[廃炉]国内外の英知を結集した福島第一原発の廃炉

Point
福島第一原発の廃炉に向けた最大の課題は燃料デブリの取り出し。
最先端ロボット技術、宇宙や軍事分野の技術・ノウハウの活用が鍵。
技術を実用化する総合力と長期的な人材の育成・維持が課題。

原子力安全研究本部 滝沢 真之

 東京電力福島第一原子力発電所では、廃炉に向けて、「燃料デブリ」と呼ばれる放射能が極めて高い溶融した核燃料を施設内部から取り出す準備が行われている。老朽化した原子力発電所の通常の廃炉にこの工程はなく、これまで経験したことのない高度な技術的対応が求められ、数十年の歳月が必要とされている。
 現在考えられている取り出しの手順は、(1)散在しているデブリの位置などの把握、(2)デブリを遠隔操作で切削、(3)それを隔離保管施設に搬送することである。
 事故を起こした発電所ごとに、デブリの位置、形状、様態はすべて異なるため、まずその把握が重要となる。宇宙粒子線ミューオンはほとんどの物質を通り抜けるが、デブリを通過する際にわずかな状態変化を生じる。この状態変化を測定する技術を活用すれば、デブリの位置が把握できる。さらに詳細な状況を知るためには、デブリに接近する必要がある。このために、口径数十cmの複雑な形状の配管中を通り抜け、デブリに到達できる最先端ロボットの開発が進んでいる。切削や搬送の際には再臨界になるリスク*1対策や被ばく低減のノウハウが求められるため、米国スリーマイル原発などの事故対応経験の活用が検討されている。高放射線環境下でも安定的に動作する電子機器の開発では、宇宙・軍事分野の技術、ノウハウの活用が考えられている。
 デブリの取り出しに向けて、取り組み方針と工程を定めた戦略プランやロードマップが策定され、技術開発が進められている。しかし、技術の実用化には、測定精度、操作性、耐放射線性のさらなる向上などの技術的課題が残されている。国内外の英知を結集し、さまざまな最先端技術を探索して組み合わせ、実用化に向けた研究開発・評価を行い、課題を解決していく総合力が必要となる。加えて、数十年の歳月を伴うため、次世代の人材育成・維持が重要である。それには、ロボットや宇宙物理学といった魅力のある最先端技術開発と連携させて人材育成・技術開発を行い、それらを廃炉にも活用する仕組みが考えられる。現役世代が次世代を担う人材に取り組みの社会的意義を伝える対話や、長期的な人材育成・維持の視点での海外連携も必要となる。

図 福島第一原発の廃炉への取り組み

*1:デブリとなった燃料の核分裂反応は停止しているが(未臨界状態)、冠水した状況でなんらかの原因により万が一デブリが集積したり、切削中にデブリ内部に浸水したりすると、臨界状態となり、局所的に核分裂反応が起こる可能性がある。


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