第1回 AI技術の発展と社会の変化

先端技術研究センター  澤部直太

近年のAI技術の発展には目を見張るものがあり、一般家庭でも使えるAIプロダクト(AI技術を活用した製品)が身の回りに増えてきた。2017年の年末商戦では、Google HomeやAmazon Echoなどのスマートスピーカーの存在感が増しており、声だけでさまざまな情報の入手や操作ができるAIプロダクトを多くの人が体験したことだろう。

AIプロダクトを支えるAI技術の進展

現在は「第三次AIブーム」と呼ばれ、研究開発や投資が活発だが、その火付け役は深層学習(ディープラーニング)と呼ばれるAI技術である。ディープラーニングの登場とその後のさらなる研究開発により、画像認識、音声・言語認識、文章生成、長文の意味理解、ロボットなどの運動の習熟など、実用的に応用できる範囲が拡大した。

図1 ディープラーニングの応用範囲

図1 ディープラーニングの応用範囲

出所:三菱総合研究所

さらに、昨今のIoT(モノのインターネット)関連技術の発展により、AI技術の活用分野も広がりをみせている。自動運転、金融、製造業などに加えて、健康・医療・介護(ウェルネス)、行政、教育・学習(人財)といったサービスに関連する事業領域でもAI技術の活用が始まっている。

図2 AI技術の活用分野

図2 AI技術の活用分野

出所:三菱総合研究所

AIプロダクトが家庭に浸透する傾向は今後も強まり、一般の人がAI技術の恩恵が得られる機会は急速に増えるだろう。

AIプロダクトが引き起こすゲームチェンジ

AIプロダクトの普及により、これまでは専門家に任せていた作業が、一般の人でも簡単にできるようになる。AIプロダクトが足りない技術や知識を補い、時間がかかる作業を代わりにやってくれるからだ。そうすると、利用者はすべてを自分でやってしまうか、あるいは従来とは異なるサービスを専門家に依頼するようになる。

このように、提供者側に求めるサービスの内容や品質が変わると、そうしたサービスの提供が得意な新しいサービス提供者が市場に登場し、旧来のサービス提供者は撤退を余儀なくされる可能性がある。こうした、AIプロダクトが引き起こした変化によってサービス提供者が入れ替わる状況を、「ゲームチェンジ」と呼ぼう。

技術革新による「ゲームチェンジ」は、過去にも頻繁に起こっている。古くは、人の手で作っていた織物も、今ではほとんどが機械で作られるようになった。今回のゲームチェンジの原動力となるのがAIプロダクトである。

「ゲームチェンジ」を起こしうる主要なAIプロダクト(「破壊的AIプロダクト」)には、「自動運転車」「ロボットハンド」「AIエージェント」「仮想・拡張現実」「機械翻訳」などがある。例えば、自動運転車が普及すると、自動車を個人が所有せずにサービスとして利用する「MaaS(Mobility as a Service)」が社会に浸透し、公共交通機関や観光地のさまざまな既存事業をめぐってゲームチェンジが起きる。

図3 破壊的AIプロダクトが引き起こすゲームチェンジ

図3 破壊的AIプロダクトが引き起こすゲームチェンジ

出所:三菱総合研究所

AIで変化する社会を俯瞰(ふかん)しよう

昨今のAI技術の飛躍的な発展を背景に、さまざまな分野で「ゲームチェンジ」や「社会的変化」が継続的に起こることが予想される。新たなビジネスを興すにせよ、既存ビジネスを拡大するにせよ、この変化の流れを的確にとらえて、ゲームチェンジをする側に回ることが重要である。そのためには、刻々と発展するAI関連の動向を注視し続けよう。

本コラムでは今後5回に分けて、AIで変わる社会を俯瞰(ふかん)しつつ、AIによるゲームチェンジや社会的変化に関する、以下のテーマを取り上げる予定である。

  • 第2回:AIエージェント
  • 第3回:機械翻訳
  • 第4回:行政×AI
  • 第5回:人財×AI
  • 第6回:ウェルネス×AI

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