[安全]日本の食文化を食品と共に世界に提供―日本発の安全規格がアジアの食品産業を成長させる

Point
食品の海外展開には国際標準の安全規格の取得が必須。
日本もようやく食品事業者の賛同のもと国際標準規格の運営がスタート。
安全・高品質を誇る日本の食文化を食品と共に世界に提供する好機に。

社会公共マネジメント研究本部 宮﨑 昌

 国を越えて原材料・食品の流通が拡大する中、各国事情に合わせて策定された食品安全規格を世界共通化する動きが活発化している。こうした動きの中で、民間組織である世界食品安全イニシアチブ(GFSI*1)は新たな仕組みを構築し、GFSI承認規格を国際的な食品安全の手法(HACCP*2)に準拠した世界共通の規格・認証スキームとして収斂させることを目指している。この規格の認証取得により、食品企業は「食品安全のパスポート」を手にすることができるようになる。

 日本の食品事業者は、独自の仕組みにより世界に誇る品質と安全を維持してきた。しかし、輸出に際しては、各国の実情に準拠した規格による適合・認証を都度、取得する必要があり、そのための審査コストや手間、言語の違いが足かせとなり、認証件数は伸び悩んでいる。政府や食品業界は、このままでは「国際化の流れから取り残されるのでは」という強い危機感を抱いている。

 こうした危機感を背景に2016年1月、多くの食品事業者の賛同を得て、日本発の食品安全管理の規格・認証スキームの運営などを目的とした「食品安全マネジメント協会」が発足した。日本発の規格・認証スキームがGFSIに承認されれば、海外展開を考えるさまざまな事業者が日本の食品事情に適した規格に基づく認証取得によって、国際取引に参加できる可能性が広がる(図)。さらに、国際規格の運営主体となることは、国際的な制度作りの中で日本の強みを主張する機会につながり、日本の食品業界が、高品質で安全な仕組みを世界に発信する好機ともなる。

 中国、インドを含むアジアの食品市場は、2020年に229兆円(農林水産省推計)に成長するといわれている。日本発の食品安全管理の規格・認証スキームが誕生すれば、日本の食品業界はアジア市場を対象に、新たな成長のステージに向かうことになる。認証機関や研究・教育機関、コンサルティング企業、金融機関などを巻き込み、日本の食文化を高品質で安全な食品と共に世界に提供していくことは、アジア全体の食品業界の持続的な成長にも資する。

図 日本発の食品安全マネジメント規格・認証スキームによって実現すべき将来像

*1:Global Food Safety Initiativeの略。グローバルな消費財流通業界の団体であるCGF(The Consumer Goods Forum)内にある食品安全をテーマとした「分科会」組織。ウォルマートやイオンなどの小売業、コカ・コーラやマクドナルドといった食品業など世界有数の企業が参加。活動の一つとして、GFSIの基準を満たす食品安全に関する既存規格の承認を行っている。

*2:Hazard Analysis and Critical Control Pointの略。FAOおよびWHOにより設置された国際的な政府間機関で、国際食品規格などを作成するコーデックス委員会から発表され、導入を推奨している衛生管理の手法。予想される危害をあらかじめ分析し対策を講じる手法を示している。


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