[アジア経済]ASEAN経済共同体発足で自由化は第二フェーズへ

Point
ASEAN経済共同体発足は自由化のマイルストーン、今後は具体化の段階へ。
目下の注目点は、通関手続きの効率化とCLMV各国の関税撤廃。
中長期的には、サービス・金融分野での自由化や広域連携の動きに期待。

政策・経済研究センター 対木 さおり

 ASEAN経済共同体(AEC)の発足が2015年末に迫っている。加盟するASEAN10カ国は、07年以降、幅広い分野の経済統合に取り組み、10年までにASEAN6カ国*1で99%超の品目の関税が撤廃され、モノの自由化が進んだ。インフラ整備などの具体的な取り組みはこれからのため、16-25年を目標期間とする「ポスト2015ビジョン」が策定中で、AEC発足を起点にASEAN各国は自由化の第2フェーズに突入する。
 目下、日本企業にとって注目度が高いのは、次の2点だ。第一に、域内外との通関・関税手続きの効率化である。通関手続きをワンストップで行うシングルウィンドウ導入や原産地規則の簡素化など、行政手続きの効率化が実現すれば、日本企業にとって、より最適なサプライチェーンの構築が可能となる。第二に、域内の後発新興国であるCLMV*2諸国による関税撤廃に向けた動きだ。CLMVでは15年から18年までに関税撤廃の拡充が予定されており、今後、生産拠点や市場の拡大が見込める。
 中長期的な注目点は、サービス分野と金融分野の自由化と広域連携の動きである。前者はすでにASEANに進出する企業の投資戦略に影響を与えつつある。ASEAN向け直接投資は過去10年で約3倍に増加した。そのうちサービス分野が約3割を占める。サービス分野では、各国国内法との調整という難しい問題を抱えつつも、段階的に規制緩和が進んでいる*3。また、域内の豊富な貯蓄を活用する観点から金融分野の重要度も高まっている。金融保険業向け投資の構成比は、04-08年の22%から13年には27%まで拡大。各国は、15年3月に域内銀行の相互進出を加速する方針を示し、20年を目標とする金融分野の自由化に向けたAECの積極的な取り組みが期待される。
 加えて、ASEAN各国を取り巻く広域連携の動きも見逃せない。ASEANのうち4カ国*4が参加するTPP(環太平洋パートナーシップ)の大筋合意が、ASEAN+6*5の枠組みで進められているRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の交渉進展を後押しする可能性もある。モノ・サービス・金融分野で自由化が進展し、ASEAN向けの投資が拡大すれば、6億人超の人口を抱えるASEAN経済を一層成長させるであろう。

[図] ASEAN向け直接投資(フロー)

*1:ASEAN6カ国とは、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、シンガポール、ブルネイ。

*2:CLMVとは、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムの4カ国。

*3: AECのサービス貿易自由化では、分野ごとに10段階(パッケージ)に区分し、ASEAN域内からのサービス分野への投資に対する外資規制緩和を進めている。ただし、自由化の対象とする業種の中身を細分化し、その一部の業種の開放をコミットすることで当該業種の開放としている事例(見せかけの自由化)がみられる点には注意が必要。

*4:TPPに参加するASEAN4カ国は、ブルネイ、マレーシア、シンガポール、ベトナム。

*5:ASEAN+6は、ASEAN10カ国に加え、日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの6カ国(FTAパートナー諸国)で構成。


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