価値創造への戦略

三菱総研グループの強みと機会をふまえた価値創造戦略をご紹介します。

当社グループを取り巻く環境

代表取締役社長 森崎 孝
いま世界の多くの国々では、所得格差や移民問題などを背景に、自国の利益を優先する考え方が広がり、内政・外交ともに不透明感が増しています。これまで多くの国によって支えられてきた国際的秩序が揺らぎつつあることは将来に向けての大きな不安材料といわざるを得ません。
一方で、世界的な温暖化対策や、国連のSDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)に多くの国や企業、非営利組織などが賛同し、グローバルに社会課題の解決を図ろうとしている動きは、未来社会への光明ということができます。
このように先を見通しにくい時代には、情報の洪水の中から正しい情報を抽出し、それらを構造化して、あるべき未来社会の姿を描くことが重要です。その上で、いかに実現するか、そこにいたる道筋をどのようにつけるかを、英知を尽くして考えなければなりません。
当社グループは、その中核をなすシンクタンクにおいて、先を見通す力を磨いてきました。政治・経済・社会・技術のマクロ環境やメガトレンドを俯瞰的に分析し、解決すべき社会問題を体系的に整理した上で、取り組むべき社会課題を選定し、ビジネスと政策・制度の両面による解決策の提案をしてきています。
昨今では、これらの未来構想に加えて、実現に向けた伴走、実装が強く求められるようになっています。先を見通しにくい時代だからこそ、未来への具体的な道筋を示して欲しい。そう考えるお客様が確実に増えています。
当社グループの事業においても、「構想」から「実現・実装」までの一連のソリューションが強く求められるようになっています。構想から実装まで、これが時代の要請であり、私たちはこれに「Think & Act」というキーワードで応じる決意を固めました。そして、これらを一貫して提供できる「総合力」が、当社グループの強みであり、社会貢献の源泉と考えています。
私の務めは、「総合力」を構成する各分野のレベルを向上させるとともに、単なる足し算ではなく、相乗効果を発揮しうる真の「総合力」に高めることにあります。「総合力」をフル活用し、「Think & Act」。ユニークな存在として、事業を通じた社会課題解決に取り組んでいきます。

当社グループの強みと機会

当社グループのミッションは、「あるべき未来社会の共創」です。1970年、創業当初に掲げた“Better Information - Brighter Future(優れた情報で輝く未来)”の理念を継承しつつ、今はそれを“未来共創”に昇華させ、社会課題の解決に精力的に取り組んでいます。
当社はシンクタンクとして約800人の専門家を擁し、自然科学系を中心に幅広い分野において高いレベルの知見を有しています。技術や解析に秀でた研究員が数多く存在することが当社の最大の特徴であり、強みとなっています。また、その中立的な立場から、産学官との太いネットワークを持ち、これらの間をつなぐハブとしての役割も果たしています。さまざまな分野の英知を結 集した「統合知」が求められる時代に、社会変革のプラットフォームとしての役割を果たしていきたいと考えています。
「Think & Act」 に不可欠なITサービスを担う三菱総研DCSは、多くの情報処理資格保有者を擁し、金融をはじめ豊富なICTソリューションを有していることが強みです。金融機関のシステムには、堅牢さが求められますが、それらに的確に応えうる技術力と経験を有しています。ここを起点として、先進的な情報システム技術、クラウドコンピューティングや人工知能を活用した ソリューションなども展開し、グループの総合力の重要な一翼を担っています。

これに加え、「Think & Act」による社会課題解決に欠かせないもうひとつの重要な手法が「オープンイノベーション」です。当社グループが保有する経営資源にとどまらず、国内外のさまざまな産学官とのネットワークを駆使することにより、多様で斬新な解決策を導き出すことが可能になります。そのために、2年前に「未来共創イノベーションネットワーク」を発足しました。社外との連携を通じ、当社のビジネスにとどまらず、広くソーシャルイノベーション、ビジネスによる社会課題の解決を目指して活動を展開しています。
当社グループのビジネスチャンスは、時代の変化の中にあります。変化の激しい時代にこそ、私たちには時代の羅針盤としての役割が求められ、力を発揮する機会がますます増えると確信しています。グループ事業の持続的成長と未来社会共創への貢献を両立させることで、企業価値の向上に努めてまいります。

「中期経営計画2020」

当社グループは、現在「中期経営計画2020」に掲げた各戦略を推進しています。この「中期経営計画」の策定経緯と骨格をご説明します。
私たちは、半世紀にわたり築き上げてきた「信頼」という無形資産を基盤として、品質に磨きをかけながら、事業を着実に拡大してきました。一方で、時代が大きく変化するなか、構想や政策提言に強いという特徴・利点を十分事業に活かし切れているか、社会への貢献が十分であるかという観点で、自ら事業の進め方に対する問題意識を強めてきました。
そこで、「総合力」をこれまで以上に発揮できる事業領域として、官の政策と民間ビジネスの双方をつなぐ、あるいはこれらにまたがる領域に狙いを定めて事業を展開する「官民共創ソリューション事業」を立ち上げました。
民営化を始めとする官から民への動き、あるいは変革をより大きな流れにするための民から官への動き、さらには官と民が協働した新しい技術やビジネスの開発に向け、当社グループが中心的な役割を果たせるテーマは数多くあります。
そのために必要な施策を、「中期経営計画2020」では“3大改革”という形でまとめています。3大改革とは、すなわち「事業ポートフォリオ改革」、「ビジネスモデル改革」、そして「働き方改革」です。
3つの改革は、もちろん一つひとつが重要なものですが、これらを三位一体として推進することにより、より高いレベルでの「Think & Act」を実現できると確信しています。
足元では、3大改革は順調なスタートを切ることができましたが、気を緩めることなく、改革を一層加速して進めていきます。
「中期経営計画2020」の最終年である2020年9月期は、売上高1,000億円、経常利益80億円、ROE10%という目標を掲げています。「Think & Act」が世の中に広く受け入れられ、着実に社会変革が進むことを目指して、役職員一同、切磋琢磨してまいります。
図 中期経営計画2020の進捗

事業ポートフォリオ改革

事業ポートフォリオ改革の最大の狙いは、事業を成長事業と基盤事業に大別した上で、選択と集中による事業の再編と強化を行うことです。そのために、事業ラインごとに戦略を見直し、メリハリの利いたリソース配分を行いました。
当社グループは、官公庁事業と金融事業に強いとの定評がありますが、これらの事業を基盤としつつ、新しい事業分野の開拓を企図して、「官民共創」「民間」「海外」という3事業領域に狙いを定めました。
「民間」「海外」には、これまでも力を入れて取り組んできましたが、具体的な成長戦略を描き切れず、リソースの配分も十分ではありませんでした。その反省のもとに、「中期経営計画2020」では、成長事業としての位置づけを明確にするとともに、具体的な計画に落とし込み、着実な前進に取り組んでいます。「官民共創」の一例として、エネルギー政策の専門家と鉄道・運輸 業界の専門家が協力して、鉄道事業者に、自社の設備やノウハウを活かしたエネルギービジネスのコンサルティングを提供しています。一連の電力自由化政策の中で、2020年4月から電力会社の発電・小売部門と送配電部門を分離することが義務づけられることから、大手電力会社のみならず、幅広いお客様からの引き合いが増えています。当社グループならではの取り組みとして、大きく育てていく所存です。

ビジネスモデル改革

2つ目は、ビジネスモデル改革です。狙いは、従来の自前主義から脱却し、広く社外のパートナーと連携・協働するなど、事業の3S(スコープ、スケール、スピード)の向上です。パートナー連携は、既存事業の拡大はもちろん、イノベーションによる新たな事業やサービスを生み出すことも狙いとしています。
イノベーションには、大企業のみならず、ベンチャー企業がもつ技術力・ノウハウも重要なため、アンテナを高くして、幅広に協業を進めていく計画です。
先進的な技術を活用した協業の事例をいくつか紹介します。株式会社マイナビと共同開発した「PRaiO(エントリーシート優先度診断サービス)」は、AIで企業の採用活動を支援するサービスで、すでに50社以上に正式導入、累計230社以上に試験導入されています。
また、近鉄グループホールディングス株式会社、ブロックチェーン技術に強い株式会社chaintopeと共同で開発しているデジタル地域通貨プラットフォームは、実証実験を重ねつつ、2019年度の本格運用を目指して準備を進めています

働き方改革

3つ目は、働き方改革です。この改革は、人財育成・活躍とワークスタイルの2つの視点で進めています。
人財育成・活躍では、一人ひとりが能力を最大限発揮し、活躍することが当社グループの価値創出の源泉となるため、最重要の経営課題と認識して取り組んでいます。また、ダイバーシティの視点も欠くことができません。女性や外国人の増員はいうまでもないことですが、一芸に秀でた人財の活用も重要なテーマです。
このうち、女性の活躍については、これまで計画的に進めてきた中堅層の底上げが着実に進展しており、非常に頼もしく思っています。役員への登用も、近い将来には、実現できると考えています。
ワークスタイルに関しては、生産性が高く、効率的な働き方を目指して、IT装備の充実やテレワークの導入などを進めています。働き方改革によって生まれた時間は、人財育成、研究開発、家族との時間などに充てられるよう、一層、ワーク・ライフ・バランスのとれた働き方を実現します。働き方改革は、組織風土を変えていく上でも重要であり、今後も積極的に取り組んでいきます。

リスク管理とガバナンス

中期経営計画並びに3大改革について説明してきましたが、企業の持続的成長のためには、攻め(事業面)と守り(経営管理面)の両面に対する目配りが不可欠です。
品質と納期は、当社グループの信頼の源であり、グループに共通した経営の最重要テーマといえます。特にシステム開発における品質管理は、問題が発生した場合の経営・事業に及ぼす影響が格段に大きいため、案件ごとの工程管理をしっかり行う必要があります。もちろん、どれだけルールがしっかりしていても、それを実践するのは人間であり、そのためには不断の社員教育が重要なことはいうまでもありません。
また、社員のコンプライアンス教育も重要なテーマです。当社グループは、その業務の特性上、知的財産権や情報セキュリティに十分留意し、業務特性に合わせたコンプライアンス施策をしっかり行う必要があります。当社グループに求められるコンプライアンスの水準は日に日に高まっていますので、これからも継続的なレベルアップを図っていきます。
さらに、ガバナンスも経営の最重要テーマのひとつであり、コーポレートガバナンス・コード(CGC)に基づく多面的な向上が求められています。当社は、「ガバナンス諮問委員会」を設置して取締役会の実効性評価を行い、コーポレートガバナンス報告書の中で公表しています。当社はCGCの全項目を遵守(フルコンプライ)していますが、外部環境の変化に応じて随時見直しを図ることで、今後も継続的な改善に努めてまいります。

今後に向けて

当社は三菱総研DCSとともに、2020年に創業50周年を迎えます。これまでの50年、そしてこれからの50年も変わらずに当社グループのミッションを果たしていくためには、たゆまぬ「人と組織の持続的成長」が必要であると考えています。
人が組織を作り、組織が人を育てる。当社グループの最も重要な経営資源は人そのものですので、人と組織が相互に高めあう好循環の仕組みを作っていきます。また、当社グループは事業活動そのものが社会貢献であり、そうした活動を通じて豊かな未来を共創していくことが使命であると考えます。シンクタンクの社会的使命としての「未来共創」と事業の持続的成長を両立し、 社会・地域・企業の持続的な発展と豊かな未来の創造に向けて、果敢に挑戦を続けていきます。
これからの三菱総研グループに、どうぞご期待ください。