[人材教育]社員の「学びなおし」はインセンティブで支援

Point
産業構造の急速な変化により、人材が保有するスキルは容易に陳腐化する。
「学びなおし」には「学習意欲・協働力・探求力」が必要となる。
社会変革による学習インセンティブの付与と学びの場の提供が重要である。

科学・安全事業本部 沼田 雅美

 日本では新卒採用・定年制度により、数十年のスパンで労働力のギャップ解消やスキル要件の変化に対応してきた。しかし、人工知能(AI)導入などに伴う産業構造の急速な変化により、これまでのスキルは容易に陳腐化し、求められるものが多様化、高度化していく。加えて、現役で働く期間が延長することで、一生の間に複数の仕事をするのが当たり前の社会が到来する。

 このような社会では、人は仕事を続けながら、あるいは一時的に仕事を辞めて、生涯を通じて学び続けることが求められる。そして、誰もが必要な時に、必要なことを学べる教育システムが、社会にとっても企業にとっても強みになりうる。

 一方で当社が実施した調査によると(*1)、働きながら教育機関で学んだ経験がある社会人は3割にとどまる(図)。時間や学費の問題のほか、ニーズに合う教育機関が近くにないこと、学んでも報われないことが障壁となっている。個人の学習意欲の問題が大きいように思われがちだが、そうではない。学んでも人事や雇用の面で十分に評価されないために、学習インセンティブが働かないことにこそ問題の本質がある。

 まず、生涯にわたって「知」を探求するための基本的なスキルとして、自ら進んで取り組む「学習意欲」、周囲と力を合わせて結果を出す「協働力」、深く物事を掘り下げる「探求力」を身につけることが重要だ。教育機関では、これらのスキル習得に必要なカリキュラムを組むとともに、いつでもどこでも授業を受けられるような、ワークショップやフィールドワーク型の教育の開発や整備を進める必要がある。

 また、企業では、研修や自己研鑽支援の充実だけでなく、継続的な学習歴を評価し、それに応じた職務機会を提供すること、あるいはキャリアプランに即した教育機会を提供することが求められる。そして、大学や専門学校と企業が学生だけではなく、社会人の教育面でも連携し、各社のニーズを反映したプログラムを提供していくことが必要である。自ら学ぶ社会人へのインセンティブ付与と学びの場の提供を両輪で進めていくには、社会全体の変革が欠かせない。

図「働きながら学んだ」経験の有無


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