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2020 MYPAGE
CROSS TALK 01

理事長×研究員座談会

知と社会課題を結んで、
新しいビジネスを創ろう

日本の「課題解決先進国」を提唱し、国際賞も受賞している小宮山理事長と、二人の研究員が、
日本の社会と三菱総研の現状、課題、未来について意見を交わしました。

ビギナーズラックで科学が面白くなり、研究者に

小宮山お二人は2008年と2010年の入社ですね。私は2009年に東京大学の総長を退任して、三菱総研の理事長になりましたから、三菱総研での社歴は同じくらいということですね。

梅原小宮山さんは現在高齢化社会やエネルギー問題など幅広いテーマで活動をされていますが、化学工学がご専門だそうですね。化学を志された動機は何だったですか?

小宮山高校生だった1960年代、日本は工業立国でした。それで、あまり深く考えることなく、「工学部に入って大企業に勤めよう」と思っていたんです。化学工学を専攻したのは、化学会社に勤めていた叔父から「これからは化学工学が有望だ」と聞かされたためです。石油化学工業が盛んな時代でしたからね。

梅原大学で研究を続けられたのは、何かきっかけがあったのですか?

小宮山学部の勉強を面白いとは思わなかったのですが、卒業論文に取り掛かると、先生に言われたことを実験しただけなのに、興味深い結果が出て、科学の面白さを知ってしまったんです。ビギナーズラックとでもいうのかな。それで大学院に進み、研究しているうちに面白さが増し、研究者になりました。

東穗研究生活は順調でしたか?

小宮山いいえ。20代後半、助手ポストがなくて民間企業を考えていたとき、米国留学を勧められ、カリフォルニア大学デービス校に留学しました。1年ほど経った頃「学生実験の指導をしてほしい」と東大が言ってきた。カリフォルニア大学からもオファーを貰ったんですが、思案した結果、帰国しました。それが大きな岐路だった気がします。当時はそれが普通だったから。カリフォルニアに残っていたら今とは別の人生だったでしょうね。

東穗当時の東京大学とカリフォルニア大学では、大きな文化の違いを感じたのではないですか?

小宮山そうですね。組織が細分化し、孤立することを「サイロエフェクト」といいますが、その最たるものが日本の大学です。学問が高度になり、専門化して、隣の研究室の人とも話をしない。過去のノーベル賞を見れば、化学賞を取ったアンモニア合成の研究成果で化学肥料産業が栄え、農業の生産性が飛躍的に向上した。医学生理学賞のペニシリンの発見で、多くの人の命が救われるとともに製薬会社は莫大な利益を得た。つまり科学と、社会の価値や企業の利益が直結していたんです。しかし、近年は研究が細分化しすぎて、成果が何に使えるのかわからない。私は科学や学問と社会の間の距離が開いていくことを危惧していました。それで総長になると、「知の構造化」と呼ぶ改革に取り組んだのです。

自主研究、テレワーク、新しい制度は大いに活用しよう

東穗小宮山さんは、2009年に大学から当社に移って、どのような印象を持たれましたか?

小宮山私は学問や知識を社会や企業と結び付けたくて、大学から企業に移ったのですが、当社のような約7割もの社員が科学技術系のシンクタンクは、海外でも特殊であり、価値があると思いました。あと驚いたのは、基本的には企業の人はお金を払わないと仕事をしないことですね(笑)。大学の人は気が向けばお金にならなくても頼んだ仕事をします。その代わり、期日までに報告してくれるとは限らない。一方、企業の人は引き受けた仕事は必ずやり遂げる。その点が、三菱総研に来て一番感心したことです。

梅原私たちにとっては当たり前のことですが、大学と民間企業では随分とギャップがあるものですね。私が入社した当初は、三菱総研でも研究員は自主的な研究を今より勝手にやっていた印象があります。最近では「萌芽研究勉強会」や「知的倶楽部」として制度化され、申請して研究を行うようになりました。予算や時間を付けてもらえるのはありがたいのですが、ガバナンスが強化されて面白味が減ったようにも感じてしまいます。

小宮山以前、大学の教授は実に自由に研究をしていました。しかし、私は「自由にやるだけではダメだ」と考えました。みんなが無秩序に動くと、ブラウン運動みたいなもので、全体としては動いていないのと同じです。同じ考えの人々は協力し、違う意見の人たちは議論すべきだと思った。それで、自律して行動しながら調和を図る「自律分散協調系」のための知の構造化を提唱したのです。

梅原たしかに、制度の下に位置づけられることで自主研究の取り組みが全社的に共有され、多様な視点を呼び込むきっかけになっている面もありますね。

小宮山制度の面を言えば、最近は「テレワーク」も本格導入されましたが、利用していますか?

梅原私の周りではまだまだですが、他のグループでは結構使っていると聞きます。

小宮山グループで差があるということは移行期ですね。新しい便利な制度を広めるためにも、君たち若い社員が積極的に動いていかないと。
日本の欠点は、自律して行動する人が少ないことです。ウェブサイトの動画サービス、宿泊サービス、配車サービス、みんな米国から出てきた。それは、なぜか? 米国には「やっていいですか」なんて聞かず、やってしまう人がいるからですよ。君たちが、この会社の新しい文化をつくるんだから、周りを気にせず自律的に行動してほしい。

東穗私は産休を取った後、夫の仕事の関係で英国に行っていました。3年後、仕事に復帰したら、ずいぶん自由度の高い会社になった印象を持ちました。女性の働き方という面でも、そうです。今、小学校入学前の子がいるので、テレワークはよく利用しています。

小宮山私は東大総長のとき、学内保育所をキャンパスごとに5カ所作りました。海外では事業所やキャンパスに保育施設があるのは常識です。日本も働きながら子育てをする社会になったのに保育施設が足りない。思うに「実態が変わっても制度を変えようとしない」ことに問題がある。皆さんが作る報告書もそう。労働力調査の就業年齢は相変わらず15歳から64歳です。現代の日本に15歳で働く人が、どれだけいますか? 上限の64歳もおかしい。昔と違って60代の多くの人は元気です。実態は変わっているのに、昔のまま統計を取っている。労働力人口は20歳から74歳という社会をつくれば、少なくとも数字上は労働力人口が減っているという話にはならない。実態に併せて既成概念も見直していかなくてはいけない。

「課題解決先進国」日本ならではのアイデアを

小宮山お二人は、この会社をどのようにしたいと考えていますか?

梅原検討すべきと思う課題を設定して社内外から関心のある人を集め、みんなで解決に向けて取り組むような、結節点の役割、でしょうか。まさにそれが実現できる状況へと変化してきた印象です。

小宮山私もアドバイザーを務めていますが、三菱総研は2016年から「ビジネスアイデアコンテスト」を始めました。アイデアを広く募集し、三菱総研がアクセラレーターになりベンチャー企業のメンタリングや大企業とのマッチングを行って、社会課題を解決する新しいビジネスやベンチャー企業を創ろうという企画で、とても興味深い。
私は大学にいたから研究者が社会課題解決の種を持っていることは知っていました。しかし、その種はビジネスに発展しなければ、社会で持続しない。だから、有望な種を見つけて、ビジネスへの橋渡しがしたい。米国のシリコンバレーで生まれる種はものすごい数で、世界の大半を占めている。でも、シリコンバレーの研究者は、高齢化問題などは考えていないと思う。それは、日本の研究者の方が感じている。私たちは日本が持つ課題に取り組み、答えを出す。それが種に、そして新しいビジネスモデルに、きっとなる。

梅原社会課題を起点に新しいビジネスをつくる、という視点ですね。

小宮山私は以前から「日本は課題解決先進国になろう」と言ってきた。最近、その主張がようやく認められるようになった。世の中が私に追いついたんだね(笑)。

東穗知と社会をつないでビジネスにするという発想は面白いです。当社は社会課題に敏感な会社なので、たとえばこれまで超高齢社会に向けてヘルスケア・ウェルネス事業本部を設立しました。もちろんこれからも時代を先取りして、社会課題に対応できる組織体制を会社として作るため、新しい事業部を課題先取りで作っていくでしょう。イノベーションはいろいろなところ所で起きているので、当社がビジネスの種を見つける可能性は十分あると思います。しかし、種を育ててビジネスや市場にするには、ムーブメントが必要だとも思う。三菱総研の社員は真面目すぎるのか、そういうことが少し苦手のような気がします。

小宮山日本人は真面目で、間違ってはいけないという意識が強い。特に良い大学を出た人は、そう(笑)。「議論しよう」と言っても誰も発言しないことがある。「歴史に残るような言葉を期待しているわけじゃないんだから」と私が言っても、みんな立派なことでなければ言ってはいけないと思っている。これは国民性だね。だから必要なのは、異なった価値観を持つ人をもっと混ぜること。ダイバーシティから新しいことが生まれる。日本の大学はそれが足りない。三菱総研はましだけど、まだ足りない。

本質をとらえる知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気

小宮山お二人は、どんな後輩と一緒に仕事がしたいと思っていますか?

梅原自分の成長だけでなく、社会貢献を目指して仕事をする人がいいですね。学生時代、先生が「Make the world a better place」と言って仕事への価値観を諭してくれましたが、これは三菱三綱領の一つ「所期奉公」という言葉に通じるものだと思います。期する所は社会への貢献という意味ですが、本当に価値のある仕事はそういう精神から生まれてくるものだと思っています。

小宮山昨今、環境、社会、ガバナンスの英語の頭文字を取ってESGと略し、「企業の成長にはESGが必要だ」と言ったりするけれど、日本の商人は昔から、売り手、買い手、世間の「三方良し」と言って、社会を大切にしてきた。近年、日本経済の持っている良い面と、世界で求められている構造が調和してきたように思う。

東穗私は同じ目標を持っている人と仕事がしたいです。さらには、「これだけは誰にも負けない」という専門を持っている人、知らない所に自ら飛び込み、机上の案だけでなくその社会実装まで、自分で道筋を見つけていこうという行動力のある人がいいですね。

小宮山専門に自信が持てないのは、日本人の欠点でしょうね。よく言われることだが、「あなたはどのような人ですか?」と聞くと、欧米の人はたとえば、「会計が得意」と答え、日本人は「○○社の社員です」と答える。日本人のビジネスマンも誇れる専門性を持つべきですね。

東穗他人任せにしない、自分で問題を見つけることができる、というのも大切だと思います。その問題に対して自分なりの答えを出すことができる人だと、なお良いです。それをみんなで共有して、議論して、さらに良い方向がないか考えていけたらいいですね。

小宮山課題を自分で見つけるのは重要なことだね。私が思うに最も本質的な問いは「私たちは何がほしいのか?」ということ。そこから多くの課題が見えてくる。課題を定め、さまざまな専門を持つ人を集め、解決策を社会に提案していくことが、今、必要とされている。

梅原小宮山さんは、どのような人と、次の時代を築いていきたいですか?

小宮山私は総長の頃から、三つの言葉を若者に言い続けている。それは「本質をとらえる知」「他者を感じる力」「先頭に立つ勇気」。この三つを持った人になろうと。それを自分にも言い聞かせている。私自身もそうありたい。「あいつはいろいろと偉そうなことを言いながら、結局、自分は逃げた」なんて言われたくない(笑)。だから、三菱総研に来たんだ。

小宮山理事長に、今回の座談会の感想を尋ねたところ、「二人の話を聞いて、とても心強く思いました。自分の考えをしっかり持っている。頼もしいですよ」と笑顔で答えが返ってきました。理事長は「世界が今抱えている問題の解決には、公害、低成長経済、高齢社会、少子化などに、いち早く直面した課題解決先進国日本の経験が、必ず役に立つ」と明言しました。そして、そのために必要なのは「人々の知をビジネスに結び付けて、社会で長続きさせること」だとも。三菱総研は、それができる組織です。私たちと一緒に、未来を共に創っていきませんか。(人事部 採用担当)