冒頭に紹介したとおり、安倍首相のOECD会議における発言に端を発し、わが国は成長戦略の一つとして、ロボットによる産業革命を進めることが明示された。これまで大きな期待を受けながらも実用化がなかなか進んでこなかったサービスロボット、実際にはイノベーションの余地があるにも関わらず成熟産業とみられがちであった産業用ロボットの双方が、この5年間でどのようなイノベーションと産業創造を成し遂げられるか、勝負の時と言える。
ロボット技術の活用先は製造業、サービス、災害対応とさまざまであるが、どの分野にも共通することは、シーズ発想、モノ売り発想に陥らず、ユーザーの状況を理解し、費用対効果とリスク対効果の作り込みをオペレーション発想、ソリューション発想で進めることである。
このためには行政・業界として、ロボットの活用に意欲あるアーリーアダプターたるユーザーの声を聞き、支援すること、ユーザーとメーカーの間をつなぐ重要な役割を果たすSIerの支援と育成を進めることが重要であろう。
この際、ユーザーに求められるのは、自身の現状そのままにロボット技術を導入するのではなく、まずは自身の効率化余地や提供価値向上余地を洗い出し、ロボット等の技術導入とともに自身のビジネスやオペレーションを変革する姿勢であろう。また、メーカーに求められるのはシーズ指向に陥らないことはもちろん、逆にユーザーの現状にとらわれすぎず、ユーザーの変革を、ともに追求する姿勢であろう。
筆者は日頃の業務を通じて、ロボットによる生産性向上や顧客へのサービス品質向上に燃えるユーザー(それも国内だけでなく、東南アジアまで)や、先進的なアプリケーションを模索するSIerの、ロボット活用意識の高まりを感じている。今度こそロボット産業を花開かせるべく、ユーザーとSIer主導のイノベーションをシーズとニーズの双方のつなぎ役たる立場から応援していく所存である。
※1:「日本再興戦略」改訂2014 (平成26年6月24日、日本経済再生本部)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/honbun2JP.pdf
※2:ロボット産業政策研究会 報告書(2009年3月25日、ロボット産業政策研究会)
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/286890/www.meti.go.jp/press/20090325002/20090325002-3.pdf
※3:ロボット産業政策研究会 報告書(2009年3月25日、ロボット産業政策研究会)を参考に三菱総合研究所作成
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/286890/www.meti.go.jp/press/20090325002/20090325002-3.pdf
※4:ロボット産業の市場動向(平成25年7月、経済産業省)
※5:例えばデンソーウェーブ等が進めるORiNなど。
※6:東大発ベンチャーの株式会社MUJINなど。
※7:GEなどが提唱する、モノのインターネット(Internet of Things, IOT)を活用したインテリジェントな機器、インテリジェントなオペレーションの構想。
※8:ドイツ政府などが進める、Cyber Physical Systemを活用したものづくりのスマート化による新たな産業革命の構想。
※9:ロボット技術導入事例集(平成22年度、経済産業省)を参考に三菱総合研究所作成
※10:ロボットの将来市場予測を公表(2010年4月23日、NEDOニュースリリース)
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_0095A.html
※11:ロボット産業の市場動向(平成25年7月、経済産業省)
※12:ロボット技術の介護利用における重点分野(平成26年2月改訂、経済産業省・厚生労働省)を参考に三菱総合研究所作成
http://robotcare.jp/
※13:「次世代社会インフラ用ロボット開発・導入重点分野」を策定致しました(平成25年12月25日、国土交通省報道発表資料)
http://www.mlit.go.jp/report/press/sogo15_hh_000104.html