[エネルギー]電力を「収穫」する技術がIoE社会を支える

Point
IoE社会に向けて世界に散らばる無数のセンサーへの電力供給が課題に。
その鍵を握るのはエネルギーハーベスティング(EH)の技術。
EH技術実用化にはコスト低減が鍵、官民による市場創出で具現化したい。

政策・経済研究センター 清水 紹寛

 毎年1兆個のセンサーが稼動し、世界に散らばるあらゆる情報を収集・分析することで、地球上の課題解決を図るという壮大な未来が現実になろうとしている。全てがつながるIoE(Internet of Everything)社会の到来である。

 その無数のセンサーに電力を供給する技術として注目されているのが、エネルギーハーベスティング(EH)だ。身の回りにある熱や振動、太陽光などの微弱エネルギーを収穫(ハーベスト)して電気エネルギーに変換する(環境発電)。EHの技術をセンサーに取り入れると、電力コストがかからなくなることに加えて、電池または電力を供給する配線が不要になる。その結果、化学プラント内から体内まで、メンテナンスが難しかったところなど、あらゆるところに、センサーを設置することが可能になる。心房の圧力差で発電する心臓ペースメーカーなどは好例だ。なお、こうしたメリットを享受するには、センサーが収集したデータを通信する回線を無線化することも忘れてはならない(図)。

 EHの技術自体は今には始まったものではなく、「太陽電池つきの電卓」と言えばなじみ深いだろう。2006年にはJR東京駅の改札口で発電床の実証実験が行われ、駅利用者が歩行する際の振動から得られた電力が駅の照明やエスカレーターにも使われた。それが、IoE社会における「無数のセンサーに電力供給する」という課題を前に、あらためて脚光を浴びたかたちである。

 留意すべきは、日本はEHの初期の製品化では一定の存在感を示したものの、近年の実用化については、価格や信頼性の面で欧米より遅れている点である。例えば独企業エンオーシャンはビルの照明スイッチなどにEH技術を導入し、市場を開拓している。日本でも超スマート社会の実現に向けた取り組み「Society5.0」が始まり、総務省がスマートインフラ向け通信技術の研究開発・国際標準化を推進している。近々、EH市場も形成されてこよう。こうした国の動きを好機と捉え、あらゆる分野でEH技術を採用する民間企業が増えることを期待したい。

図 EHのメリットを生かす無線化のイメージ


関連するコラム・レポート

関連するサービス