[防災]オールハザードアプローチの導入に向けて

Point
あらゆる災害に共通する対策と柔軟な修正で対応するオールハザードアプローチ。
日本に導入する際は、国際的に類を見ない経験や技術を活かす工夫が必要。
多種多様な関係者が持つ経験の形式知化とARやVRなど先端技術の活用を。

原子力安全事業本部 島 悠貴

 これまで日本の防災対策は、地震・津波・原子力災害など、災害別の対策に力を入れてきた。しかし、東日本大震災によって、複数の災害が重なる複合災害や想定外の事態への対策が不足しており、関係者の連携も十分ではないことが明らかとなった。

 アメリカでは、災害別ではなく、さまざまな災害や事件(ハザード)で共通する対策を準備し、実際に起こった災害や想定外の事態に合わせて判断・意思決定して対策を修正する「オールハザードアプローチ」を取っている。気候変動やテロなど、予測困難な災害・事件の増加が想定される中で、日本でもこの考えが参考となる。

 実際に、日本でもオールハザードアプローチ導入への検討が始まっている。導入の際には、海外のものをそのまま取り込むのではなく、日本ならではの経験・技術を盛り込みたい。

 例えば、情報の受発信、広報、異なる組織同士の連携など、さまざまな災害で共通する対策は、徹底したマニュアル化と組織間共通のルール※1が必要だ。日本には地震・津波・原子力災害、さらにはその複合災害という国際的にも類を見ない経験があり、これらを形式知化して取り入れることが重要な視点である。

 また、想定外の事態における判断・意思決定など、決まった型のない非定型な業務は、実践あるいは訓練を繰り返しながら応用力を強化したいが、国内にはそのような応用力を鍛える高度な訓練拠点がない。AR(拡張現実)やVR(仮想現実)などの日本の最新技術を活用しつつ、行政や民間が広く利用できるよう豊富な訓練メニューを備えた拠点の整備が必要である。

 国・自治体のみならず、インフラ企業、医療機関、住民組織など、多種多様な関係者が参加して、それぞれの経験・技術を持ち寄り、日本版オールハザードアプローチを構築していくことが求められる。さらに、その知見を海外に広く発信すれば、東日本大震災を経験した日本の国際的な貢献にもつながる。

図 オールハザードアプローチの概念図

*1:アメリカの危機管理の標準手法であるICS(インシデント・コマンド・システム)など。


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