Step1は短期的な従来型の商品券事業である。発行額に応じて、域内での消費喚起、経済波及効果が得られるが、一過性の取り組みとして終了した場合、商品券発行分の経済波及効果が得られること以外、効果は限定的となる。
Step2は中長期的にデジタル商品券事業を継続し、過年度の課題の改善はしつつも、活用するアプリ・システムを大きく変えずにデータ蓄積や運用効率化などを図る、高度化された商品券事業である。経済波及効果だけにとどまらないさまざまなメリット、効果を得られることが想定される。一例を示す。
- 参加店舗拡大・継続参加:店舗が多いことは利用者にとっての直接的な利便性向上であり、サービスの向上につながる。
- 市民認知の向上:市民認知が高く、商品券がよく知られているということは、申込数を確保できることになり、結果的に販売枠の売れ残りリスクの低下にもつながる。
- 店舗・利用者の双方の「慣れ」:申し込み~販売~利用の各プロセスにおいて発生する手間や現場オペレーションの負荷減少といった効果も期待できる。
- 事業を通じて得られる多数データやノウハウ蓄積:蓄積されたデータを用いた実績報告だけでなく、データや利用者の声を基に事業や業務の設計・改善の検討が可能になる。この恩恵は大きく、事業としてのEBPM(Evidence Based Policy Making)の実践といえる。データを用いた効果検証分析は、マクロ、ミクロの観点から多面なことが可能である。分析メニューなどについては別コラムにて今後提示していく予定であり詳細はそちらをお待ちいただきたい。
このような観点から、Step2に記した「高度化された商品券事業」は、発行額が同じであった場合でもStep1よりもフロー効果を少ない予算と時間で得られる。加えてさまざまな価値(ストック効果)が生み出されることから、コスト・ベネフィットの点で相対的に優れることとなる。しかし、現行の商品券事業の多くは単年度契約となっており、継続的に改善を積み上げることが難しいという実態もあるだろう。複数年で事業者を選定できるような予算割り当てや事業の建て付けのもと、履行状況のモニタリングや経年で改善を課すなどの仕組みを設けることで、官民双方でリスクとリターンを分担できるようなスキームを検討することも必要ではないだろうか。
Step3では商品券事業をさらに発展させ、革新的技術を活用しつつ市民ニーズや地域の複数の課題解決に資するものが組成されることが望ましい。図1に例示したのは、ウェルビーイングの観点から、環境配慮への行動や健康増進、地域に貢献する活動を促進するポイントを付与したり、域内で通貨として流通・譲渡が可能(転々流通)な地域通貨として発展していく形態である。こうしたサービスがStep1と同2の商品券事業を通じて得られたストックをベースに組成できることは、多くの店舗で使えるという利便性を底上げし、認知度にも寄与する。さらには市民・店舗のデジタル化への慣れといった付帯価値をも生み、事業を成功させる上での重要なファクターともなろう。
商品券事業は将来の地域DXの実現につながるということを、事業に関わる関係者は実施目的の一つに位置付けてはどうだろうか。