MRIRECRUITING SITE

2020 MYPAGE
PROJECT STORY 01 ドローン×新産業

無人航空機の無線通信技術標準化から
ドローンの利活用事業に発展

無人航空機システムの利用技術に関する関係機関連絡会の支援業務プロジェクト

INTRODUCTION

無人航空機用無線周波数の国際標準化に向けて

無人航空機とは、主に遠隔操作や自動操縦によって機体を制御する航空機のことを指す。無人航空機といえば、「ドローン」と称され空撮などで用いられる小型の機種を思い浮かべることが多いだろうが、手のひらサイズの小型のものから旅客機に匹敵する大型のものまでさまざまな大きさがあり、用途も貨物輸送や測量、軍事偵察、旅客輸送など幅広く研究されている。

こうした無人航空機は、機体に搭乗するパイロットがいないため、機体を制御するために無線通信が必須となる。無人航空機の利用拡大のためには、これまで以上に高高度・遠距離まで制御可能な通信技術が必要だが、その際に無線周波数の割り当てが問題となる。有限の資源である周波数を有効に利用するため、無人航空機の種類や飛行性能、利用方法などに応じた割り当ての検討と、通信技術の標準化が必要とされている。具体的には、国際間を飛行するような大型の無人航空機と小型の無人航空機(いわゆるドローン)、あるいは産業用とホビー用の無人航空機の周波数の棲み分けをはかるため、現在2020年代の標準化へ向けて国際間で検討が進んでいる。

三菱総研では以前から国内の研究機関と協力し、有人航空機の無線通信技術の標準化に関わる調査・検討を重ねてきた。今回のドローンに関わるプロジェクトは2014年より始動。今でこそ各所でドローンの活用が進んでいるが当時は導入事例に乏しく、研究者や企業による連絡会を立ち上げるところから出発した。

MEMBER

大木 孝- Takashi Ohki -

2004年入社/科学・安全事業本部 フロンティア戦略グループ/理工学研究科 環境資源及材料理工学専攻 修了
航空機の通信システムに長年関わり、本プロジェクトのリーダーを務めた。現在は、無人航空機に関する国の制度の検討や企業による研究開発・事業化の支援、新たな活用方策の検討に取り組み、三菱総研のドローン事業を牽引する。

鞆田 健- Takeshi Tomoda -

2013年入社/科学・安全事業本部 フロンティア戦略グループ/工学系研究科 航空宇宙工学専攻 修了
プロジェクトメンバー。本プロジェクトの前は、主に衛星通信に携わっていた。現在は、大木とともに無人航空機の仕事をメインに手がけ、物流、災害対策、農業などの分野でドローンの活用拡大に向けた制度整備支援に取り組む。

PROCESS

既存ユーザーがいない、前例のないプロジェクト

2014年に始まった本プロジェクトの名称は「無人航空機システムの利用技術に関する関係機関連絡会の支援業務作業」という。総務省の研究機関である情報通信研究機構(NICT)の要請を受けて、無人航空機が使用する無線周波数の国際標準化に日本も協調すべく、その支援のための調査や検討を目的としていた。

「2012年頃、航空機の通信システムを標準化する国際会合の場で、無人航空機の議論が活発化しました。当時、日本では無人航空機の利用はほぼ農薬散布向けに限定されていましたが、欧米では物流など新たな利用の検討が始まっており、無人航空機向けの無線周波数の国際標準化が求められていたのです。そのため、日本でも無人航空機が使う周波数の国際標準システムに協調し、日本の技術の積極的な提案に向けた検討が始まり、国の機関から三菱総研が協力を求められたのです」

「無人航空機といっても国際会議で問題になっていたのは、今、私たちがイメージするような小型のドローンではなく、大型のものです。国から国に飛ぶ機体には、安全のために、国際的に割り当てた周波数が、どうしても必要になっていたのです」

大木と鞆田は、無人航空機用の無線周波数の標準化について意見を取りまとめるにあたり、まずは、国内外の無人航空機の使用状況を調べ、ユーザーや関係者の意見を聞き、国内のニーズを把握しようとした。

しかし、ここに大きな問題が生じた。2014年当時、日本では無人航空機は、まだ珍しい存在だったのだ。民間企業で大型のドローンを事業に使っている事例はなく、小型のドローンは個人の愛好家の間で広がり始めただけで、企業や行政が業務に利用する物とは認識されていなかった。

「今なら大手の運送会社や通販会社に話を聞きに行けば、産業界がドローンをどのように活用しようと考えているか、教えてもらえると思いますが、私たちがこのプロジェクトに取りかかったとき、ドローンのユーザーはもちろん、将来、業務に活用できると思っている人たちはいませんでした。実際、プロジェクトメンバーの中にもドローンを見たことや操作したことがある者はいなかったのです。まだ誰も使っていない物に、将来どのようなニーズがあるのか想像しなければならないところが、このプロジェクトの一番の難しさでしたね」

「そこで私たちは、海外ではどのような仕様の無人航空機が存在し、どのように活用されているのか、基本的な調査に取り掛かるとともに、大学や研究機関で無人航空機を活用した物流の未来を考える研究者、広大な耕地を所有している北海道の農業技術の研究機関、高速道路のような広域インフラの保守点検を行っている企業などに、ドローンの活用に興味があるか意見を聞きに行きました。さらに、小型のドローンを自分たちで飛ばしてみることも行いました」

2014年の暮れから年度末にかけて、大木たちは、無人航空機全般について国際機関の動向、機体の開発動向、利用の動向などの調査をまとめ、プロジェクトの検討会で報告した。その成果が認められ、本プロジェクトは2015年も継続して行われることになった。

2015年4月、総理大臣官邸の屋上で小型ドローンが発見された事案が起きると、ドローンをめぐる状況は一変した。ドローンに全国民の注目が集まり、法制度の整備などの取り組みが加速した。

RESULT

無人航空機のニーズを整理し、ビジョンを提示する

大木、鞆田たちは、2015年からは、無人航空機の無線通信技術の標準化の国際会合にも積極的に参加するようになった。航空機が使用する無線周波数の国際標準が決まるまでには、国際電気通信連合の無線通信部門(ITU-R)、アジア・太平洋電気通信共同体の無線通信グループ(AWG)、国際民間航空機関(ICAO)など、いくつもの団体の議論が必要だ。本プロジェクトのメンバーは、スイスのジュネーブやカナダのモントリオールで開催される会合に出席して、国際標準化に協力する日本の立場を、これまで表明してきた。

大型の無人航空機の無線通信技術について、国際標準の議論は、これから本格的に始まる。2019年のITU-Rの会合を経て、2020年代にはある程度の決着を見ることだろう。小型の無人機の無線の標準化はおそらく、それ以降になる。

2017年9月にフランス・パリで開催されたICAO会合の模様

無人航空機に限ったことではなく、どの分野でも先端技術の置かれた環境は、目まぐるしく変化していく。シンクタンクとして顧客から三菱総研に課せられる第一の課題は、技術のニーズを把握することなのだが、その先には、技術の将来、すなわち「ビジョン」を示すことが求められている。

「無人航空機、特にドローンへのニーズは明らかに高まっています。たくさんの事業者が、ドローンで何ができるのかを考え、さまざまなアイデアを世の中に提案する中、『無人航空機の進化や利用は、今後、きっとこう展開する。だからビジョンは、こうあるべきだ。そのためのロードマップは、これである』と、長期的な視点で道筋を明らかにして、国や研究機関にインプットすることが、シンクタンクの使命なのです。そのためには、時代の変化や社会のニーズに敏感でいなければならないと思っています」

「最近は、三菱総研の社内でドローンに携わる人が増えています。私たちは、物流や航空管制を専門にする部署など、さまざまな研究員と協力してドローンの知見を集め、利活用を検討するようになりました。これから、このような活動が、さらに盛んになっていくことでしょう」

FUTURE

ドローンが切り拓く、新しい産業を育成

2016年夏、社内の研究プロジェクトとして、東京大学と共同で長野県塩尻市のワイン用の品種を生産しているブドウ園で、高解像度4Kカメラと高性能ハイパースペクトルセンサを搭載したドローンを飛ばした。上空からブドウの生育状況をセンシングする実験は、テレビや新聞など多くのメディアに取り上げられ、予想以上の注目を集めた。

2016年8月に行われた実証実験の模様

「私は、ドローンの知見を集めて取りまとめ、国際標準化や国の政策の立案に役立てることにとどまらず、ユーザー支援の強化や自社運用の可能性を探り、ドローンを利用する産業やビジネスの育成につなげたいと思っています」

「ドローンに関するコンサルティングでは、我々が日本のフロントランナーだという自負があります。これからも新たな可能性を掘り起こしていきたいです」

無人航空機用無線周波数の国際標準化の支援から始まった彼らのチャレンジは、「ユーザーがいない」「知見が得られない」「将来のビジョンが見えない」といった無い無い尽くしの状況に悩みながらも前進してきた結果、新たな用途の開拓や三菱総研の新事業へと拡大しようとしている。本プロジェクトメンバーのドローンへの挑戦は、まだまだ続く。