[医療]中小企業の医療機器参入に不可欠なこと

Point
医療機器市場に中小企業の新規参入が相次いでいるが、失敗も多い。
一部の医師の要望にとらわれず広範な現場ニーズを把握することが肝要。
解決には、公的機関が提供する製品評価サービスを利用するのも一手。

ヘルスケア・ウェルネス事業本部 池田 佳代子

 先進国の高齢化や新興国での治療インフラ拡充などから、医療機器は成長産業となっている。国内の市場規模も2014年時点で約2.8兆円*1と拡大傾向にあり、CTスキャナーのような大型診断装置からメスや注射針に至るまで30万品目が存在する。

 この少量多品種ぶりは中小企業には魅力と言える。人命に関わる製品だけに当然、規制や技術の面で参入のハードルは高いが、市場に入れれば、自社の品質管理の高さや技術力を活かして安定収益の確保が見込める。成形分野の技術に長けた企業が日本人に合った心臓向けバルーンカテーテル*2を製品化したほか、工業用の極細ロープ製造会社が血管内治療用ガイドワイヤー*3を開発するなど、新規参入が相次いできた。

 だが、技術や規制のほかにもクリアすべき課題が存在する。開発に不可欠な医療現場のニーズを正確に把握することだ。少数の医療従事者(医師や看護師、臨床検査技師など)の意見に基づいて製品開発を行ったものの、実際にはごく一部のニーズにのみ特化していたため、高額な開発費を投じたにもかかわらず、ほとんど売れないケースも存在する。

 失敗の原因としては、新規参入企業のもつ情報ネットワークが乏しい点が挙げられる。一部の医療従事者としか接点を持たないため視野が狭くなり、彼らが望む製品を開発はできても、現場全般のニーズを的確に汲み取れない。特に自社の技術力と人脈に自信をもっている中小企業ほど、こうした苦境に陥りがちである。

 つまり、参入を希望する中小企業が広範な医療ニーズを把握し続けられる仕組みがあれば、医療機器市場を活性化させられるかもしれない。

 こうした事情から、公的機関である日本医療研究開発機構(AMED)は4月に、医療機器に関する現場の意見を企業にフィードバックする「製品評価サービス」を開始した。このサービスを使えば中小企業は、一部ではなく市場全般に受け入れられる医療機器の開発に専念しやすくなる。各地の多様な医療従事者から、製品コンセプトへの意見を収集できるほか、試作品の使い勝手や、実際に購入したいかどうかについても話を聞くことができる。

製品評価サービスの仕組み


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