欧州に学ぶ脱・無縁社会への挑戦 第2回 フランスに学ぶ ~世代間同居が独居老人問題を解決する

プラチナ社会研究センター 主任研究員 松田智生

ポイント

  • 独居老人問題は、日本だけではなく欧州でも大きな問題になっている。
  • フランスで、高齢者と学生の世代間同居という新たな挑戦が始まっている。
  • 世代間同居は、1.高齢者と学生 2.地域社会 3.行政 の三方一両得をもたらしている。

■世代間同居 ― ひとつ屋根・ふたつ世代

フランスで、高齢者と学生による他人同士の『世代間同居』という脱・無縁社会に向けた新たな挑戦が始まっている。
きっかけは2003年の猛暑により全仏で1万5千人が死亡するという悲劇であった。犠牲者の多くが独居老人であったことから、政府によって、「ひとつ屋根・ふたつ世代」という世代間同居政策が立案された。

パリ郊外の閑静な住宅地。一軒家に住む高齢の女性は、数年前に夫を亡くしてから一人暮らしとなり、元気がなかった。一方、音大に通う20代の学生は、パリでのひとり暮らしのさびしさ、そして高い家賃が悩みの種だった。こうして、仲介機関のNPOを通じて始まった二人の同居生活。二人は一日の出来事を互いに語り合い、高齢者は学生のために献立を考えることが楽しみになり、孫のような青年が現れて大満足だ。また、学生は家庭的な暮らしのなか、高齢者の手伝いで誰かの役に立っている実感を得られている。
こうした世代間同居は、NPOや企業が仲介機関となって高齢者と学生を結びつけ、現在全仏で1千組を超えているという。

筆者がインタビューしたNPO 「2つの世代のアンサンブル」の事例を紹介しよう。
高齢者と学生はNPOに登録料を支払い、条件の合う者同士で数回の面談を経て同居を開始、同居時にNPOへ仲介料を支払う。
同居の形態には以下のような3つのタイプがあり、週6日一緒に食事をして夜間在宅するタイプだと家賃は無料になる。また、週1日の一緒の夕食と夜間在宅のタイプだと月100ユーロの家賃を学生が高齢者に支払う。

表 世代間同居の契約形態
 タイプ 同居条件
 無料  ●週6日の一緒の夕食と夜間在宅が条件
 格安  ●週1日の一緒の夕食と夜間在宅が条件
●買い物支援なども契約条項に追加可能
 連帯  ●部屋だけ提供。一緒の食事や夜間在宅条件なし

■成功の秘訣は「絆の契約」

同居がうまくいく秘訣はどこにあるのか。このNPOでは、高齢者と学生それぞれの信条・趣味・嗜好について徹底した事前調査をしており、マッチングの確度を高めている。また、洗濯機やテレビの利用時間といった生活のルールも曖昧でなく明文化し、トラブルを未然に防いでいる。単に同居で家賃を浮かせたいという意識だけの学生や、単にヘルパーがほしいという高齢者はお断りしており、対等な関係での同居がベースになっている。こうした取り組みが成功の秘訣であり、2011年にこのNPOが仲介した250組のうち95%が満足と回答している。NPOの代表女性は語る。
「私たちの仕事は単なる不動産の仲介業ではなく、『絆の契約』です。そして、私はこの仕事に人生を捧げているのです。」
これだけ覚悟を決めて真剣に取り組む人が成功をもたらすのだ。

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