今回のテーマは、皆さんよくご存じの「社員研修」である。企業づとめであれば、自社が主催する研修に一度も参加したことのない方はおそらくいないだろう。ほとんどの企業において、新人研修、管理職研修などの階層別研修、営業研修、プログラミング研修などの職種別研修、あるいは、コミュニケーション研修、ロジカル研修といったスキル研修などなど、何らかのタイプの研修が行われている。
これらを企画・運営する人事部門の関心事の一つに研修効果の「見える化」がある。
よく言われている通り、研修効果の「見える化」はきわめて困難である。しかし、会社主導の研修の効果がさほど期待できないのは成人学習理論に基づけばごく当然のことである。本コラムでは、この理由を考察するとともに、効果の高い学習とは何かについて考えてみたい。
社員研修の効果に関して議論する前に、そもそもなぜ効果を明らかにすることが重要なのかについて考えてみたい。企業における研修は、社員の行動変容やスキルアップ、モチベーションの向上などを通じて、業績向上、組織文化の改善、組織改革、事業構造変革など、企業経営にプラスとなる組織目的の達成を図るための「手段」である。つまり、これらの組織的な目的を達成するために、企業は社員研修を行っている。
しかし、「企業経営にプラスとなる結果」というものは、往々にしてその結果が出るまでのタイムラグが長い。しかも、研修以外の要因によって左右されやすく、かつ、(大半の企業活動は組織で行うため)研修を受講した社員単独の評価が行いづらい。例えば、資格試験を目的とした学習のように、原因(試験勉強)と結果(合格)の因果関係が明確な場合は、効果測定は容易である。社員研修の効果測定が困難なのは、上記の通り、社員研修の実施目的が持つ特性に深く関わる。
それでも研修担当者としては、業務である以上PDCAは回さなければならない。そこで、例えば受講後に社員に対してアンケート調査を行い、「『満足度が高かった』との回答が8割で研修効果が認められた」などと社内に報告する。しかし、これでは不十分である。立教大学経営学部教授の中原淳氏は「(研修効果の把握を)研修中や研修終了後のアンケートだけで行うことはできない」と述べている。またその理由として、研修評価には「反応」「学習」「行動」「成果」の4つのレベルがあるが、満足度アンケートはこの中の「反応」のレベルしか見られないことを挙げている※1。
研修の効果は、学習し、行動に起こし、何らかの成果を出して初めて把握できる。
これらを企画・運営する人事部門の関心事の一つに研修効果の「見える化」がある。
よく言われている通り、研修効果の「見える化」はきわめて困難である。しかし、会社主導の研修の効果がさほど期待できないのは成人学習理論に基づけばごく当然のことである。本コラムでは、この理由を考察するとともに、効果の高い学習とは何かについて考えてみたい。
社員研修の効果に関して議論する前に、そもそもなぜ効果を明らかにすることが重要なのかについて考えてみたい。企業における研修は、社員の行動変容やスキルアップ、モチベーションの向上などを通じて、業績向上、組織文化の改善、組織改革、事業構造変革など、企業経営にプラスとなる組織目的の達成を図るための「手段」である。つまり、これらの組織的な目的を達成するために、企業は社員研修を行っている。
しかし、「企業経営にプラスとなる結果」というものは、往々にしてその結果が出るまでのタイムラグが長い。しかも、研修以外の要因によって左右されやすく、かつ、(大半の企業活動は組織で行うため)研修を受講した社員単独の評価が行いづらい。例えば、資格試験を目的とした学習のように、原因(試験勉強)と結果(合格)の因果関係が明確な場合は、効果測定は容易である。社員研修の効果測定が困難なのは、上記の通り、社員研修の実施目的が持つ特性に深く関わる。
それでも研修担当者としては、業務である以上PDCAは回さなければならない。そこで、例えば受講後に社員に対してアンケート調査を行い、「『満足度が高かった』との回答が8割で研修効果が認められた」などと社内に報告する。しかし、これでは不十分である。立教大学経営学部教授の中原淳氏は「(研修効果の把握を)研修中や研修終了後のアンケートだけで行うことはできない」と述べている。またその理由として、研修評価には「反応」「学習」「行動」「成果」の4つのレベルがあるが、満足度アンケートはこの中の「反応」のレベルしか見られないことを挙げている※1。
研修の効果は、学習し、行動に起こし、何らかの成果を出して初めて把握できる。