主な業務としてきた。しかしながら、利用者の情報探索行動は今やインターネットの普及に伴って大きく変化している。まずインターネットで検索し、副次的に図書館を活用するのが一般的となりつつある。また、電子書籍が普及すれば、情報探索行動は更に変化する。こうした中で、図書館の役割も変化してきており、従来の図書の収集・閲覧貸出に加えて、地域の特性等に応じ、ビジネス支援、地域情報発信、教育支援、児童・障がい者支援、電子図書館対応などに取り組んでいる。こうした努力の結果、書籍販売が減少の一途を辿るなかで、図書館における図書貸出数は、ここ数年、継続して2~5%程度の伸びを示している。なかでも、地域情報発信に積極的に取り組む図書館は多い。例えば、地域の文化や歴史と関連の深い所蔵資料をデジタル・アーカイブ化して、インターネット上で配信する図書館は多数ある。

しかしながら、利用者から見れば、何か調べ物をしようとしたときに、未だ図書館の所蔵情報だけでは事足らないケースがほとんどである。つまり、他の図書館の所蔵や、インターネット上の各種コンテンツも調べたいというニーズに対応することが望ましい。今後、図書館が地域情報を発信していく際に、自館の所蔵情報に加えて、館内外の様々な情報を、網羅的、体系的かつ信頼のおける情報として発信していくことが求められる。図書館システムに対しても、図書館が地域情報発信の役割を積極的に発揮できるような機能が求められてきている。

次世代のオープンソース図書館システム Next-L Enju

Next-L Enjuは、図書館が地域情報を自ら発信しようとしたときに、非常に優れた機能を有している。Next-L Enjuは、同志社大学の原田隆史准教授らが主宰するオープンソースの図書館システムであり、貸出・返却、受入、在庫管理、OPAC(蔵書検索)等、図書館システムとして必要な機能が一通り搭載されており、特にOPACの機能が優れている。多くの図書館員がオープンソース・コミュニティに参加して仕様を検討したものであり、図書館員の手で作られた図書館システムである点が特長となっている。

実際のNext-L Enjuでの情報探索の一例を紹介する。図1は、Next-L Enjuで「宮沢 賢治」を検索した結果である(架空の所蔵情報などを投入したデモサイト)。「図説宮沢賢治」「岩手県ボラン町字七つ森へ:宮沢賢治への旅」といった図書館の所蔵情報(書棚、貸出状態など)が表示されている。このほか、「宮沢賢治記念館」、「宮沢賢治学会イーハトーブセンター」のホームページリンク、宮沢賢治のWikipediaサイトへのリンク、青空文庫という電子書籍サイトに無料で掲載されている「銀河鉄道の夜」へのリンクも、所蔵情報と一緒に検索できるようになっている。これらの情報は、図書館員が予め登録しておく必要があるが、ベンダーへ依頼しなくても、図書館員自らが簡単に登録することができる。

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図1 Next-L Enjuでの検索結果の一例(「宮沢 賢治」で検索した結果)

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