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PROJECT STORY 02 コンテンツ×海外展開

日本文化の海外発信によって
国内経済の活性化を支援

放送コンテンツの海外展開および国内基盤整備プロジェクト

INTRODUCTION

日本の文化を世界へ発信せよ

放送コンテンツを通じて文化や技術などの日本の魅力を世界へ発信し、インバウンド・アウトバウンド促進を支援する――2013年に安倍晋三首相が打ち出した『クールジャパン』戦略では、放送コンテンツの海外展開が重要施策の一つとして挙げられた。

元々クールジャパンとは、アニメやゲーム、ファッションといった日本育ちのポップカルチャーが海外で人気を博している現象を指すが、クールジャパン戦略では、より広い産業への波及効果を生み出すために、伝統文化や食、生活空間、観光、ご当地名産など、幅広い分野を対象としている。クールジャパン戦略が打ち出される前年、2012年度時点における海外輸出番組のジャンル別内訳は、アニメが41.7%(総務省情報通信政策研究所調べ)を占めていた。また、地上テレビ番組の国内市場規模2兆7589億円に対し、海外輸出額は104.3億円にとどまっており、海外展開の推進が求められていた。

MEMBER

伊藤 陽介- Yosuke Ito -

2006年入社/コンサルティング部門 デジタル・イノベーション本部 ICT・メディア戦略グループ/理工学研究科 開放環境科学専攻 修了
本事業、および関連事業においてプロジェクトマネージャーを務める。市場分析や、業界団体や放送局など国内関係者の利害調整をはじめ、事業管理・運営の推進に携わる。

髙野 侑子- Yuko Takano -

2010年入社/コンサルティング部門 デジタル・イノベーション本部 ICT・メディア戦略グループ/政治学研究科 政治学専攻 修了
本モデル事業においては、国内関係者との交渉や事業運営サポートを担う。また、ASEANなど重点地域の文献や現地関係者を通じた情報収集・整理に携わる。

牧山 宅矢- Takuya Makiyama -

2015年入社/コンサルティング部門 デジタル・イノベーション本部 ICT・メディア戦略グループ/理工学研究科 開放環境科学専攻 修了
国内外の放送事業者のネット配信サービス動向や放送コンテンツに関わる法制度の調査などに携わる。

PROCESS

戦略的な海外展開で波及効果の最大化を目指す

2013年以前から日本で制作されたテレビ番組が海外へ輸出される事例はいくつもあった。世界60以上の国と地域で放送された『おしん』のように、アニメ以外にも世界で反響を集めた番組は多く存在する。しかし、海外へ番組を販売する(番販)事業は、基本的には各放送局や関連事業者が独自に行っており、局を越えた連携などは必ずしも多くはなかった。そのため、番組内容や輸出する国・地域、時期などはバラバラで、いわば“点”での影響力となっていた。

「日本の魅力を効果的に世界へ発信するには、戦略的に重点地域を設定し、ある期間集中してコンテンツを流すといった“面”による展開が必要です。そこで、国が主導し、ステークホルダーが連携しながら放送コンテンツを海外へ発信しやすい環境を整備。さらに、現地における認知度向上をインバウンドやアウトバウンドへつなげるため、放送内容に連動したツアー企画やイベント開催、関連商品の販売など、周辺分野・産業、地方公共団体を巻き込んだ事業も展開していく。こういったさまざまな事業を一体的に展開することで、クールジャパン戦略やビジットジャパン戦略、ひいては地方創生を推進するというのが、現在、国が取り組んでいる方向性です」

三菱総研は、総務省からの委託事業などを通じて、関係団体、放送局、商社などといった民間のステークホルダーの取り組みをサポートし、連携プロジェクトの円滑な運営、効果検証、成果の取りまとめなどを行っている。

放送枠選定から番組制作まで、戦略的に“日本”を発信

重点地域には、日本への関心度や訪日意欲が高く、今後の経済成長も見込めるASEAN6カ国(フィリピン、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナム、ミャンマー)が指定されている。モデル事業の開始時から、各国の主要放送局について視聴者層や視聴率、視聴習慣のほか、家計に関する調査を継続的に実施している。

「日本へ旅行したり日本製品を購入したりするには、それなりに裕福でなければならないため、視聴者の経済状況も重要なファクターの一つなのです」

事業ごとの目的に沿って効果的な視聴者層を確保するために、事業推進の際には戦略的な枠の確保や体制構築に考慮しているのだという。

確保した放送枠では、日本の番組のローカライズ(※)版だけでなく、現地放送局や制作プロダクションとの共同制作番組も放送した。国際共同制作は、放送対象国のトレンドやニーズ、文化・慣習を踏まえることで、より訴求度の高い番組作りができるというメリットがあるからだ。
※ローカライズ:ある特定の国を対象に作られた製品やサービスを他の国や地域で販売する際、その国の言語・法令・慣習に合うように製品を修正・改訂すること

法制度と商習慣の理解が放送コンテンツ流通促進の鍵

一方、放送コンテンツの海外展開を促進する上で避けて通れないのが、法制度と商習慣上の問題だ。

「放送コンテンツには、放送局や原作者、脚本家、番組に使われる音楽の作詞家・作曲家、実演家などのさまざまな関係者が存在します。加えて、インターネットの登場以降、見逃し配信やビデオ・オン・デマンドなど新しいサービス形態が出現し、法制度と商習慣上の整理が複雑化しています。このため、放送コンテンツの流通活性化を実現するには、各国の法制度と商習慣を正しく理解することが鍵となります。また、日本国内での取り組みとして、新たな放送サービスの実現可能性についても、国内放送基盤の制度的・技術的検討も進めていかなければなりません。そのための情報収集も行っています」

RESULT

経済波及効果の拡大を確認

2017年4月に実施された知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会コンテンツ分野会合において総務省が発表した資料によると、放送コンテンツ関連海外市場売上高は、2010年度の66.3億円から2014年度には143.6億円へと伸びている。また、2014年度補正予算における放送コンテンツ海外展開事業の経済波及効果は、インバウンド59.9億円、アウトバウンド25.8億円、合計85.7億円に達し、事業費のおよそ10倍という成果を上げている。

「放送コンテンツを一つの起点として、着実に日本のファンが増えてきている傾向について、関係者と共有しています。海外展開プロジェクトは現在、放送コンテンツ単体の海外展開から放送コンテンツと連動した商品・サービスを戦略的に展開する取り組みが効果を発揮しつつあります。このような取り組みを継続することにより、さらなるインバウンド・アウトバウンドの進展が期待されています。その一端を担うべく、今後も尽力していきます」

国内事業では、制度面や技術面の放送基盤が整い、放送コンテンツの流通が促進されることで、新たな付加価値の創出が期待できるという。

「新たな付加価値を生み出していくことは一筋縄ではいきません。それはどのような分野にも通じることですが、放送コンテンツに関わる事業にもいえることです。これまでの事業を通じて培った知見を活用しながら課題を一つひとつクリアし、日本の経済・社会への波及効果の最大化に貢献していきたいと考えています」

FUTURE

民間ステークホルダーが自走できる世界を

放送コンテンツに関連する一連の事業におけるゴールは、民間ステークホルダーが自社や周辺産業と協力しながら、事業を自律的に拡大する体制を構築し、消費者・事業者双方にとっての便益拡大のために望ましい環境を整えることだという。

「国による支援などをきっかけに、各社が収益を確保しつつ放送コンテンツ関連海外市場の売上が年々伸び、国内経済へと波及し成長していける世界が理想ではないでしょうか。しかし、そのためには放送対象国の親日度や日本に対する理解度などを今以上に深めていく必要があります。それは、単発的な日本文化の紹介番組や商品・サービスの展開だけでは実現が難しいのではないかと感じています。親子で楽しみながら学べる日本語講座など幼児や子どもの教育にも踏み込んだ番組の制作と継続的な放送が欠かせません。小さい頃に日本文化に親しみ、ファンになってもらえれば、大きくなってもファンであり続けてくれるし、その子どもにも伝わっていく。夢のような話かもしれませんが、そうなるよう願っています」