[医療]2025年問題の解決に向けた地域医療構想

Point
社会保障制度の維持には医療・介護の質と効率性の向上が不可欠。
都道府県が中心となって「地域医療構想」を策定し地域医療を再編。
構想の実現には合意形成を推進する人材が鍵。

人間・生活研究本部 赤木 匠

 団塊の世代が75歳以上となる2025年には、高齢者人口は全人口の約30%に達すると推計*1されている。このままでは、医療・介護の社会保障制度が破綻するおそれがある。社会保障制度の維持のためにはコスト、アクセス(受診しやすさ)、質の観点を考慮する必要がある。すなわち、住民ができるだけ健康な状態で暮らす「健康寿命の延伸」に取り組みつつ、病気や要介護状態になっても身近な地域で必要な医療や介護が受けられる体制整備、医療・介護の質と効率性の向上が不可欠である。
 このような状況を配慮しつつ、14年6月に公布された「医療介護総合確保推進法」により、都道府県が「地域医療構想」(以下、構想)を策定することが規定された。構想は今後の患者需要と医療供給量のギャップを機能別に分析し、病床数*2や医療提供体制のあり方などを定めるものであり、地域医療を超高齢社会に適合した姿へ再編成する狙いがある。行政が構想の素案を策定し、関係者間の協議を通じて合意形成を図るプロセスが存在することが構想の特徴である。DPC*3やNDB*4などの医療データを活用すれば比較的容易に医療機関同士や他の都道府県との比較ができ、地域医療の特徴や課題を定量的に「見える化」して、行政と住民、医療関係者間で客観性の高い議論が可能となる。ただし、データはあくまで過去の実績に過ぎず、背景や今後の課題、取るべき方策までは示していない。また、病床過剰地域では、データを活用した「見える化」だけでは、病床機能の再編に向けた合意形成に困難も予想される。
 解決の鍵は合意形成を推進する人材にある。合意形成には、客観的データを元に地域医療の課題を把握し、関係者との議論を通じて今後の医療提供体制のあり方について具体的な方向性を検討するというプロセスをたどる。公平・中立な立場で議論をファシリテートできる人材が重要になる。時代の先を読む見識をもち、地域の医療・介護現場の状況を理解し、かつ地域の多様な意見を取りまとめる調整能力を有する人材が望ましい。健全な議論の過程を経ることによって初めて、地域の医療機能の分化や医療人材の適正配置、必要な在宅サービスの整備といった構想の実現性が高まる。

地域医療構想における合意形成の検討手順

*1:出所:「日本の将来推計人口」(国立社会保障・人口問題研究所)。

*2:地域医療構想では、病床の機能別区分(高度急性期、一般急性期、回復期、慢性期)に基づき、各都道府県がそれぞれの必要病床数を推計することとなっている。

*3:Diagnosis Procedure Combination:日本の診断群分類に基づいて評価される入院1日当たりの医療費の定額支払制度。対象となる全国の約1,500の医療機関は患者ごとの詳細な医療データの報告が義務付けられており、集計結果が国の審議会などを通じて公表されている。

*4: National Database:国内で発生した全ての医療レセプトおよび特定健診・特定保健指導に関するデータを収載した、国が保有する医療データベース。


関連するコラム・レポート

関連するサービス