[安全]原発再稼働は終わりなき安全追求の始まり

Point
自然災害への備え、SA対策、テロ対策が、再稼働までに強化されたポイント。
他の災害事例などからの教訓にも広く学び、実効的な対応策を創り出すことが重要。
オープンな議論の中で丁寧に説明責任を果たしていくべき。

原子力安全研究本部 杉山 直紀

 政府は、原子力規制委員会が定めた世界最高レベルともいわれる安全基準を満たした原発を利用するという方針を掲げる。その方針の下、川内原発1、2号機を皮切りに再稼働される原発では、大きく三つの面で安全対策の強化が図られている。
 一つは多様な自然災害への備えである。地震に加え、津波、森林火災、火山や竜巻などへの対策も追加された。二つ目はシビアアクシデント(SA*1)後の備えであり、可搬型の発電機とポンプなどにより原子炉の冷却機能を維持し原発敷地外への影響をできるだけ小さくするための対策である。三つ目は、大型航空機の衝突などテロに耐えられる施設の整備である。
 欧州では、旧ソ連で発生したチェルノブイリ原発事故を受け、核燃料が溶融して放射性物質を封じ込める設備の圧力が上昇した場合でも、放射性物質を極力取り除きながら排気できる設備を追加し、SA対策を強化してきた。米国では、2001年9月の同時多発テロを教訓に、原発テロへの備えとして、原発内への可搬型設備の設置や原発外からの支援体制の整備を進めている。日本は、福島第一原発事故後の4年半、欧米が過去の経験から積み上げたこれらの対策に学び、採り入れてきた。
 しかし過去の経験から学ぶだけでは十分ではない。激甚な自然災害やサイバー攻撃、トラブルやミスの重畳といった、過去事例に基づく想定を上回る事態から事故が誘発される可能性は常に存在する。再稼働後も、原発事故に至った時の影響の大きさを忘れることなく、原発事故以外のさまざまな自然災害や事故・事件の教訓に基づき、最新知見を採り入れつつ、自ら解決策を創り出していく必要がある。「事故は起こりうる」ことを前提として、安全性を継続的に追求していくことが求められるのである。
 さらに、原子力関係者は、安全性の向上に努めるだけでなく、事故が発生する蓋然性やその時の影響、発生防止や影響緩和のための対策や備えについて、オープンな議論の中で丁寧に説明責任を果たしていくべきである。

図 シビアアクシデント発生防止の取り組みと発生後への備え

*1:核燃料が溶融するなど、原発の設計に用いる基準を大きく超える事故のこと。

三菱総合研究所は、福島第一原発事故の被災者の皆さまに一日も早く平穏な日常が訪れることを心から祈念しています。

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