一人当たりGDPと中所得国の罠



国民の所得水準を測るものさし

  • 国の経済規模を測る指標は、国内総生産(GDP)や国民総所得(GNI)が一般的であるが、国民の平均的な所得水準を表す指標に「国民一人当たりGDP」がある。
  • IMF(国際通貨基金)によると、2012年の一人当たりGDPの世界1位はルクセンブルク(10.6万ドル)であり、日本は12位(4.7万ドル)に位置する。GDPでは世界2位の中国も、一人当たりGDPでは89位(6千ドル)となる。
  • 日本の一人当たりGDPは経済発展とともに上昇してきた。1960年時点では500ドル足らずであったが、高度成長期を経て70年代半ばに5,000ドルを、80年代前半に1万ドルを突破。90年代半ばには円高の影響もあり、一時4万ドルを超えた後、3万ドル台で推移する停滞期を経て12年の4.7万ドルとなった。

耐久財などの普及フェーズとも相関

  • 日米独などG7平均の一人当たりGDPが4万ドル台である一方、BRICSやASEANなど新興国の多くは、一人当たりGDPが2万ドルを下回る水準にある。
  • 一人当たりGDPは耐久財などの普及率とも相関が高く、3,000ドルを超えると家電など耐久消費財が普及し、5,000ドルを超えると自動車などの普及が進むとされる。12年時点で3,000ドル前後にあるのがインドネシアやフィリピン、5,000ドル前後が中国やタイである。
  • 近年、賃金の安さから生産拠点として注目を集める「後発」新興国の所得水準はさらに低く、インドやベトナムは1,500ドル程度、ミャンマーやカンボジアは1,000ドル未満である。

一人当たりGDP2万ドルの壁

  • 「中所得国の罠」という言葉がある。一人当たりGDPが1万ドル台に達したところで伸び悩み、2万ドルの壁を越えられない状況をさす。ブラジルやアルゼンチン、マレーシアなどがこれに当てはまるとされ、中所得国の罠をうまく抜け出せた国として韓国や台湾が挙げられる。
  • 天然資源に恵まれる国ほどこの罠に陥りやすい傾向にある。資源輸出の牽引で中程度の所得水準には到達できる反面、製造業の競争力強化を怠りがちである。結果として、高付加価値産業への構造転換に失敗し、資源国ながらも貿易赤字に苦しむことになる。
  • 中所得国の罠を回避するには、持続的な生産性の向上が不可欠であるが、アジア各国で進む少子高齢化や農村余剰労働力の減少は、賃金の上昇などを通じて生産性の上昇ペースを鈍化させる。特に一人っ子政策の影響から30年にかけて急速に少子高齢化が進む中国では、構造改革による生産性向上が急務となる。

日本の一人当たりGDPの推移と新興国の現状


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