RE100・SBT時代に求められる再エネ電力調達戦略

環境・エネルギー事業本部  奥村清香

ESG投資※1の拡大やIPCC1.5℃特別報告書※2の公開などを背景に、企業に求められる気候変動対応への要求水準が高まり、RE100※3やSBT※4などの気候変動イニシアティブに参加する企業も増えている。気候変動への取り組みは、CDP※5による評価などを通じて、企業にとって今や資金調達にも影響を及ぼす時代となっている。ここでは、RE100やSBTの目標達成に向けた再生可能エネルギー(再エネ)電力の調達に焦点を当て、その動向を把握し、採るべき戦略について考えてみたい。

再エネ電力の主な調達手段には、自家発電のほかに再エネ発電事業者との直接契約(PPA:Power Purchase Agreement)、小売電気事業者が提供する再エネ電力メニューの購入、電力と切り離された再エネ環境価値(証書)の購入などがある。このうち、自家発電は適地を探し自ら設備を運用する必要があるため、世界のRE100加盟企業を見てもその占める割合は1%にとどまる。PPA16%、再エネ電力メニュー35%、証書46%、その他2%と大部分が外部からの調達となっている※6

日本での外部調達手段には、東電EPのアクアプレミアムなど、再エネメニューが増えつつある。さらには、固定価格買取制度(FIT)の買取価格低下やFIT切れ電源の増加などを背景にPPAも増加が見込まれる。

また、証書については、J-クレジット(再エネ発電由来)、グリーン電力証書、非化石証書(再エネ指定)の3種類がある。これらを比較すると、J-クレジットが低価格だが、年間供給可能量は、J-クレジット(再エネ発電由来)が約890GWh※7、グリーン電力証書が約375GWh※8、非化石証書が約69,400GWh※9である。RE100参加日本企業19社の日本での消費電力量が約13,000GWh/年※10であることを踏まえれば、非化石証書の存在感は大きいが、これまでの約定量は約40GWhにとどまっている。

図 再エネ証書の価格と2017年度供給可能量

再エネ証書の価格と2017年度供給可能量

出所:下記より三菱総合研究所作成

  • ※J-クレジット価格:入札における再エネ発電由来クレジットの落札価格に、0.5kgCO2/kWhを乗じた値。
  • ※グリーン電力証書価格:日本自然エネルギー財団「企業・自治体向け電力調達ガイドブック第2版」(2019年1月)、東京都地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト「グリーンエネルギー証書販売」より
  • ※非化石証書(FIT)価格:JEPXウェブサイト「非化石証書取引結果」より、約定最高価格と約定最低価格

非化石証書はSBTへの活用に制限はないものの、RE100へは属性情報を付したトラッキング付証書のみ利用可能であり、トラッキング付証書の販売量は、昨年度は実証実験を通じた8.56GWhにすぎない。しかし、実験は今年度も継続され、今後供給拡大が期待されよう。
また、非化石証書の対象は現在FIT電源のみだが、2019年11月以降に非FIT電源にも拡大予定であり、これらの証書を活用した再エネ電力メニューなどが将来的には有力な調達手段となるだろう。

もっとも、証書を購入する一方で、火力由来の電力を調達する企業の対応には、NPOなどからの批判もある。国全体で見れば、証書への需要増が再エネ電源開発につながり、ひいては火力依存低減に寄与するため、調達手段による相違はないと考えられる。しかし企業としては、市場動向や政策動向を見極めるだけでなく、ステークホルダーからの評価も踏まえた再エネ調達戦略が求められる点に留意を要する。

海外に目を向けると、アメリカではトラッキングシステムが多くの地域で整備され、発行量も豊富な証書の調達が主流である。同時に、再エネ発電単価の低下や大規模需要家のRE100加盟増などを背景に、安価な調達が期待できるとしてPPAも近年急増している。他方、中国ではグリーン電力証書が導入されたが、高価であるため、I-REC※11調達または自家発電が現実的な選択肢となる。このように、国によっても状況は大きく異なり、海外拠点をもつ企業は国ごとの戦略が必要である。

当社では、日本の電力システム改革やFIT制度などの再エネ導入促進施策について、官民のさまざまなプロジェクトを通じその動静を追い続けている。さらに、海外も含め再エネの環境価値取引に関する最新の知見や、メガソーラー事業などを通じた再エネ事業開発に関する経験も、本課題に対峙する上で欠かせない実務基盤であると自負している。これらの知見を統合し、RE100加盟やSBT認定を目指す企業それぞれに適した再エネ電力調達戦略策定を支援するといった機会は日々増加している。今後とも、パリ協定で目指す気温上昇2℃未満という大きな社会課題解決に向け、政策提言と企業の事業戦略策定支援の両面から貢献していきたい。

※1 財務情報だけでなく、環境・社会・ガバナンス要素も考慮した投資

※2 IPCCが2018年に公表した、1.5℃の気温上昇に係る影響やリスクなどに関する報告書

※3 RE100は、事業運営に使う電気を100%再エネで賄うことを目指すイニシアティブ

※4 SBT(Science Based Targets)は、科学的に整合した(気温上昇を2℃未満に抑える)温室効果ガス削減目標の設定を企業に促すイニシアティブ

※5 CDPは、毎年時価総額の高い企業に質問書を送付し、環境情報開示を進める国際NGO。署名機関投資家800社超、運用資産総額約100兆米ドル。ESG投資に最も影響力のある機関の1つ

※6 The Climate Group and CDP, RE100 Progress and Insights Annual Report, November 2018より2017年の目標達成手段の割合

※7 J-クレジット制度ウェブサイト「認証一覧」より、2017年度中の再エネ電力分を集計。年度をまたぐ場合は、期間に応じて均等配分

※8 日本品質保証機構ウェブサイト「グリーン電力証書発行実績一覧」より、2017年度の発行量

※9 固定価格買取制度 情報公表用ウェブサイト「C表 買取電力量及び買取金額の推移(2018年12月末時点)」より、2017年度買取量合計

※10 https://japan-clp.jp/cms/wp-content/uploads/2019/06/JCLP_release_190617.pdf(閲覧日:2019年6月20日)

※11 国際再エネ証書基準(International REC Standard)が提供する再エネ証書で、公式の証書管理制度がある国以外で属性等をトラッキングし、第三者として証書を認定する制度


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