[経営]質向上のための設備投資が成長の鍵

Point
企業収益の改善に比して設備投資の伸びは緩やか。
過去に「質向上のための設備投資」を行った企業ほど、最近のROA水準が高い。
中長期的な成長のためには、付加価値向上につながる投資が不可欠。

政策・経済研究センター 坂本 貴志

 2012年から3年間の設備投資の動向をみると、経常利益は大きく増加しているにもかかわらず、その伸びは緩やかである*1。国内市場の縮小が懸念されていることが要因と考えられるが、企業が設備投資を積極的に行う余地はないだろうか。

 「設備投資計画調査」によると、製造業では、07年には能力増強を目的とした設備投資が42.8%を占めていたが、15年は22.2%*2にまで低下し、新製品・製品高度化などを動機とする設備投資割合は増加した。製造業各企業は設備投資抑制を図る中で*3、量から質への転換を進めているといえよう。

 人口減少の中で、規模追求の設備投資を縮小させることは、企業の合理的行動とも考えられる。一方、新製品・製品高度化など「質向上のための設備投資」を行った企業の収益はどうなっているのか。設備投資総額と前述の動機別の設備投資割合から質向上のための設備投資額を算出し、利益率との関係を調べた。その結果、2000年代に質向上のための設備投資額を増やした輸送用機械など、過去に質向上のための設備投資を行った業種ほど、総資本利益率(ROA)*4が高くなる傾向がみられた。単に設備投資の量を拡大するのではなく、新製品の生産や製品・サービスの高度化など付加価値向上につながる設備投資を実行できるかが、日本企業の収益率向上の鍵になっている。

 日本政策投資銀行の調査によると、製造業で約半数、非製造業で約6割の企業が中長期的な成長市場の開拓を行っていないと答えている。本業で収益確保を見込むことが主な理由であるが、AIやIoTなどの新しい技術により産業構造が変化している中で、新技術を用いた設備投資を行い、新たな製品やサービスを生み出す余地はあるはずだ。

 新市場開拓を目的とした投資を進めることで、投資を消費や所得向上など好循環の実現につなげることは十分可能である。企業が、先端技術への投資、人材の長期育成など、将来の付加価値向上につながる投資を行うことが、日本経済の中長期的な成長のために不可欠だ。

図 ROAと質向上のための設備投資

*1:リーマンショック前の景気拡張期である2000年から07年までは、経常利益が同52.4%増に比して設備投資は同27.9%増と堅調に増加したが、12年から15年までの3年間は、経常利益の伸びが同42.8%増であるのに対し、設備投資は同13.5%増と設備投資の伸びは緩やか。

*2:2015年は計画ベース。

*3:財務省「法人企業統計」によれば、製造業の設備投資額は、2007年から15年にかけて5.5兆円減少。

*4:総資本利益率(ROA)=経常利益/総資産。


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