[共創]大学の新たな価値提供と産学連携の新段階

Point
大学は環境変化を受けて新たな方法による価値提供の取り組みを開始。
非従来的領域・手法でのコンサルティング・人材交流に注力する大学も。
産業界は、大学を多様な価値提供の場として捉え直すことが必要。

科学・安全政策研究本部 山野 宏太郎

 イノベーション創出やそれに関わる人材の育成・輩出が求められるなどの期待が高まる中、大学はこれまでにない形で社会への価値提供に取り組み始めている。こうした動きの中に、以下の三つの注目すべき方向性を見いだすことができる。

 一つ目は、大学がコンサルタントとして企業の課題解決へ直接関与する事例である(コンサルティング型)。技術面・経営面での助言などは従来から行われていたが、慶應義塾大学ストレス研究センターでは、メンタルヘルス不調者や職場(企業)に対して医学的視点から一歩踏み込んだコンサルティングをしている点が特徴的である。

 二つ目は、社会がまだ十分に認識できていない重要課題を先取りして解決策を検討・提言する事例である(社会課題先取り型)。研究センターを大学が設置することは珍しくないが、その中でも多摩大学ルール形成戦略研究所は、社会課題解決に向けた市場の「ルール形成」という非技術的テーマに絞り研究・提言活動を行っていること、外部有識者を主要メンバーとして積極的に取り込んでいることなどが注目される。

 三つ目は、教育の場を社会人が交流する機会としても提供している事例である(コミュニティー提供型)。一般的な市民向け公開講座などとは異なって、組織リーダークラス(またはその候補者)を主な受講対象としている点が特徴であり、東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラムなどが該当するといえよう。

 多くの大学・企業で「産学連携」といえば、共同・受託研究に代表されるような「技術開発・移転に関わる活動」という認識にとどまっているが、新たな産学連携事例では企業における人材育成、健康管理、新事業創出・展開、社外人脈形成といった多様かつ重要な問題と密接に結びついている。企業や大学が有する知的資源を最大限に活用するには、産学連携をR&D部門に限定せず企業の全社的な課題解決の「場」と捉えることが必要である。さらに、企業が、大学のサービスに対して適切な対価を支払う一方で、その質を厳しく評価して大学にフィードバックするという仕組みが構築できれば、双方の実力強化につなげることも可能となる。

図 大学による新たな価値提供の取り組みとその波及効果


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