[安全]プラント事故急増対策に次世代安全機能を

Point
プラント事故は1985~95年頃に比べて約5倍に増加。
運転員の五感と頭脳を支援する次世代安全機能が必要。
IoTや人工知能の活用がその機能実現の鍵。

政策・経済研究センター 川崎 祐史

 石油化学コンビナートの事故は2006年以降急増しており(図)、事故が少なかった1985~95年頃に比べて約5倍に達している。事故原因は操作ミスなどの人的要因と設備の劣化などの物的要因が二大要因となっている*1。特に近年は、11年の東ソー南陽事業所、12年の三井化学岩国大竹工場、日本触媒姫路製造所の爆発火災事故など、大手化学メーカーのプラントで死亡者が出る事故が続いた。このような重大事故では運転員の判断ミス・操作ミスが原因となっている場合が多い。その背景には、プラントの自動化が進んでいなかった60~70年代に、日々トラブル対応に追われながら知見を蓄積してきたベテラン運転員が退職したこと、その知見が若い運転員に継承されていないことがある。
 安全工学の専門家の多くが指摘するように、安全対策にはベテラン運転員の暗黙知の形式知化、部署横断の知見の共有、リスク感性の向上が重要である。しかし、平常時のトラブルが減少し、運転員が経験を積む機会が少なくなった現在、これらの活動だけに頼ることは難しい。
 重大事故はプラントの起動停止・運転条件変更など定常運転以外の作業中に起こることが多い。このような状況下では、プラントの内部状態は刻々と変化しており、運転員がその状況を正確に逐次把握することは難しい。作業中に予期せぬ故障やトラブルが発生した場合には、状況把握や対応はさらに困難になる。
 進歩が著しいIoTなどのセンサーネットワーク技術や人工知能技術を活用すれば、運転員の五感と頭脳を支援する次世代の安全機能を実現できる。まずセンサーを増設し、プラント状態をすみずみまで見える化する。次にコンピューター・シミュレーションにより今後の状態変化を予測する。そして、温度や圧力などの予測結果を元に、弁の開閉操作など運転員が取るべき適切な対応策を提示する。これら三つの機能が実現すれば、プラントの安全性は大きく改善する。事故件数が高止まりしている現状を考えれば、このような次世代安全機能は時代の要請だろう。

図 石油コンビナートなどにおける事故発生件数

*1:2013年の石油コンビナート等特定事業所での事故原因の比率は人的要因42%、物的要因55%(消防庁資料)。


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