ロシア-ウクライナ紛争を契機とする小麦価格高騰から、食料安全保障への関心が高まっている。特に、食料自給率向上を訴える声も多い。しかしながら、食料安全保障上の本当の課題は、足元の短期的な問題にはない。本当の問題はもう少し先にある。2040年や2050年を見据えたときに、食料自給率は拡大どころか、維持すら難しくなる。
食料安全保障の観点において品目的に最重要視されるべき、主食穀物(米・小麦)について、国内需要と生産の将来シミュレーションを行ったところ、そのギャップが2040年に最大化し、現状の約500万トンが、700万トンまで拡大する結果となった。このギャップ分は原則、輸入に頼るしかない。輸入量が現状対比、1.4倍に拡大することになり、食料安全保障上のリスクが拡大することになる。
図 2050年までの主食穀物需要・国内生産・ギャップの成り行き推計(単位:万トン)
出所:各種統計から三菱総合研究所作成