[復興]東京五輪で「福島の今」を伝えるには

Point
東京五輪は、福島復興を世界に示す絶好の機会である。
しかし、国内でさえも「福島の今」への認識不足が続いている。
国内外での正しい理解浸透こそ、福島県民の実感が伴う復興につながる。

原子力安全事業本部 村上 佳菜

 2020年東京オリンピックの野球・ソフトボール競技の福島県内開催が、2017年3月に決定した。福島県は、東京オリンピック・パラリンピックを、東日本大震災からの復興ぶりを国内外に発信する絶好の機会と捉え、2020年以降の「新生ふくしま」を目指す各種の取り組みを開始したが、福島の復興状況は現在、福島県外でどの程度認知されているだろうか。

 当社が2017年8月に実施したアンケート(*1)では、対象となった東京都民の5割強が、福島の現状を東京都民が正確に理解していないと回答した。調査結果によって、東京では震災への関心が薄れ、復興に向けて変化する福島の姿が伝わりにくくなり、放射線の健康への影響に関する誤解も残っている実情が示された。今後も福島への関心が薄れ、震災直後のイメージが定着してしまうのではと危惧される。

 放射線への懸念からか、福島県への観光客数や教育旅行件数は2017年現在でも、震災前に比べ落ち込んだままである。しかし、福島県内の空間放射線量率は震災直後から大幅に低下しており、帰還困難区域外では東京や海外の都市と同程度となっている(*2)。福島県産品の販売不振も長期化しているが、出荷前検査によって放射性物質が基準値を超過した農林水産物の市場への流通は制限されている。特に米は全量・全袋が検査され、2016年度に基準値を上回ったものはなかった(*3)

 着実に復興が進む「福島の今」について、大会を契機として海外からの理解を促進するためには、まず国内での認識不足を解消して、日本全体の関心を高める必要がある。そこで、五輪開催の中心となる東京都において、都民やボランティアが、福島の現状や放射線の健康影響を学ぶ機会を設けてはどうか。その一環として、東京の生徒が福島の現状や放射線に関する疑問を福島の生徒に投げかけ、ともに学ぶ交流活動も有効と考えられる。

 国内で正確な理解が浸透すれば、県産品の販売不振解消や訪問者数の回復などに つながり、福島県民の実感を伴う復興の実現も加速するだろう。

図 東京オリンピック・パラリンピックを契機とした福島復興加速のサイクル

参照


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