震災3年後提言
―課題解決の動きを支援し、復興を加速しよう

 
Point
がれき処理やライフライン復旧はほぼ完了。
住宅整備や雇用確保に一層の加速を期待。
住民自らが地域内連携・協力を前提とした将来像を共有し、実現に向けた取組みを推進。
わが国の総力を結集し、被災地復興を推進する強い意志を共有したい。

1.震災3年目の現状と課題

 当社は、震災の3カ月後、地域の復興に未来への種を埋め込むべきことを提言し、1年目には、長期的な復興ロードマップを提示した。2年でがれき処理とインフラ復旧を終え、並行して住宅の整備に着手、産業基盤の整備を行いながら、3年目から約3年間で地域の自立と水平な連携協力の核となる地域ハブ拠点*1の整備・機能強化を図るというものである。震災から2年後の昨年は、復旧を迅速に進めるとともに、2050年の望ましい地域の姿に向かって、4つのパラダイムシフト*2で復興を加速する必要があることを提言した。
 震災から3年を迎えるいま、当社の過去の提言内容を振り返りながら、被災地の復興の現状と課題を検証する。

○被災地の全般的状況

 岩手・宮城・福島3県の沿岸32市町村(福島県内の国直轄処理地域を除く)において発生したがれきの処理は91%が完了し、岩手県、宮城県ではこの3月までにすべて完了する見通しである。ライフラインは、上水道の89%が本格復旧、下水道の97%が通常処理に移行した。
 しかし、住宅の整備は、福島県以外の復興住宅計画の着工戸数(用地確保完了時点を着工と定義した)が61%に留まっている。山林などの共同所有地の権利関係の複雑さ、所有者死亡による相続人の不在・不明、民間所有地間の境界が未確定で権利関係が不明といった用地確保上の障害が主な理由だ。また用地確保後も、土地区画整理事業、住宅建設などの工事発注が、相次ぐ入札不調により、予定通りに進んでいない。背景には、行政側の人手不足や建設資材・労務コストの上昇などの悩みがある。
 産業の復興も遅れ気味で、未だ復職あるいは再就職できていない被災者が多い。被災地では震災前から人口減少が続き、豊かな自然、農林水産品、歴史・文化などの地域資源を活用して域外から「ヒト・モノ・カネ」を呼び込む取組みや、地域の需要を地域で賄うことで経済の循環を創造する「地産地消型地域経済」の構築の途上にあった。このような状況に、震災によるさらなる人口減少と地域需要の縮小が加わり、地域産業は震災前の雇用すら確保できず、より事態は深刻化しているのが実情だ。
 このように、多くの自治体における3年間の復興施策は、がれき処理やライフライン復旧、住宅整備や短期的な産業復興に代表される個々の課題への対応が中心である。
震災3年目の復興進捗状況

○放射性物質汚染地域の除染状況

 放射性物質により汚染された福島県内の国直轄11市町村では、10市町村で除染の実施計画が策定され、除染作業が実施されており、うち1市は終了している。
 それ以外の、地元で対応する94市町村でも、実施計画に基づき、子どもの集まる学校や保育施設、公共施設などの拠点を優先して順次実施されているが、終了までにあと数年かかる見通しである。

○福島第一原発を取り巻く状況

 福島第一原発の廃止措置終了には30~40年を要するが、中長期ロードマップのもと、一部前倒しで進められつつある*3。13年11月には、4号機使用済燃料プールからの燃料取り出しが着手されたが、廃止措置終了まで順調に作業が進捗するかどうかは不透明感が残る。
 建屋やトレンチ内への大量の地下水流入で生じる汚染水の処理も喫緊の課題である。国が前面に出て、国内外の叡智を求めながら、「汚染水のくみ上げ・閉塞」など汚染源の「除去」対策、「凍土方式の陸側遮水壁設置」など汚染源に水を「近づけない」対策、「溶接型タンクへのリプレイス」など汚染水を周辺に「漏らさない」対策に、それぞれ追加対策を加えて重層的に進められつつある。

○被災者の不安と不満は続く

 前記のとおり、がれき処理やライフラインの復旧は概ね収束に向かいつつある。だが、仮設住宅などで生活を余儀なくされる避難者はいまも27万4千人、これ以外に避難指示区域外から親戚・知人宅などに自主的に避難している人々も相当数に上り、住宅の確保、雇用の確保がままならない状況が続いている。
 これらの避難者を含む多くの被災者は、仕事、コミュニティ、子どもの教育など、自身の生活の将来像を見出せず、復興施策に対する不安と不満を増幅させている。郡山、いわき、福島と福島県内の主要市の現職市長が相次いで落選しているのは、そうした不満の表れとの見方もある。

2.見えてきた希望と残る大きな課題

 こうしたなか、喫緊の復興課題は、住宅整備の促進と雇用の確保であろう。幸い、これらには将来に繋がる明るさが見え始めている。

○住宅整備、雇用確保に向けた希望

 住宅整備では、用地確保と宅地開発の促進、復興住宅建設事業へのサポートが重要である。用地確保は、「財産管理制度」や「土地収用制度」の手続きの簡素化により、収用困難な土地の取得に道が開けた。これを効果的に運用するため、復興庁が「用地加速化支援隊」を組織し、被災地に投入していくことも発表された。現地での合意形成、法的手続き代行機能が増強され、ネックとなってきた用地取得に弾みがつくことを期待したい。
 復興住宅整備の発注では、手続き簡素化に向けた買取方式の導入に加え、これを金融面から支援する「電子債権活用スキーム」が宮城県女川町で導入された。買取方式により、自治体は発注事務や工事監督・検査に要する手間を低減できる。金融機関は、女川町の信用力を背景とする、電子債権を介した資金提供を通じて復興に貢献できる。このスキームを入札参加資格の緩和と一体で運用することで、地元事業者の復興事業への参加機会も生まれる。こうして、地域経済への好循環を生みながら、復興関連公共事業の執行が加速されることが期待できる。
 雇用の確保に関しては、地元企業の再建や復興事業への参加拡大に加え、津波や放射性物質によるダメージを受けた第1次産業の6次産業化*4に向けた新たな動きも各地で見られる。具体的には、塩害や放射性物質による汚染の影響を受けない植物工場や陸上養殖などによる安全・安心な食材の提供、消費者ニーズを反映した産品や加工食品の開発などに取り組む動きである。昨今、関心が高まっている食の安全や産地偽装などの社会問題の解決にもこれらは有効だ。
 震災から3年、被災地で生まれている新たな動きや国内外から寄せられた叡智を結集し、取り得る対策を被災地全体が増強・共有することで、復興加速への希望も見えつつあると言えそうだ。

○原発・放射性物質汚染地域の課題

 除染作業は実施計画に基づいて進められているが、当初の予定より遅れている地域もあり、また取り除いた土壌などを搬入する中間貯蔵施設の整備は、福島県知事による調整や候補自治体の合意が、大きな課題として残っている。
 廃止措置作業と汚染水対策は、国のリーダーシップのもと、関係者の努力が日々続けられているが、被災者や国民が感じている作業の安全性、放射線の健康影響に対する中長期的な不安感に対しては、適切な情報提供を通じて解消を図る必要がある。
 また、13年8月には、「避難指示解除準備区域」や「居住制限区域」が見直されたが、これらを含む自治体では、避難指示の段階的解除を展望しつつ、津波被災地の例も参考に、さまざまな課題解決策を計画的に協議・調整し実施していく必要がある。

3.地域の将来像を住民が自ら描く

 被災地の将来を考えれば、復興への取組みのなかで震災前から抱えていた地域課題への対応も進めることが望ましい。1つの解は、地域ハブ拠点を形成し、これを核として自立した水平な連携・協力が実現する地域構造である。いま、復興住宅の整備や雇用確保など喫緊の対策を急ぐなか、地域ハブ拠点の具体的な将来像に関する自治体間、自治体・住民間の議論は、ほとんど手がついていない。
 地域ハブ拠点の担う機能や他地域との役割分担、拠点整備後の生活再建のイメージなどは、関係当事者間での対話を通じて、住民が納得感をもてる復興後の姿を描くことが何よりも重要だ。
 福島県の飯舘村では、除染作業の遅れなど、将来の方向性が依然見通しにくいなかでも、行政と住民との間で、住民がいま感じている不安や不足しているもの、また帰還後の具体的な住民サービスに関する対話が始まっている。同村は、過去20年にわたる村民ワークショップの実績を有しているが、震災後は村主導で応急的に復興計画を策定せざるを得なかった。昨年になって、ようやくワークショップが復活し、住民参加での避難者支援や行政区ごとの復興に関する議論を再開することができた。
 このように丁寧な対話を地道に重ねる過程が、円満な合意形成のために重要な意味をもつ。気仙地域では、大船渡市、気仙沼市、住田町の2市1町で、地域の事業者や事業団体と連携し、住民の意見を聞きながら、再生可能エネルギーを活用した地産地消型エネルギー社会、超高齢化社会にも対応できる未来型の環境都市整備を推進する取組みが始まっている。住民の納得を得ながら進める復興の知恵として、こうした新たな動きを被災地全体で共有していくことも大切である。

4.わが国の総力を結集して復興を推進

 被災・復興から得られた教訓・知恵は、次世代の財産として引き継いでいかねばならない。
 技術面では、近い将来に発生が懸念されている南海トラフの大規模地震や首都直下地震など、大災害に対する備えの全国展開、原発の災害対策ロボット技術の消防活動への転用なども期待されるところである。
 また、復興プロセスを通して実現が期待される自立的な地域構造の構築は、わが国の地方都市の共通課題でもあることを再認識し、被災地での取組みのなかで解決の道筋をつける必要がある。
 6年後の2020年東京オリンピック・パラリンピックには、復興の大きなマイルストーンという側面もある。被災地の復興を加速し、復興を成し遂げた姿や、そこに至る過程で得られた教訓を、さまざまな支援を寄せてくれた世界の国々への感謝を込めて発信していくことは、課題解決先進国・日本の果たすべき使命とも言える。IOC総会での「汚染水の状況はコントロールされている」との首相発言は、問題解決を完遂するという世界に向けた公約でもある。
 わが国の総力を結集し、明確な計画と強い意志をもって被災地復興を加速・実現することが、地域のみならず「世界のなかの日本」復活のカギを握る。

*1 市町村が相互に機能を分担し連携する、広域の地域構造を形成するなかで、重点整備を図るべき中心地区(MRIマンスリーレビュー2012.3月号)。

*2 もともと地域が抱えていた4つの限界に対応する取組みの視点。「垂直なガバナンスから水平な連携・協力へ」「多様な主体の力を結集する社会へ」「『自然との対峙』から『自然との融合』へ」「あまねく守るから効率よく守る国土構造へ」(MRIマンスリーレビュー2013.3月号)。

*3 資源エネルギー庁資料(平成26年1月)より。

*4 第1次産業が、農林水産物の生産にとどまらず、加工食品の製造・販売や観光農園のようなサービスなど、第2次産業や第3次産業にまで踏み込むことで、トータルな付加価値や生産性を高めること。


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