100年を生き抜く力

常務執行役員 コンサルティング部門長  岩瀬 広

 政府は、例年どおり6月に令和最初の骨太の方針「経済財政運営と改革の基本方針2019」と、その原動力となる「成長戦略実行計画」を閣議決定した。両者に共通しているのは、第4次産業革命によるSociety5.0の実現と人生100年時代を背景とする全世代型社会保障の実現である。

 第4次産業革命を牽引するAI・ロボット・IoTなどの技術革新は、生産性の飛躍的向上とイノベーションによる新ビジネスやサービスの創出などにより、産業構造を大きく変える。同時に、人手作業の代替と人間の能力拡張を進め、就業構造にも大きな変革をもたらす。健康寿命の延伸と技術の支えで意欲ある高齢者の多くが就業できる社会が形成される。

 一方、技術革新は新たな社会課題も発生させる。当社では、2020年代後半以降は生産職や事務職が過剰になる半面、技術革新をリードする専門職が不足すると予測している。現状でも、日本の定型的なタスクの割合は欧米に比べ5~14%ほど高く、職種間ミスマッチの解消は急務である。

 これまで有効に機能してきた社会の仕組みも変革が求められる。50年の就業生活が当たり前になれば、20歳前後で就職し一つの会社で同じ職業に就いて定年まで働くことはむしろ少なくなるだろう。日本固有の慣習である新卒一括採用の見直しが大手企業を中心にすでに始まっている。同じ企業に長く居続けることを前提とした退職金制度などの見直しも進みそうだ。

 企業や国の取り組みが進む中、個人のマインドチェンジも不可欠になる。自らキャリアを設計し、それに合わせて自己のスキルを磨き続け、年代や成長に応じて職業を変えながら、より長く社会に貢献する生き方を探ることが求められる。長期の雇用が保証されなくなることは不安要素ではあるが、活躍の場を自ら選び、競争に打ち勝ちながらそれを実現していく力、いわば人生100年を生き抜く力を身につけるチャンスと捉えることが重要だ。


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