現在、実用化されているロボットの大半は、機械やモノの動きを操作するエフェクターを備え、ある程度の自律性を持った知能機械です。
従来、産業分野でのロボット活用は、大規模な生産ラインでの比較的単純な作業の自動化に限られていましたが、近年では、AIの性能向上と低価格化に伴い、小規模・小ロットの製造プロセスや、機械化が困難とされてきたエッセンシャルワーク(医療・介護をはじめ人々の生活の維持に不可欠な業務)関連の作業への導入が始まりつつあります。
知能化したロボットは、部分的に人の移動・操作に関する機能を拡張しますが、この拡張は、量的なものと質的なものに分けられます。
人の機能の量的拡張には、(1)より高速に、(2)より大量に、(3)より安定して、(4)より連続的に業務を進めるという、機械として共通の特性があげられます。従来のロボットも(1)〜(4)の特性を備えているのは周知の通りですが、これらはセンサー、AI、エフェクターそれぞれ単独でも備えている特性です。
一方、質的な機能拡張は、センサー、AI、エフェクターそれぞれの固有なものになります。
- センサー:五感とは全く異なる物理的情報(例えば磁気や放射線など)を認識する検出器が使える点、広帯域(赤外線、紫外線、超音波など)である点、定量(数値データ)測定である点など。
- AI:人では処理できない複雑な処理ができる点、人にはイメージできない多次元の解析ができる点など。
- エフェクター:人にはできない精緻な位置調整ができる点、人を大きく凌駕する出力を発生できる点、人が対応できない極限環境で動作する点など。
これらの関係を図表2に示します。
このように、AI搭載などにより高度に知能化したロボット=AIロボティックスが人間の機能を質的・量的に拡張していくことで、柔軟な対応力が必要な医療・介護現場での支援作業や、危険な高所などでの複雑な作業の自動化など、従来では成し得なかった社会課題解決やイノベーション創出が可能になるものと期待できます。
図表2 知能機械がもたらす「量的・質的」機能拡張の全体像
三菱総合研究所作成