日本のイノベーションエコシステム

常務研究理事 研究開発部門長  大石 善啓

 2020年をゴールとする第5期科学技術基本計画では、「日本を世界で最もイノベーションに適した国へ」と謳っているが、欧米中と比較して現実はどうだろうか。

 米国では、GAFAに代表される企業が、世界のデジタルイノベーションをけん引している。サイバー分野は、アイデアから社会実装までのスピードが速く、シリコンバレーのオープンなエコシステムの中で、次々と新しいビジネスが生まれている。脅威なのは、グーグルの自動運転、アマゾンのサプライチェーンのように、サイバーのダイナミズムが、リアルな世界に及び始めている点である。

 中国の深圳は、デバイスやコンポーネント産業の集積地として、イノベーションの一大拠点に急成長した。深圳の時計は、シリコンバレーの10倍早く進むといわれており、ものづくりのデジタル化、社会実証と実装の同時進行が、国家戦略として官民一体となってすさまじいスピードで進んでいる。

 「スピード」「オープン化」の点で米中に劣るEUは、国際標準化やルールづくりの「上流側戦略」でグローバル競争をリードしようとしている。植民地経営などで培われたグローバル戦略は、米中と異なる競争力である。

 翻って日本のイノベーションエコシステムは、どうあるべきだろうか?

 「日本が解決をリードできる世界的な社会課題」に対して、「強みであるリアルな知・技術・経験」をコアに、「共創力」を発揮することが必須と考える。日本は、質の高い人材、優良な企業群、レベルの高い教育・研究機関が多数集積した世界でも稀有な国である。一方、産産官官学学の多様なプレーヤーの連携、共創による成功事例はわずかである。成長する国内市場を奪い合う時代が終焉を迎えた今、これまで発揮できていない共創力をグローバルに展開すれば、世界のイノベーションをリードする十分な力をもっている。

 当社も、共創の機会提供から共創をプロデュースする役割に進化したい。


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