2013・2014年の内外景気見通し
―内外ともに底入れの動き

 
Point
日本経済は、海外情勢の改善に市場環境の好転と財政出動が加わり、春には回復軌道へ。
海外経済は底入れへ。14 年にかけて緩やかな回復を持続する見込み。ただしリスクは残る。
日本経済の持続的成長のカギを握るのは「第3の矢」。積年の課題を克服する絶好のチャンス。

1.概観

 日本経済は、海外情勢の改善や円安と株価上昇を背景に、底入れの兆しがみられる。2013年春以降、景気は回復軌道に戻り、13年度後半には消費税増税前の駆け込み需要も予想される。14年度の前半は、その反動で需要の減少が見込まれるが、各種税制措置によって調整局面は短期で終了し、後半は再び回復軌道となるだろう。
 12年末の政権交代後、新政権の経済政策に対する期待から、市場環境やマインドは好転したが、経済の持続的成長には「第3の矢」である成長戦略の実行と企業による前向きな取り組みが必須だ。仮に成長戦略実現への取り組みが加速すれば、経済見通しが上振れする可能性がある。
 海外経済も底入れの動きがみられ、14年にかけて緩やかな回復基調をたどるであろう。例えば米国経済は、財政運営に不安を抱えつつも緩やかな回復を続けている。欧州では経済停滞が続いているが、12年秋以降、信用不安は後退している。中国経済も、政策効果などから持ち直しに転じている。
 ただし、キプロス問題でもみられたように、一部のリスクが全体に広がるリスクは随所に残っている。手放しの楽観は許されない。

2.日本経済の見通し

後退局面を抜けた日本経済、マインドも改善へ

 日本経済は、外需の悪化を主因に、12年7-9月期のマイナス成長の後、10-12月期もほぼゼロ成長となったが、海外情勢の改善を受けて、足もとでは輸出や生産に底入れの兆しがみられる。
 また、新政権が「第1の矢」として掲げる大胆な金融緩和への期待から、市場では円安と株価上昇が進行。「第2の矢」である財政出動に関しては、13年2月末に総額13兆円超の12年度補正予算が成立、13年度本予算案と合わせた「15カ月予算」は106兆円規模にのぼる。税制改正大綱でも、企業の設備投資や雇用・賃金増を促す税制措置が盛り込まれるなど、新政権色が強く反映されている。
 こうした状況下、需要項目別に今後の注目ポイントを整理すると、次の3点が挙げられる。
 第1に、円安の影響と輸出回復のペースだ。海外情勢の改善を主因に、1-3月期以降、輸出の回復が予想される。円安による輸出採算の改善から輸出企業の収益も上振れしよう。ただし、為替効果が輸出数量の回復として現れるには、半年程度のラグがありそうだ。また、電気機器業種などでは、生産拠点の海外移転による最終財・中間財の輸入比率の高まりや製品競争力の低下から、以前ほど円安の恩恵を享受し難くなっている。
 加えて円安は、日本経済にとってプラスの影響ばかりではない。素原材料など輸入品価格の上昇をもたらすため、輸入依存度が高い企業の収益にマイナスに寄与するほか、燃料輸入比率が高い現状(10年28.6%→12年34.1%)では、貿易赤字のさらなる拡大につながる。
 第2に、設備投資の行方である。生産は、12年11月をボトムに2カ月連続で上昇しており、13年1-3月期に回復基調に戻るとみられる。企業マインドも改善している。円安や株高が進んだ12年12月以降、景気ウォッチャー調査の先行き判断DI(企業動向関連)が製造業・非製造業ともに大幅に上昇、輸出関連業種のみならず幅広い業種で改善がみられた。ただし、企業が設備投資に踏み切るには、中長期的な期待収益率の改善が必要である。成長戦略の実行により、企業の中長期的な成長期待※1が上向けば、潤沢なキャッシュフローと投資減税を追い風に、設備投資にも前向きな動きが出てこよう。
 第3に、消費の持続性である。厳冬による衣類や光熱費の支出増、外出関連支出の好調などから、12年10-12月期の個人消費は前期比+0.4%の伸びを示した。懸念されていたエコカー補助金終了後の自動車販売の反動減も小幅にとどまっている。株価上昇などを背景に消費者のマインドも改善しており、短期的には消費の押し上げに寄与するとみられる。ただし、消費回復を持続させるには、所得環境の改善や将来不安の抑制が必要となる。

春以降、緩やかな回復軌道へ回帰

 日本経済は、13年1-3月期に輸出が持ち直しに転じ、春以降は内需にも波及して回復軌道に戻っていくとの従来の見方に変更はない。ただし、①補正および本予算による公共投資などの押し上げ効果と、②市場環境の好転が加わったため、13年度の成長率は+0.8%程度押し上げられると予想する。また、13年度後半は、14年4月の消費税増税を控え、住宅投資や家計消費を中心に駆け込み需要が発生するであろう※2
 14年度は、増税後の4-6月期はマイナス成長を予想するが、①税制措置が住宅投資の増減をならす方向に働くとみられること、②過去のエコポイントなどにより耐久消費財の買い換えも一部進んでいることなどから、調整局面は短期で終了し、年度後半には本来の成長軌道を取り戻すと予想する※3。ドル円レートは、13年度は90円台前半~半ば、14年度は米国の金融政策転換への期待が高まると予想し、90円台後半での推移を想定した。
 以上を踏まえ、実質GDP成長率は、13年度+2.3%、14年度+0.3%と予測する(暦年では13年+1.2%、14年+1.4%)。消費者物価上昇率(生鮮食品を除く総合)は、13年度は+0.1%、14年度は消費税率引き上げを前提に+2.1%と予想する。

3つの海外リスクと「第3の矢」

 ただし、前述のとおり、海外経済を巡る不確実性は依然として高く、特に①米国の財政再建策を巡る政治の対立、②欧州信用不安の再燃、③中国経済の行方の3つのリスク次第では、日本経済にも強い下押し圧力がかかる可能性がある。
 そうしたリスクの影響を抑え、デフレ脱却、成長への回帰を確実なものにするためにもアベノミクスの「第3の矢」への期待は大きい。「第1の矢」「第2の矢」により市場環境やマインドは好転したが、経済の持続的成長には、大胆な規制改革などの「第3の矢」を大胆かつ着実に進めることが不可欠である。

3.海外経済の見通し

米国:緩やかな回復を持続、リスクは財政運営

 米国経済は、金融緩和が続くなか、緩やかな回復基調を維持している。家計部門では、07年の住宅バブル崩壊後、バランスシート調整圧力が消費や投資を抑制していたが、約5年が経過し、デレバレッジ(負債削減)は着実に進展。住宅市場では、販売や着工の改善傾向が明確になるなか、住宅価格も低水準ながら持ち直しに転じており、家計のバランスシートの資産と負債の両サイドで改善がみられる。
 雇用市場での需給ミスマッチによる構造的失業や低い賃金上昇率を踏まえると、力強い所得の回復は期待しがたいが、金融緩和や株価上昇が追い風となり、消費や住宅投資は堅調に推移するだろう。企業部門でも、海外情勢の改善やシェール革命によるエネルギーコストの低下を受けて、生産や投資活動が持ち直しに転じると予想する。
 一方、財政面が成長の足かせとして懸念される。給与税率引き上げは13年の一定の成長抑制要因となる。また、財政再建策を巡る政治の対立が続き、オバマ大統領は3月1日に一律歳出削減発動に踏み切った。さらに4月15日には連邦政府の14年度予算決議案※4の提出期限、5月中旬には連邦政府債務残高の法定上限引き上げ問題を迎えるが、いずれも財政再建策が交渉の焦点となっている。今後も協議難航が続けば、市場の動揺や企業・家計のマインド悪化を招くリスクがある。
 実質GDP成長率は、一律歳出削減の短期終了を前提に、13年+1.9%、14年+2.4%と予想するが、仮に1年間続けば13年は▲0.6%程度の成長率の下振れ要因となり得る。

日本経済の回復パスのイメージ

欧州:信用不安は後退したが、経済の停滞は続く

 欧州では、12年秋の欧州中央銀行(ECB)の国債買い入れ策発表や欧州安定メカニズム(ESM)発足などを受けて、信用不安が緩和。国債利回りが昨年夏頃に比べて明らかに低下したほか、スペイン、ギリシャの銀行からの預金流出にも歯止めがかかった。ただし、最近は、2月下旬に選挙が行われたイタリアの政局やキプロスを巡る不透明感が表面化した。今後の展開次第では、信用不安再燃のリスクがある。
 実体経済面では、引き続き各国間のばらつきが目立つ。ドイツの景況感は中国経済の底入れなどを受け、改善しつつある。13年前半には同国経済が緩やかな回復に転じるだろう。一方、南欧諸国では景気後退が長引いている。労働市場改革により競争力が改善し、輸出は増加に転じているが、内需悪化に歯止めはかかっていない。とくにスペインでは、銀行の不良債権比率が一段と上昇し、失業率も26%台まで悪化。ユーロ圏全体でも銀行の貸出姿勢の厳格化は続いている。
 よって欧州経済に対する見方をさらに弱め、ユーロ圏の実質GDP成長率は、12年の▲0.5%の後、13年も▲0.3%と2年連続のマイナス成長、14年は1%を下回る低成長と予想する。

新興国:景気は底入れし、緩やかな回復へ

 新興国経済は、12年秋以降、底入れの動きがみられる。各国の情勢にばらつきはあるものの、新興国全体では、13年に緩やかに持ち直し、14年も全体では堅調な伸びが続くであろう。
 中国経済の12年の実質GDPは前年比+7.8%と99年以来の低成長にとどまったが、同年10-12月期は同+7.9%と8四半期振りに成長率を高めた。在庫調整の進捗から生産が持ち直しに転じたほか、公共投資の前倒し執行を受け、道路や鉄道などのインフラ投資が急回復している。
 しかし、①過剰投資問題、②所得格差、③産業高度化の必要性、④少子高齢化、⑤環境問題など、幾多の中長期的課題を抱えている。安定的な成長を持続するためには、政策の重心を景気刺激策から構造問題対応に移さざるを得ないだろう。政府も3月5日に開幕した全国人民代表大会で、13年の成長目標を12年と同じ+7.5%に据え置いた。実質GDP成長率は13年に+8.1%へ一旦上昇するが、14年は+7.8%へ再び成長率を低めると予想する。
 ASEAN経済は、内需中心に堅調に推移している。背景には、①所得水準向上による耐久消費財の普及、②域内外での自由貿易協定(FTA)締結による生産拠点としての地位確立、③インフラ投資の拡大などがある。
 今後も拡大が期待される新興国経済だが、懸念材料も存在する。第1に、中国経済の行方である。構造問題への対応が遅れ、景気刺激策が繰り返される場合、不動産バブルや過剰投資問題の悪化を招き、景気が急失速する可能性がある。
 第2に、インフレ再燃リスクだ。ASEANでは、賃金上昇を背景にインフレ圧力が高まりつつある。13年1月からインドネシア、タイ、ベトナムで最低賃金が引き上げられたほか、マレーシアは最低賃金制度を導入した。
 第3に政治情勢がある。中国では、新政権が本格始動するが、求心力は未知数だ。インドネシアでは、14年に大統領選挙が予定されており、2期務めたユドヨノ大統領は退くこととなる。またインドでも、14年に総選挙が予定されている。これらの動きについては今後も注視が必要だ。
 以上のように海外情勢を中心にリスクはあるものの、足もとは海外景気の底入れに、新政権の政策に対する期待の高まりが重なって、日本の市場環境や企業・家計のマインドは好転している。政府が経済連携や大胆な規制緩和などの改革を実行すれば、景気の見通しが上振れする可能性はある。
 さらに財政再建や社会保障改革の道筋が示されれば、将来不安の抑制にもつながり、前向きな動きは加速するであろう。積年の課題であるデフレ脱却と成長力向上に向けた取り組み、そして社会保障改革を実行する絶好のチャンスである。

(注)本稿は2013 年3 月26 日時点の情報に基づき作成した。

※1 企業行動に関するアンケート調査(平成24年度、内閣府)」によれば、わが国の実質経済成長率の今後5年間の見通し(全産業)は+1.2%と、前年度調査(+1.5%)を下回った。調査対象は、東京、大阪、名古屋の証券取引所第一部および第二部に上場する全企業2,374社。うち回答企業は、815社(製造業425社、非製造業390社)。調査時期は、2013(平成25)年1月。

※2 13年度の駆け込み需要による実質GDP成長率の押し上げは+0.3%pと想定。

※3 14年度の反動減等による実質GDP成長率の押し下げは▲0.6%pと想定。

※4 13年10月から14年9月までの予算。

世界の実質GDP成長率の見通し


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