[会計]IFRS9適用で改めて問われる原則主義と細則主義のバランス

Point
IFRSの目玉である金融商品の会計基準が確定し、いよいよ適用段階へ。
金融商品が抱える将来リスクを制度会計の枠組みに織り込む意欲的な試み。
企業経営に高いレベルのリスクマネジメントと説明責任を求める。

金融イノベーション事業本部 山藤 昌志

 国際会計基準(IFRS)適用企業がいまだゼロにとどまる銀行・保険業。しかし、2014年7月にIFRS第9号「金融商品」(IFRS9)が公表され、その後の個別論点の検討を経て、いよいよわが国金融機関へのIFRS適用が現実のものとなってきた。
 IFRS9の要諦は、金融商品がはらむリスク予兆を早期に把握し、それを会計の枠組みに織り込むことにある。エンロン・ショックやリーマン・ショックなど、近年発生した巨額破綻や金融危機の根本原因には金融商品のリスクの見誤りや認識タイミングの遅さがあった。国際会計基準審議会(IASB)が5年もの長きにわたって新しい金融商品会計の枠組み作りを進めてきた背景には、次々と開発される金融商品が抱える将来リスクを包括的に捕捉し投資家に開示するというIASBの強い意図が表れている。
 金融機関がIFRS9を適用するにあたって最大のポイントは、IFRSの特徴である原則(プリンシプル)主義の考え方をどのように形にするかである。IFRS9最終版では、予想損失を測定する上での考え方の大枠が示されている。しかし、それらを財務報告に記載される引当として数値化するための細則(ルール)は文書化されていない。企業経営に係わるリスクの認識と計測は経営が自ら認識し、計測すべきというスタンスはリスク管理の本家であるバーゼル(BIS)規制と同様である。ただし、バーゼル規制では、原則主義に大きく舵を切った結果、金融機関ごとのリスク認識に大きな乖離が見られた。その反省から、恣意性を排除するためのルールが追加された。ルールをなくして解釈の自由を与えた結果、それを恣意的に運用したとみなされた事例である。
 昨今、ちまたを騒がす不正会計問題や排ガス規制不正問題は、いずれも「ルールに抵触しなければよし」とする細則主義の悪弊が表面化した事例である。こうした出来事を通じて、企業経営にはプリンシプル重視の風潮が戻りつつある。それは、細則主義の限界に対する反省であり、恣意的な運用をして良いということではない。原則主義に立ち戻るということは、より高いレベルでのリスクマネジメント能力とその説明責任を求めるという企業経営そのものの原則に立ち戻るということなのである。

図 IFRS9(減損)の原則を有効に機能させるための枠組み


関連するコラム・レポート

関連するサービス