震災復興と植物工場──農業の成長産業化に向けて

Point
大震災から1年5ヵ月が経過したが、塩害を受けた農地の復旧は遅れている。
復旧の遅れは、被災農家の意欲を減退し人口流出を加速させ、復興の新たな障害となる。
植物工場は除塩が進んでいない土地でも農業を早期に再開できるため、その展開が注目・期待される。

陸前高田市の太陽光を活用する膜構造のドーム型植物工場。中心部で苗を植え付け、成長に伴い渦巻状に外側に移動。1 ヵ月後に外縁部で収穫するまで人手がかからない自動管理が特徴

 今年4月、農林水産省は東日本大震災から1年が経過した被災農地の復旧状況を発表した。津波被害の大きかった主要6県(青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県)の被災農地面積は24千ha。このうち復旧工事が完了した面積は79百ha(32.9%)(主に放射能被害により農業が続けられなくなった農地は除く)。ただし、復旧工事の進捗は地域で大きな差がある。陸前高田市では、1千haの農地の約4割の復旧除塩が必要だが、1年間で工事完了したのは12ha(3%)に留まる。今後、復旧工事が加速し2年間で完了、農業を再開したとしても、収穫は3年後になる。農業再開の遅れは被災農家の意欲を減退させ、耕作放棄と人口流出の増大にもつながる。
 こうしたなか、被災地で植物工場が注目されている。施設内で植物の成長に最適な環境を制御し、年間を通じて安全・安心、均一品質の農産物の生産が可能になる。また、土を使わないため、復旧工事が未完了な土地でも農業を早期に再開できるからだ。
 陸前高田市でも、震災後比較的早い時期から植物工場立地による新たな農業展開が検討されてきた。しかし、家族や家財まで被害に遭った農家が、新たに植物工場を始めるには、人材や資金が足りなかった。また、津波被害を受けた農地では除塩など復旧が完了するまで着工できない。さらには植物工場に取り組んだ経験がないということもあり、具体化まで進まなかった。このようななか、今年2月、大手スーパーや外食企業を販売先にもつ植物工場事業者の(株)グランパの誘致が実現した。同社は、日本サブウェイや地元スーパーと協力して実証事業を進め、将来は施設を増設し、陸前高田市だけで独立採算の見込める事業にしていく計画である。
 植物工場は販路を確保し、初期投資を調達できれば、被災地でも早期に事業化できるビジネスである。現在はベンチャーや一部の農業法人などが中心だが、今後、より多くの企業や農業者が参画し、ビジネスモデルとして確立されることが期待される。
 一方、お隣の韓国では、国を挙げて植物工場を振興している。大量の日本向けパプリカを生産しており、わが国で消費されるパプリカのほとんどは韓国産となっている。こうした動きに対して、わが国でも国を挙げた取り組みが求められる。被災地での事業化モデルで経験を積むことで、世界に展開できる農業ビジネスモデルを創出できるかもしれない。
 なお当社は、陸前高田市の植物工場の支援を行っておりますが、今後もさまざまな場面で震災復興や農業の産業化に参画してまいります。


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