[経営]「逆参勤交代」で働き方改革と地方創生の両立を

Point
働き方改革と地方創生を両立させるため「逆参勤交代」を提唱する。
大都市圏の会社員を期間限定で地方に定住・勤務させる仕組みだ。
実現には経営者が主導するほか、官民連携や効果検証の枠組みが不可欠。

プラチナ社会センター 松田 智生

 多くの企業が働き方改革への取り組みを始めている。ある首都圏企業は地方での遠隔勤務を導入したところ、対象となった従業員は通勤ラッシュから解放されて業務効率が向上し、家族と過ごす時間も増えた。

 こうした萌芽を大きな動きにするために「逆参勤交代構想」を提唱したい。首都圏の大企業が期間限定で、一定割合の社員を交代で地方に定住・勤務させる仕組みだ。対象者は在籍している企業だけではなく、その地域のためにも働く。彼らが特産品の営業、観光客誘致、キャリア教育などで活躍すれば、地方創生の担い手としても貢献できる。

 仮に、首都圏と近畿圏で大企業に勤める従業員約1,000万人*1の1割の100万人が、年に1カ月ずつ逆参勤交代すれば、100万人÷12カ月で約8.3万人が地方に住むかたちになる。定住人口の年間消費額124万円*2を前提にすれば、地方は1,000億円程度の消費を大都市圏から呼び込める計算。さらに、オフィスや住宅の需要も見込める。

 逆参勤交代のタイプとしては、企業の目的に応じて、さまざまな形態が考えられる。①集中合宿の色彩が濃いプロジェクトチーム型、②頑張った社員に報いるリフレッシュ型、③人材育成を主眼とする武者修行型のほか、育児・介護を重視するかたちや、シニア社員のセカンドキャリアを目的とするかたちもあり得る(表)。いずれにせよ、企業にとっては、地域社会との交流を通じて、新規事業創出やイノベーションの機会が増えるだろう。

 実現に不可欠なのは、経営者が「逆参勤交代は、社員の育成や働き方改革、そして、わが社として地方創生に貢献する絶好のチャンスだ」との姿勢を示すことだろう。その上で企業が進めるべきは、目的に応じた地域選定、移動交通費の負担、既存の人事制度とのすり合わせ、参加者のモチベーションや健康改善などを想定した費用対効果の検証だ。地方自治体の側にも、官民連携のマッチング体制を整備するとともに、費用軽減のための政策インセンティブを導入するなど、綿密な受け入れ準備が必要となる。

 経営者主導の働き方改革と地方創生の同時実現を目指す逆参勤交代。それは江戸 幕府によるつらい参勤交代とは逆であり、個人・企業・自治体に「三方一両得」をもたらす。

[表] 逆参勤交代で考えられるタイプ各種

プロジェクト
チーム型
リフレッシュ型武者修行型育児・介護型セカンド
キャリア型
20~40代 20~60代 20~40代 20~60代 40~60代
新規事業などのプロジェクトチームの環境を変えた集中合宿 高業績社員のモチベーション向上、メンタルヘルス予防や復職に活用 将来の経営幹部が地域の課題解決に参画 育児や親の介護のため、実家近くで就労 シニア社員のセカンドキャリアの出向や転籍に活用
期間:1~3カ月
週4日本業
週1日地域貢献
期間:2~4週間
週4日本業
週1日地域貢献
期間:半年~1年
週1日本業
週4日地域貢献
期間:1~2年
週4日本業
週1日地域貢献
期間:1~2年
週1日本業
週4日地域貢献
公募型 公募型、指名型 公募型、指名型 公募型 公募型、指名型

出所:三菱総合研究所


関連するサービス

MRIマンスリーレビューの目次へ