6次産業化ビジネススクールで地域活性化の人づくりを!

経営コンサルティング本部 研究員 杉山圭記

2011年2月最初の土曜日、宇都宮大学のとある教室では、講師陣や他の受講生約30人を前にして、6人の代表者がそれぞれのグループで考えてきた農産物を活用したビジネスプランを発表していた。あるグループは、メンバーが栽培しているホウレンソウの「緑色」を活かした天然染料、別のグループはさつまいもの繊維質に着目した機能性食品、などのプランを披露した。2ヶ月に渡り30コマの講義を受けた成果として作り上げたものである。優勝は、県内産の大豆・規格外野菜を用いたみそ汁缶であった。
これは、農林水産省からの委託事業として当社が実施した「平成22年度新事業創出人材育成事業」で開発した、6次産業化を担う人材の育成プログラムにおけるビジネスプラン発表会の様子である。

6次産業化の重要性

ご存知の方も多いと思うが、6次産業化は第1次産業から第2次・第3次産業に進出し、事業の高付加価値化を目指すという考え方である。
例えば食品分野では、2005年における日本全体の食用農水産物の生産額は10.6兆円(海外輸入分を含む)だが、日本国内の食料品の最終消費額は73.6兆円(※1)である 。6次産業化によって付加価値を高められる証左である。
ただ、6次産業化は必ずしも食品分野に限らない。農林水産省では、さらに素材・エネルギー・医薬品分野等を含めた「農山漁村に由来する地域資源を活用した新事業の創出」を目指している。冒頭でご紹介したホウレンソウのビジネスプランは、その一例となる考えであり、本稿ではこうした意味を含めて6次産業化という言葉を用いる。
都市に比べて相対的に第1次産業の従事者が多い地域では、6次産業化は地域経済の活性化につながる重要な取り組みである。しかし、6次産業化の事例はまだ多くはない。その原因として、実践できる人材の不足が指摘できる。

6次産業化ビジネススクールの必要性

現在、地方自治体や農学部を持つ大学、民間企業などが中心となって立ち上げた農業者や就農希望者を対象とする「農業ビジネススクール」が増えつつある。例えば、地方自治体では熊本県、栃木県などがあり、大学では岩手大学、佐賀大学などがある。これらは農業人材の強化に向けた重要な取り組みである。
しかし、本稿で述べる6次産業化の意味を考え、「農山漁村に由来する地域資源を活用した新事業の創出」という観点で地域の活性化を図るためには、農業者だけでなく、商工業者を含めた人材育成が必要である。そこで、我々は主な受講対象を農業者・商工業関係者の両方に据えた「6次産業化ビジネススクール」を目指した。

プログラム開発のコンセプト

プログラム開発のコンセプトとして、第一に、第1次産業と第2次・第3次産業の間にある「谷間」を克服することと設定した。自然を相手にしつつ「家業」として代々家中心に営まれてきた第1次産業と、自然条件を排除しつつ「事業」として自由競争の中で効率性が追求されてきた第2次・第3次産業の間には、越えがたい「谷間」が存在すると考えたのである。
第二に、生産者視点(プロダクトアウト)になりがちな第1次産業従事者に対して、ビジネスの基本である消費者視点(マーケットイン)を定着させることと設定した。
これらに基づき、我々は、「6次産業化実践論」「新事業創出実践論」の2科目各15コマを開発した。前者は、6次産業化の必要性と事例の紹介分析、並びにケースメソッドを用いた意思決定能力の涵養(かんよう)を図る内容である。後者は、経営戦略立案・マーケティング分析等の経営スキルを学び、それらを活用してグループでビジネスプランを立案する内容となっている(※2) 。
開発したプログラムは宇都宮大学・栃木県等のご協力を得て、2010年12月~2011年2月の毎週土曜日に、36人を対象とした実証講義に供された。

※1 総務省他9府省庁「平成17年産業連関表」に基づく農林水産省の試算。
右記URL参照:http://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/pdf/furo_17.pdf

※2 詳細カリキュラムは右記参照:http://www.6ji-biz.jp/html/proof_lecture_detail.html

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