大きなスコープでイノベーションを

常務執行役員 研究・開発部門長  岩瀬 広

 かつて日本の技術が生み出した携帯音楽プレーヤーは、屋外で音楽を楽しむというライフスタイル革命を起こし、世界中に新たな市場を創出した。一方、その後に登場したダウンロード型の携帯音楽プレーヤーは、機材の小型化だけでなく、インターネット接続によって音楽ソースの入手方法、さらには流通の仕組みを変え、全く新しいビジネスを創り出し、世界市場を一気に塗り替えた。同様に、日本の携帯電話は、独自のネット接続技術によって国内での急速な普及を促進したが、その後世界市場に対応するスマートフォンに取って代わられた。

 これらに共通するのは、ある技術革新がどこまでその影響を及ぼすかを見通す力の差である。すなわち機材の小型化技術やネット接続技術は確かに素晴らしかったが、単目的を達成する技術革新にとどまった。データの取り方自体を変える、電話も機能の一部とする、といったスコープの広さで目的自体を抜本的に変える技術開発を継続しなかった。どんなスコープでどんな技術を開発するか、その技術を活かしてどのような社会変革を促すか。こういった大きく構想する力が欠けていたのだ。

 2016年度の文部科学省の調査結果では、大幅な技術革新による製品・サービスを開発した日本企業のうち他社などと共同で開発したのは35%にとどまる。いわゆる自前主義が多い状況だが、これでは大きなスコープで構想をめぐらし、製品・技術を開発することは難しく、チャンスはあってもまた同じ轍を踏む。自社の得意技術を基盤としつつ、海外を含む他社や他機関と連携することで大きなスコープをもつ。そうすれば社会を変えるまでの大きなビジネスが描ける可能性も広がる。

 外部連携による「技術力+大きなスコープ」で、日本企業がイノベーションを起こし、世界市場をリードすることを期待したい。


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