「感性×ロジック」で引き出すイノベーション
第1回 レゴを用いたワークショップ「レゴシリアスプレイ(LSP)」

経営イノベーション本部  橋本由紀

感性やアート、右脳を用いた「発想法」がビジネスの場面で注目を集めています。ロジック重視のビジネスの現場に感性的手法を取り入れることで、どのような効果が生まれるのか。本コラム「感性×ロジック」で引き出すイノベーションでは、外部パートナーとの対談を通じてその答えを探ります。

写真

左:飯田一弘 氏/ミテモ株式会社 取締役、右:橋本由紀/株式会社三菱総合研究所 経営イノベーション本部 研究員
対談会場:三菱総合研究所内コラボレーションスペース「hanare」

コラボのきっかけ

橋本:今回のゲストは、レゴ®ブロックを活用して創造性を引き出す手法「レゴ®シリアスプレイ®(以下、LSP)」を武器に、組織開発系プロジェクトでご一緒しているミテモ株式会社の飯田一弘さんです。

写真:飯田氏
飯田一弘 氏/ミテモ株式会社 取締役
「自ら考え、自律的に行動できる人を増やす」をテーマに、レゴ®ブロックを用いたレゴ®シリアスプレイ®など、ワークショップ型の教育研修プログラムの企画開発・ファシリテーターを担当。

飯田:こんにちは、飯田です。

橋本:三菱総合研究所(以下、MRI)では組織関連のコンサルティングの一環で、ワークショップ(以下、WS)などを企画しているのですが、ここ最近、“普段とは明らかに頭の使い方が違う方法”が取り込めないかなと思っていて、そんな時に上司から「LSP、面白かったよ」と言われたのがミテモさんとコラボするきっかけでしたね。

飯田:嬉しいですね。MRIさんでは管理職向けにWSを実施させていただいたので、その時に関心をもってもらえたのだと思います。
そのあと橋本さんからいただいたご相談が「右脳と左脳をかけあわせたWSをやりたいんです」という内容で、正直、なんじゃそりゃと(笑)。でも、その切り口が面白そうだなと思って、ご一緒するに至りました。

橋本:MRIっていろんな方々とディスカッションする機会が多いんですよ。社内はもちろん社外の方とも。そういう場面で思うのが、「発想」の部分に苦手意識をもつビジネスパーソンが非常に多い。例えば、ブレストが始まって「付箋に意見書いて出しましょう」と言うと、三つくらいまではなんとか出るけど、あとはもう苦悶の表情。もちろん、ポンポン出る人もいますよ、10個とか20個とか。でも多くは苦悶型。
で、どちらのタイプも気持ちよくアイデアを出せて、お互いが引け目なく対話できるような手法はないかなと。それで飯田さんのLSPを知って、これは特に苦悶型がアイデアを出すのをサポートしてくれるんじゃないか、と思って相談しました。
このあたりで読者の皆さんに、LSPをご紹介いただけますか?

写真:橋本
橋本由紀/株式会社三菱総合研究所 経営イノベーション本部 研究員
組織風土改革や新事業開発支援などに従事。コンサル業務の他、INCFビジネスコンテストの立ち上げ・運営など、0→1段階や立ち上げフェーズでの対応は得意。

飯田:前振り、ありがとうございます。
LSPは、レゴ®社がMIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボのシーモア・パパート教授が提唱した教育理論「コンストラクショニズム」などを基に開発した、レゴ®ブロックを用いた対話の手法で、メンバーの頭の中のイメージを、いわば「見える化」することで共有し、対話によって共通点や違いを話し合います。
個人の思いや未来など、不確かで言語化しにくい領域の対話や合意形成に、特に向いている手法と言われています。

橋本:最初にレゴと聞いて、ブロックを使う楽しさから発想が広がるのかなと思っていたんですけど、それだけじゃないんですよね。

飯田:もちろんレゴを使う楽しさや童心に帰る利点もありますが、LSPのいいところって、自分の内側、つまり感情や心の声、それより深い普段は意識しないような記憶や直感を、手を介し身体を介して感覚的に表現できる点なんです。そして、ビジュアルなイメージと言葉が組み合わさることで、他者の共感や気づきを深いレベルで得られるところも重要です。

橋本:この「普段は意識しないような記憶や直感」にアプローチできる点がWSに効きそうだなと思って、以来、組織におけるイノベーション風土の醸成や新規事業検討のビジョンづくり、オフィスリニューアルに向けたコンセプト設計などでご協力いただいています。LSPが入ると、特に新しいことを始めるときに、やらされ感ではなく、自分ゴトとして取り組めるようにスイッチが入りますね

図:LSPの効果

図:LSPの効果

出所:ミテモ社提供資料より

実際のコラボの仕方

橋本:この流れで、ミテモさんとコラボするときのWSの様子もご紹介しますね。
私たちがコラボするときは明確に役割分担しています。MRIが論理パートで左脳を使った思考、ミテモさんが感性パートで右脳を使った思考、そして最後に論理と感性を統合させるパートは両社で担当しています。あと、WS前後の部分、検討の前提条件を設定したり、WS成果をビジネス文書としてまとめ直して経営層にも報告できるようにするサポートはMRIが担当します。
完全に手前味噌なんですけど、この分担がすごくいい。全然特色が違うから。

飯田:それは私も思いますね。

橋本論理パートのキモは、その時点で頭の中にあるものをすべて吐き出してもらうこと。付箋やワークシートを使いながら、頭の中が空っぽになるまで吐き出してもらう。特に普段からなじみのあるテーマとか、このために考えてきた人には必須の部分ですね。

飯田:私たちから見ても、事前にチーム内で棚卸をしてある方が、LSPの議論がのびやかにできている印象がありますね。LSPでふわふわした議論になっても、不安がないというか。

橋本:最初の足固め、という感じですよね。で、出てきた意見やアイデアは分類して整理して、概念図みたいなものを【論理パートの結果】としてとりまとめます。
ここまでは普段から経験されている方も多いかもしれません。この時点で物足りなさがある場合や、さらに発散した内容を期待する場合に、LSPが登場します

飯田:LSPを使った感性パートでは、参加者の皆さんに手を動かしながら、レゴの作品として思いを表現してもらい、作品にこめた思いを共有し、お互いに耳を傾けあいます。対話で出てきた言葉を、【感性パート】のキーワードとしてとりまとめます。

橋本:論理パート、感性パートがそれぞれ出そろったら、二つの結果を並べて見比べて、両方に含まれている大事な要素、片方にしかないもの、そのうちエッジが効いている要素などを取り出していく。そうすると、検討前とは違う言葉が並んで、しかも十分に議論したという実感と納得感のある結果が得られる、という建て付けです。

図:ポイントは、論理も感性もないがしろにしないこと

図:ポイントは、論理も感性もないがしろにしないこと

出所:三菱総合研究所

コラボでわかった二つの手法の使い分け

橋本二つのパートで発言内容を聞き比べると、言葉の質が全く違いますよね。論理パートは、頭にあることの吐き出しなので、“出来上がった言葉”が出やすい。こなれたキーワードだったり、ありきたりなものだったり。

飯田:効能もありますよ。これまでの各自の認識がどの程度共通しているか、どの程度散らばっているかを明確にするのに有効ですよね。

橋本:確かに。一方の感性パートは、人柄や価値観が表れる言葉だったり、ストーリーが映像で浮かびやすかったり。

写真:WSの様子

同じパーツで「タワー」を各自表現した時には、全員見事にバラバラ(当社開催時)

飯田:さっき、苦悶型を助けるのにLSPが良いというお話があったんですけど、LSPも説明の時にうまく言葉にできないもどかしさはあると思うんですよ。そのもどかしさの意味を、作品を見つめて丹念に探求するので、頭だけの検討にならずに、見たモノとして説明がつく内容になる。なので、ビジュアルにイメージしやすい言葉が出てきやすいのかもしれません。

橋本:う~んと唸りながら作品を見つめるうちに、突飛な表現が出るのも見かけますね。作品を指さしながら「ここは何か飛躍した感じをイメージしたくて……、あえて言うと宇宙分野への進出とか」「(一同)宇宙!?」のように。皆さん驚くんですけど実は結構気に入っていて、ビジョンにも取り入れられたり。

飯田:突飛なことを言いやすいのもLSPの特徴ですよ。
普段のビジネスシーンでの議論って左脳に偏って行われることが多いですよね。左脳型の「議論」では、勝ち負けや正解・不正解があるので、人はどうしても仮面をかぶった状態、武装している状態になりやすい。自分の間違いや失敗を素直に認めるようなコミュニケーションは、弱さの表れとみなされてしまいます。

橋本:「おかしなこと言ってると思われたくないな」と思い始めると、思考回路が止まってアイデアが出なくなる。

飯田:そう。なので、LSPの場合は、意識して武装解除、つまり「弱さを見せられる」よう、ファシリテーションにも工夫を入れています。

橋本:弱さを見せられるってどういうことですか?

飯田:自分の考えはレゴの作品に投影されて、その作品に対して周囲が質問や気づきを投げかけます。つまり質問やコメントは、人に対して直接ではなく、作品を介してやりとりされるので、安心感をもって建設的なコミュニケーションを行えるわけです。

橋本:たしかにWSの中でも「目線は人ではなくレゴに向けながら議論してください」って飯田さん言いますよね。

写真:目線はレゴに

説明も質問も目線はレゴに向けることで心理的安全を担保

飯田:必ず言いますね。あと、話す時間と聴く時間の配分も、参加者全員が均等になるようにしています。よくあるミーティングの構造は、「20/80」なんです。つまり、発言力のある2割ほどの人が、話題の8割を独占する。

橋本:声の大きな人が議論を支配した独演会状態(苦笑)。

飯田:これだと正直面白くないし、アウトプットの質もいまいちなんです。LSPの目指す場は、「100/100」。普段話し過ぎる人は、他者に耳を傾ける時間を多くもてるし、普段は聞き手に回りやすい人は、話す機会が増える。参加者にとって満足度が高く、出てくるアウトプットの質も高くなるんです。

どんな分野が向いているのか

橋本:私自身もMRIのいろいろなコンサルの場面で、LSPのような感性的手法を今後も積極的に取り入れていけたらと思っていて。
一方で、組織によっては感性的手法が受け入れにくい風土もあって。そういう場合はMRIの腕の見せ所かなと。

飯田:WSの対象となる社員の方が真面目だったり論理性を重視する場合は、抵抗感は大きいですよね。

橋本:そうなんです。そういう場合には、いきなりWSに入るのではなく、まずは検討の土台となる情報をMRIからレクチャーして、何を考えるべきかのイメージをもってもらい、そのあとでWSに入ったりもします。
例えば、少し先の未来を考えたい場合には、政治/経済/社会/技術といったマクロな情報から個別の業界動向まで、さまざまな観点から今後の動向を解説する。その上で左脳を使って議論をしてもらい、そのあとに感性的手法を取り入れる。こうすることで、馴染みのない手法へのアレルギーを減らすようにしています。ちなみに、ロジック重視の社員が集まるMRIで検証した上で、お客さまには展開しています。

飯田:事前の検証プロセスとして十分機能しそうですね(笑)。

写真:対談風景

【論理型WS&コンサル:MRI、発想型WS:ミテモ】の適用範囲を今後も探ります

橋本:他にもいろんな場面でコラボできるんじゃないかと思っているんです。MRIの経営イノベーション本部の分野を一つ一つ見ていくと、どの分野にLSPは適用可能ですか?

飯田:そうですね、これまでとも重なりますが、経営戦略、事業戦略、新事業開発のような先の見えないものに対する検討は相性いいですよね。ほかには、組織・人財、商品開発などの創造性や発想が求められる検討もいいでしょうね。

橋本:周年事業のビジョン検討などもよさそうですよね。今回のコラムで説明した内容とも合致していますし。

飯田:あと、リスクマネジメントの分野での「浸透」の部分でのきっかけづくりもできると思いますよ。過去に、経営層・管理職向けのワークショップで、ハラスメントやインシデントに対してどう行動するかを検討する場面にLSPを使ったことがあります。言葉だけの議論ですり合わせた場合と比べて、LSPを使って対話すると、状況がビジュアルに可視化されることでごまかしがきかなくなり、どこが見落としポイントになりやすいかが明確になり、議論を深めるきっかけづくりになります。

橋本:もしこのコラム読んでいただいた方から、「全然違う分野だけれど、こんなことできたりする?」というご相談などいただけたら、私たちが全力で考えたいと思います。

飯田:ぜひ。

橋本:飯田さん、ありがとうございました。


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